第120話 台風一過のあと
夕食を食べ終わり、そろそろお風呂に入る事になった・・・・いや、待て、何故俺は冷静になっている。
麻痺してはイケナイ自分達はお付き合いもしていない関係なのに・・・・て、一緒に入る訳でも無いし緊急事態だから仕方ない。・・・そう、仕方ない・・・
どちらが先に入るかで話し合いをしたが、自分が先に入る事になりその後、葵が入る事で話し合いがまとまり自分が先に入る事になった。
お風呂から上がり入れ替わりで葵が入っていったタイミングで自宅の電話が鳴った。
「あ、カワイイ総ちゃんですか?」とかなり出来上がっていた母親の声であった。ここは一つ文句でもと思い
「明日の朝が楽しみですね、母上殿?」と明日の朝の光景が手に取るように分かるので、嫌味の一つでもと思ったが
「いじゃない、たまにはいいじゃない、・・あ、司君、総一郎と繋がってるわよ。」と強引に受話器をを渡されたのか司が電話口に出た。
「お、総一郎どうだそっちは平和か?」と聞いてきたので
「・・・ボチボチかな、そちらの状況は?」
「なんだよそれ。夕方位までは、マダム達大人しかったけど、その後は・・・察してくれ・・・・」と悲壮感を漂わせながらだったので
「うちの者が大変申し訳ございません。」と言うと
「まぁ、大丈夫だよ、基本部屋で課題してるだけだし・・・でも、ヤバいな台風。」
「そうだな、まぁ、明日には晴れそうだしな、それに・・」と言ったタイミングで家の電気が消えてしまった。瞬時に停電が発生したことを認識したが、それほど慌てる事も無かった。
(懐中電灯にラジオは用意しているし問題は・・・あった。)と急いで脱衣所に向かうがここでいきなり開けて葵の裸を見るなんて、ラッキースケベみたいに注意して、脱衣所の扉をノックをしてみた
コン コン
「葵、大丈夫?」と声を掛けると
「あ、総ちゃん、大丈夫だよ」と冷静に答えていたので
「ん、了解・・・懐中電灯いる?」と聞くと
「・・・一応・・・お願いします・・・」と返答があったので脱衣所の扉に手を掛けた時に
(あれ、これ、大丈夫かな?・・・うん、今は停電中だし・・・本当に少しだけ開けて・・・)と自分に言い聞かせ、脱衣所の扉をほんの少しだけ開け懐中電灯を点灯させたまま置いてその場を離れた。
しばらくしてから葵がお風呂から上がってきたので、自分が部屋を出ようとすると、
「ここは、総ちゃんの部屋だし・・・少しおしゃべりしたいな・・ダメ?」と聞いてきた。勿論断る事など出来ずに、しばらくおしゃべりをしながら過ごしていると、電気が戻ったので
「じゃ、俺はリビングで寝るから・・・その・・・おやすみ・・・」と言ってから部屋を出ようとしたが
「今日は私がリビングで寝るよ。」と言って双方譲らない形になった。
「ここは、総ちゃんの部屋なんだし・・・二日連続だと大変じゃない?」と言ってくれたので
「いいの、葵はお客様なんだからゆっくり休んで。」と半ば強引に話を切り上げリビングに向かっていった。
「・・・総ちゃん、ありがとう・・・」と葵の小さな声は自分には聞こえなかった。
しばらくして、蒸し暑くて途中で起きてしまった。冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに注いで一気に飲み干すと寝ぼけた自分は普通に自室に向かってしまった。意識せず布団にダイブし眠りについてしまった。
その少し後、お手洗いから戻ってきた葵は、布団の中にいる総一郎に驚いた。
(・・・・・・・・・・・・・寝ぼけたのかな?・・・・うん、そうだよね・・・・)と思いつつ葵は一緒の布団で寝る事は無理なので、・・・と思ったが久々に総一郎の無邪気な寝顔を見ながら夜を明かしっていった。
しばらくすると、総一郎の部屋の二人は静かに寝息を立てていた。
朝の6時位に葵が起きた。目の前総一郎の顔が在る。
(・・・・・・・・・・)と声を押し殺し昨日の状況を思い出しつつ、葵は静かに総一郎の部屋を出てリビングの窓を開けると昨日までの台風が嘘の様に晴れ渡っていた。正に台風一過の様相だった。
(総ちゃん・・・いい夢を・・・ありがとう・・・・)と心の中で思いつつお屋敷に帰っていった。
その後、朱鷺子が帰ってきた。
「総、起きなさい・・・全く・・・だらしのない。ちょっと葵ちゃんのお屋敷に行ってくるからね」と起きない息子に呆れつつ、リビングに行くと
(なんで・・・ここにタオルケットに、扇風機があるのかしら?)と疑問に思いつつ葵の屋敷に向かっていった。