第143話 ぎこちない、話せない・・・
「・・・疲れた・・・」と葵は割り振られたベットの上に倒れ込んだ。
澪、紬にクラスの女子達に色々問い詰められ、就寝時間になった事でやっとの事、解放されたが、この部屋は大部屋・・・つまり、まだまだ恋バナの話は終わらない・・・・と、言っても同室の女生徒は、順番でお風呂に入っており、先に入った葵は、少しの間だけだが穏やかな時間を過ごしていた・・・
「・・・全く、皆して面白がって、心配する事なんて当たり前だと思うんだけど・・・」とあまりの追及の激しさに、色々ボロを出した葵であったが、総一郎との別れの時の、、と考えるだけで
(なんで、何で、ナンデ、あんな事しちゃったんだろ・・・恥ずかしい・・・・)と足をジタバタしながら、自分の行いを振り返り、そして再び足をジタバタする。 それを何回も繰り返していた・・・
(・・・次に総ちゃんに会ったら、どんな顔をすればいいのか・・・分からないよ・・・)
と、再びのジタバタしながら、布団の中で目をつむっていると、昼間の治癒魔法の行使の影響か、一瞬で眠りについてしまった。その後、同室の女生徒も葵が気持ちよく眠っているのを見て起こすのは忍びないと思い、また色々な事があったので疲れも溜まっており、そのまま皆、就寝となった。
次の日、起床して朝食を取り、ほんの少し待機していると、教官達から交流会自体は少し延期して開催する決定する事になり、その為、皆移動の用意を始める様に言われ、皆荷物をまとめて出発用意をする事になった。
荷物を用意しながら、葵は総一郎に会った時にどの様にすればいいのか考えたが、誰にも相談できずにいつの間にか駅に着いてしまった・・・
駅に着くと先に総一郎と司が待っており、二人を見かけたクラスメイトや教官達から無事を確認されたり、感謝を述べられたりして、近寄れそうも無かったので葵は先に列車に乗り込む事にした。
もちろん、その不自然な行動を澪と紬が見逃すはずも無く、葵が座った途端にそばにきて
「葵、なにかよそよそしいわよ?」
「何かあったか、おねいちゃんに言ってごらんなさい?」との質問に
「・・・なんでもない・・・」と平然を装っているが当然二人には分かっていた。
「何、寂しいの、愛しの彼を取られて?」と紬の一言に葵は無言だったが澪は
「・・・葵、言いたい事は、はっきり言わないと・・・総一郎、きっと待ってるわよ。」と言うと
「・・・今はいい、もう少ししたら・・・会いに行くから・・・」と俯きながら言ったので
「・・・そっか、分かった。紬、行きましょう。」と二人はそれぞれ自分の席に戻り、葵は暫く窓の外の流れる風景を見つつ、意を決して総一郎に会いに行こうとしたが、途中で司に会ったので
「司君、もう大丈夫なんだ?」
「ああ、昨日も念の為の入院だったからね、体の方は全く問題ないんだけど・・・」と司は少し考えこみながら、辺りをキョロキョロして、葵の耳元で
「なんか、総一郎の様子がおかしいんだよ。どうも寝付けなかったみたいだし、朝からずーっと心ここに有らず、みたいな感じだし、何かあったんだろうか?」と司の疑問に、葵は
(・・・多分、私のせいだよね・・・)と内心、ドキドキハラハラしながら司の話を聞いていると
「そういえば・・・あ、ごめん葵、俺クラスの奴らに呼ばれているから、ちょっとごめんね。」
「ううん、こっちこそ引き留めてごめんね。」と司と別れた葵は総一郎の元に行く事なく、自分の座席に戻る事にした・・・・