第124話 葵の母親
朱鷺子は葵の部屋に向かいつつ、内心では複雑な気持ちになっていた。
(・・・さて、どうなるかしら・・・寂しくなるわね・・・でも、葵ちゃんの決断を信じましょう。)と言い聞かせながら部屋の前に着くと、一呼吸入れてから扉をノックした。
コン、コン
「はい、どうぞ朱鷺子さん」と葵はまるで待ち構えていたように朱鷺子に入室を促した。
「失礼します。・・・葵ちゃん、雪代さんからは聞きましたが・・・その・・・」と言葉を詰まらせいると
「朱鷺子さん・・・これを、預かっていて下さい。」とまだ、手付かずの課題を渡してきた。
「・・・?・・・」 朱鷺子は少し頭の中が?マークだらけになってしまったが、葵は続けて
「魔法学園は課題を終わらせないと休日に補講があって大変なんです。だからきっと戻ってきます。だから・・・この・・・」と、言いながららも途中から涙声になり上手く言葉に出来なかった。
朱鷺子は優しく葵を抱きしめ
「ちゃんと帰ってきなさい。おばちゃん、課題やらない子は嫌いだから。」と同じく泣きながら葵の意思を汲み取った。
ほんの少しだけ、時間が経過し、葵が口を開いた
「・・・・きっと戻ってきます。・・・・でも、・・・皆には心配させたくないので・・・・」と言うと、朱鷺子は
「・・・大丈夫よ、皆、課題で四苦八苦してるから・・・・早く戻ってきなさい。」と優しく言うと
「はい。行ってきます。」と葵は力強く答えるのであった。
葵と雪代は朱鷺子に挨拶を済ませて直ぐに出発した。その道中二人の会話は殆ど無かった。
屋敷を車で出発して途中、船と電車を乗り継ぎ最寄り駅で迎えの車に乗り換え目的地のお屋敷には次の日の夕方に着いた。
お屋敷に着くと葵は早速、待ち人居る部屋に向かい、扉の前で深呼吸した。
「す~、・・・」コンコン とノックをすると部屋の中から
「どうぞ。入って」と入室を促されたので、葵は
「失礼します。」と言って入室していった
「もう、葵。そんなに他人行儀だとお母さん、少し寂しいでしょう。・・・少しお話を・・・いえ、沢山したいわね。」と葵の母親はベットの上から語りかけてきた。その母親の雰囲気に葵はかなり動揺していた。
「・・・・・お母さま・・・・お加減が・・・・優れないと・・・聞いてきたのですが・・・・」
「ええ、物凄く具合が悪いわね。つい1時間前にも、軽く血を吐いた程度かしら?」とさらっと言ってきたので葵は
「なにさらっと言っているのですか!!早くお休みに・・・・」と言った所で
「別れた娘が会いに来るのに寝てはいられません・・・それに今まで中々親子の会話も出来ませんでしたし・・・もう少し色々聞きたいですから。」と言われたので葵は、ベットの脇に置いてあった椅子に腰掛けると、母親と別れた後、お屋敷には一人きりで寂しかった事。同じ村に親友達が出来た事、魔法学園での出来事等、一通り話終えると葵は次の言葉に詰まってしまった。そんな葵の様子を見ていた母親は
「・・・葵・・・」と優しい顔で一言
「魔法学園の卒業まではあなたの好きな様にしなさい。」と言い葵が驚いていると
「まだ、大丈夫よ、葵の子供を抱くまで死ねないから。」との発言に
「ちょ、総ちゃんと・・」と言った所で葵は口を手で塞いいだ。
「あら、やっぱり好きな男の子がいるのね?お母さんそれが一番気になるわ。ねぇ、どんな感じの子なの、教えてよ、葵。」とそこからは葵の恋バナに母親がかなり興奮しつつ時間はゆっくりと進んで行った。