第133話 別れは笑顔で・・・
明日からの学園生活に戻る為、再び別れの時が来た。自分以外の4人は何度体験しても寂しいのか別れの最後まで会話で盛り上がっていたが、自分はと言うと
「総、健康に気を付けて、後、しっかり嚙んでご飯は食べなさい。歯をちゃんと磨きなさい。あと・・・彼女でも紹介しなさい。」
「はいはい、夜更かしせず、よく噛んで、ちゃんと歯を磨いて・・・最後のいる?」
「早く、彼女でも出来て親を安心させてほしいわ・・・あ、でも相手はもう決まっているのに、何が足りないのかしら?度胸かしらね?」
「それ以上は言ったら怒る。」と少し不機嫌に言うと
「はいはい、まぁ、しっかり後悔しない様にやりなさい。」と言ってきたタイミングで葵が来たので母親は
「葵ちゃん、申し訳ないけど、総の事よろしくね。」
「はい、大丈夫ですよ、私の方こそ助けてもらってばかりで、申し訳ないほどです。」
「ホントにいい子ね、葵ちゃんは、総、葵ちゃん泣かしたら親子の縁、切るからね。」
「そこまで言います?!」
「そして、葵ちゃんがうちの子になるからいいわ。」と葵をハグしてきたので
「大丈夫ですよ、朱鷺子さん決して総ちゃんはホントに優しいですから。」と葵も答えてくれた。
母親は満足したのか葵を離して、自分の方にやってきて小声でボソッと
「しっかり捕まえなさい。」と葵に聞こえない感じに言い、自分はぶっきらぼうに
「・・・ああ、・・・」とだけ答えた。
やがて、バスが来たので各々乗り込み、涙の別れになったが、母親は最後まで泣かずに見送ってくれた。
バスが、見えなくなると
「寂しくなりますね。」と司の母親が言い
「いいんですよ。五月蠅いのがいなくなったので。」と自分の母親が言ったが
「じゃ、今日もやりますか・・・朱鷺子さん、涙を拭いて下さい。」と陽斗の母親がハンカチを差し出してくれた。
「・・・あの子の前では決して泣かない。そう決めていま・・す・・か・・・・ら」と最後の方は言葉に詰まりつつ送り出したマダム達の女子会名目の吞み会は深夜まで続いている事を自分達は知る由も無かった。
学園に戻り、新学期も始まり各自提出の課題の提出に、休み明け試験に魔法力の測定等忙しく過ごしていると、課題の提出から三日後の放課後の自習中にまず司が教官から呼び出しをくらい、その後自分も呼び出しをくらってしまった。
何事かと思いつつも、教官指導室に向かう事にした。入室前に身なりを整えノックをした。
「加治訓練生入室の許可を求めます。」
「入れ。」と鬼教官の名で有名な教官の声が聞こえたタイミングで
(・・・俺、何かしたかな・・・あの件かな・・・ハァ。)と思いつつ
「失礼します。」と扉を開けるとそこには司と教官たちは机に向かい合わせに座っており
「加治訓練生、小野寺訓練生の隣に座りなさい。」と言われたので、言われた通りに座ったタイミングで
「・・・では、両名に聞く事がある。この小野寺訓練生が提出した、新たな魔法式の実験を既に行っていたとの事であるがその件に間違いは無いか?」と聞かれ
(・・・・やっぱりか~。・・・・)と思いつつ誤魔化す事は無理だと思い
「はい、間違いありません。」と答えると
「魔法の不適切使用で懲罰ものだとの理解はあるのか?」と教官達に強く言われたが司が
「総一郎・・いえ、加治訓練生は私の頼みを聞いただけです。処分は私だけに何卒お願いします。」と立ち上がりながら頭を下げると教官達は顔を見合わせながら
「・・・分かった。では、処分は追って伝える。下がってよろしい。」と言われたので二人して退室する事にした。何も言わずに皆が自習をしている部屋に戻ろうとすると司が
「・・・総一郎、本当にすまない。でも、何かあっても処分は俺だけに留める様にするから」と言ってきたので
「・・・大丈夫だろ、なんとかなるさ・・・だから気にすんな。」と強がってみた。
自習室に戻ると皆が心配してくれていたが最早どうしようもないので、仕方なく処分の日を待つことにした。
その頃の教官達は司の出した新たな魔法式の有用性に気付いていた
「どう思いますか?」
「いや、この発想は素晴らしい・・・が、・・・」
「そうですね・・・魔法の不適切使用が・・・・」
「・・・この件は外部には漏れてはいないな・・・」
「はい、今の所は・・・訓練生達の地元は結構な田舎なので・・・」
「・・・では、この件は何も無かった・・・いいですね、皆さん・・・」と主任教官の一言でこの件の隠ぺいが決まった。
後日、自分と司は再度呼び出しをくらい、魔法の実演を見せると教官達から、この件の口外無用と不適切使用の件の罰則を免除するとのお達しをもらい、内心安堵した。