第130話 新理論の実践・・・
翌日の朝はいつも通りに目が覚め、朝食を食べ、母親が仕事に行くのを見送り、自室で課題を進めてたが集中は出来なかった。
(・・・今頃、司を葵は二人きり・・・か・・・・)と思いつつ、目の前の課題は遅々として進まなかった。
(・・・少し、気分を変えるか・・・)と思い、家から少し歩いた海を見に行く事にした。
浜辺に着き、しばらく波の音を聞きつつ、心の中を整理しようとしていた・・・それでも気持ちは晴れなかった。
しばらくして
(そろそろ、帰るか・・・)と思い立ち上がろうとするといきなり目の前が暗くなり聞きなれた声が聞こえた
「だーれだ?」と恋人や想い人にされればいいシチュエーションなのだか相手は・・・・・
「殴る前に手をどけるか、手を離した後でボコボコにするのと、どちらを希望する・・・司・・・」と手を振り払うと、そこには葵の屋敷で勉強をしているはずの司がいた。
「いや、ちょうどお昼だし、昼食を食べて少しだけ海を見たくなってな。」と司が言ったので
「なんだ、葵との勉強会は大変か?」と聞くと
「・・・ああ、もう課題の溜めこみはしない・・・そう、誓う程な・・・」と遠くを見ながら語る司の目に生気は無かった。
「・・・・そっか・・・まぁ自業自得だし、仕方ないよな。でもそんなに集中しでどんな魔法理論でも考えたんだ?」と聞くと司は不敵な笑みを浮かべて
「ふ、ふ、ふ、この 小野寺 司 渾身の魔法理論 気になるかね。 そうだろ、そうだろう・・・・ならここで・・・」
「あ、そういうのいいんで、どっちにしろ夏休み明けには分かるし。」と軽くあしらうと
「・・・総一郎、そういうのは駄目だぞ・・・・まぁいい、俺が考えたのは、風魔法と他の魔法との併用による射程距離延長に関する研究だ?」と司は自信満々に言うが
「・・・いや、それ・・・珍しくもなんともないじゃん、何なら既に多数の論文や実践もあるし、まぁ司の研究を否定はしないが・・・」と冷めた反応を示したが
「ふ、ふ、ふ 分かって無いな総一郎は、この理論は・・・百聞は一見に如かず・・・今ここで実践してみようか・・・」と司はとんでも無い事を言った。
確かに、自分達は魔法を操れる、しかし、いつでも好きな時にとはいかない。 基本的に学園内、もしくは許可のある時以外の魔法力の行使は違反行為になり、罰もある。魔法力向上の訓練のみ学園外でも許可されているがそれ以外では基本に許可は下りない。
「いや、司・・・止めておけ、色々大変な事になるし・・・」と静止をしたが
「大丈夫、大丈夫、証拠さえなければ問題ない。目撃情報だけなら何とかなるだろうし・・・総一郎も気になるだろう・・・」と悪魔の様なささやきを自分は・・・・
「・・・まぁ・・・一回位なら・・・・」とその誘惑に乗ってしまった。
「そう来なくっちゃ、理論としては・・・・」と、しばらく司の新しい魔法理論を聞く事になり司は饒舌に語り始めた。
「俺は、魔法の威力と射程の向上の重点を置き・・・・・」と始まり
「で、この理論を元にしたのが、・・・」と言った所で司に
「でも、この多薬室砲みたいな感じだと相当制御が困難で荒唐無稽にも程があるが・・・」
「そう、この方式ではタイミングが非常に重要になる。だからこそそれぞれの魔法士の連携が重要になるが俺と総一郎ならいけるだろう。」と気合の入った司を見て
「そうだな・・・取り合えず、3段程度から初めてみるかな」と早速実践をしてみる事にした。
司の魔法式の構築の間に自分も魔法式を構築しタイミングを計っていた。
「行くぞ、総一郎。」
「おう、OKだ、司。」と同時に魔法式を発動し自分の火の魔法を司の魔法式の中に入れると、自分の魔法式で発動する以上の火の魔法の威力、そして射程距離になった。
しばらく、呆然としていたが
「・・・・司・・・・これ、スゴイな・・・・」
「・・・・ああ、俺もここまでとは思わなかった。・・・・・」と二人で顔を見つめ合いながら
「スゲーな司、これは、魔法の世界を変えるぞ。」
「そうだろ、総一郎。俺は・・・いや、俺達で世界を変えてやるぜ。」と男二人で盛り上がっていた。
その後ろの陰に気付くことなく
「・・・何が世界を変えるのかな???」との発言に二人は恐る恐る振り返ると、そこには葵の姿があった。
「さて、司君・・・今、何時でしょうか?・・・」と聞いてきたので時計を見ると既に14時を超えていた。
「総ちゃん、司君、先程、爆音と閃光が見えましたが何があったのでしょうか?簡潔に説明してくださいね。」と葵の顔に笑みは無かった・・・・・・。
「「え・・・っと・・・・その・・・・」」と二人で言い訳を考えようとしたが、
「二人共、休み明けは覚悟しててね。・・・じゃ、戻ろうか司君。ついでに総ちゃんも」との葵の発言に自分達は頷く事しか出来なかった。
その後は、自分も葵の屋敷に向かい司と一緒に課題に取り組んだが、葵は終始無言であった。質問には答えてくれるが、それ以外の雑談には一切応じてくれなかった。
その日も夕方になり、司が先に帰る事になった。
「・・・じゃ、また明日・・・」としょんぼりして帰っていった。
「うん、また明日ね。」と淡々と返す葵に
「あの、葵、その・・・・」と何を言えばいいのか迷っていると
「・・・総ちゃん、少しいい?」と葵の真剣な顔つきに自分はただ一言
「・・・ああ・・・」と言うと再び勉強をしていた部屋に戻り扉を閉めると
「総ちゃんと司君は何をしたの?」と聞いてきたので
「・・・・実は・・・・」と司に聞いた範囲で魔法式の説明をした。
「・・・・そうなんだ・・・・」と葵は少し困惑している雰囲気だったが
「でも、凄く画期的な一面をある・・・だけど困難な所もあるが、・・・・だけど・・・・いや、だからと言って無断使用の件は本当に申し訳なかった。」と頭を下げると
「本当だよね。・・・・でも、規則は守らないと・・・」と至極真っ当な事を言われ
「・・・・はい、その通りです・・・」と答える事しか出来なかった。
しばらくの沈黙の後
「・・・はぁ、まぁ今回は見ていたの私だけみたいだし、見なかった事にしてあげる。」との葵の発言に驚いていると
「・・・次は無いからね・・・本当に・・・二人ともいつまでたっても子供なんだから・・・・」と葵は呆れていた。
「・・・本当に申し訳ない。でも・・・子供扱いはそろそろ止めてほしいかな。」と言うと
「え、・・・」と葵は驚いた顔をしていたが
「課題も溜めこまずにしっかり計画的に出来ているし、それに・・・・」と区切ると葵は
「それに・・・?」と聞いてきたので
「男はいつまでたっても子供心を忘れなれないものなんだよ。」と言った所で
「・・・・総ちゃん・・・・・お帰りはそちらですよ・・・・」と葵に何故か帰宅を促された
「・・ああ、葵、また明日。」と言って自分も帰宅の途に着いた。
総一郎が帰宅した後葵は自室に戻りベットの上に仰向けになり思っていた。
(・・・子供心も大切だけど・・・乙女心も知らないとね・・・)と考えていた事を総一郎は知る由も無かった。