第136話 護衛艦・・・なにそれ?
そのころフェリーの操舵室では船長と航海長と乗り込んできた通信担当との打ち合わせが行われていた。
「こちらとしては、いつも通りの航海で行こうと思いますがよろしいですかな?」と船長の確認に
「はい、基本的には我々の任務は護衛ですのが何かない限りはこの船の指揮権は船長にございます。しかし、非常事態には我々の指揮に従って頂きますのでよろしくお願いいたします。」と乗り込んできた通信担当者は答えた。
「軍人さんも大変ですな。この日本海で護衛など聞いた事も無いのに、我々が要請したわけでもない。いきなり魔法庁の方々からの要望・・・いえほぼ強制みたいな感じで会社の方に圧力が掛かったともっぱらの噂でしてな・・・」と航海長は愚痴りながらも軍人さん達に多少のいたわりの心で接してきた。
「我々はただ命令に従うのみですので、その問いに回答は出来かねます。」とテンプレな回答でお茶を濁すと
「まぁ、普段と違うのは魔法学園の団体さんが居るぐらいですから、毎年恒例の交流会に参加の為ですから、珍しいですが護衛付きは初めてですな・・・ではそろそろ出港準備も終わる頃だと思いますので」と船長の言葉が終わったタイミングで
「船長、出港準備完了との事です。」と三等航海士の報告が上がってきたので
「了解、では出港する。」
「出港、エンジンスタート、もやい綱外せー」と船長以下のいつも通りの出港手順でフェリーはいつも通りに出港した。
「船長お見事ですね。」と乗り込んできた士官が言うと
「なに、いつも通りに船員達が頑張ってくれただけですよ。」と船長は少し誇らしげに言った。
その頃 夕立の艦橋でも
「該船、港外に出ました。」
「了解、本線を該船の前方 距離1500メートルに。」
「本船 該船の前方1500メートルにつけます。」との号令ののち二隻は大海原に向かって行った。
出港から一時間少々過ぎた頃、夕立の艦橋は非常に緩んだ空気になっていた。
「見張り員、何か異常は無いか?」
「は、異常なし。」
「まぁ、そうだろうな引き続き監視せよ。」
「了。」
「・・・少し緩み過ぎではないですか?」と内藤少尉は苦言を呈したが
「そうですかな?特に異常はない様なので。」と艦長はその苦言に取り合う様子は無かった。
内藤少尉は少しイラつきながらも
「少し外の空気を吸ってきます。」と言って艦橋から退出した。艦橋の外にある見張り台で深いため息を吐きつつ
(・・・全く緊張感が無い・・・しかし、こちらは何の権限も無い、・・・もどかしいな・・・)と思いにふけていると、こちらを挟み込むように対向で向かってくる船が二隻見えた。その船の甲板上には大きなコンテナが積まれていたのが見えた。 見張り員が接近してくる船を確認すると
「方位3-1-5 及び 0‐4‐5 に貨物船 各一隻確認。距離8キロ進路交差無し。」
「分かった。」
「方位1‐5‐5 にも貨物船、追い越しを掛けています。」
「引き続き監視を継続せよ。」とのやり取りの後レーダー監視員が
「・・・艦長、前方より対向で向かってきている二隻がそれぞれこちらに進路を変更。このままですと衝突します。」との報告に艦長はすぐに
「通信士、直ちに 国V Vガード Uガードにて警告しろ。」と指示を出したが予想外の返事が返ってきた。
「了解、こちら・・・ダメです強力な電波妨害で通信不良。」
「なんだと・・・信号旗で警告しろ・・・・発光信号用意。」と艦橋が徐々に緊迫の度合いを上げていく。
しかし、その行為も無駄であった。
「駄目です。該船二隻とも反応無し。このままでは衝突の危険が」とのレーダー監視員の報告で艦長は
「なんて野郎だ見えているはずなのに・・・仕方ない。面舵20。」と操舵員に指示をだし
「了、面舵20」と回避行動に移ったタイミングで艦橋の見張り員から緊迫の度合いを更に上げる報告が飛び込んできた。
「艦長、前方の両方の貨物船の甲板上のコンテナが開き中から砲塔が出てきました。」との報告に艦長は驚愕し
「総員戦闘配置、貨物船との距離は、」とレーダー監視員に聞くと
「方位3‐1‐5 5000 方位0-4-5 4500 」との報告に戦闘指揮所内の砲雷長は
「3-1-5から接近の船を α 0-4-5 を β と呼称する。」とほぼ同時に見張り員から
「 α β 各船の砲塔旋回視認。」
「了、 α の前方 距離 300 警告射撃用意。」と艦長は決断をした。
「・・・了、 α の前方 300 警告射撃用意ヨシ。」と砲雷長の返答後すぐ艦長は
「打ち方 はじめ 。」との号令を発し、砲雷長は
「打ち方 始め てぇ 」と射撃を開始を部下に命令を下した。