第113話 騒動の終焉
葵の手を酔っ払いから振りほどき自分自身で葵と酔っ払いの間に入り込んだ
「お客さん。困ります。うちはそんなサービスしてないですから!」と強く言った。
「なんや、ガキ邪魔すんなや。」と酔っ払いの三人組は更にヒートアップしてきたがここで大将と女将さんが
「お客様、ここまで騒ぎを起こされますとこちらとしても困ります。」と静かに、しかし力強く言うと酔っ払い三人衆は少し怯みながらも
「いいじゃねえか、こっちは客だぞ、文句でもあるのか。」と言ったタイミングで大将と女将さんが
キ レ タ
「おう、分かったわ、てめえらなんて客じゃね。今すぐ荷物まとめて出ていきやがれ。」と大将が言うと
「そうね、とっとと出ていきな、酔っ払い。ここは民宿であってそんなサービス提供のお店じゃない。そんな事も分からない、そして大事な従業員に手を出す様な奴らはこっちから願い下げだよ。」とかなりの剣幕で女将さんにも言われたが酔っ払い三人衆はまだ戦意は衰えていなかった。
「たかが、民宿ごときの大将に女将が何を言いやがる。うち等は政府のお偉いさんとツーカーの仲や、こんな民宿うち等の一言あれば、一瞬で終わりやで。」と脅しとも取れる発言に皆、呆れていたがその直後自分の後ろに居た葵が前に出てきた。
「何を言いますか、その様に権力を笠に人々を脅す行いを今の世が良しとはしません。確かにあなた方はお金を払っているお客様です。でもお金を払ったからと言って何をしてもいいとは限りません。お金や権力を持った者こそ、常に謙虚であるべきなのに。あなた方の行いにはその様な欠片すら見当たりません。恥ずべき行為と思いなさい。」との言葉に酔っ払い三人衆は言葉を失っていた。
暫くの静粛が続き誰も声を出せずにいた。
自分は葵に声を掛けようとしたが、僅かに肩が震えていたのが見えたので、葵の手を握りながら
「・・・お客さん、もういいでしょ。 女の子が泣きながら訴えているのを無視できないでしょう。もうこんな事終わりにしましょう。」と言うと三人衆は
「・・・ああ、分かった・・・」と言って部屋に戻って行った。
「・・・嬢ちゃん・・・すまなかった。・・・」と言って部屋に戻って行く三人衆を見送りつつ
「・・・葵、お疲れ様、・・・」と涙目になっている葵を慰めながら
「少し事務所で休んでな、」と優しくいい
「・・・うん、・・・」と涙を拭きつつ葵は女将さんに連れられ事務所に入っていった。
その後片付けも一通り終わった頃に葵が復活してきたので大丈夫か確認した。
「大丈夫か葵?無理してないか?」と聞くと
「・・・ちょっと恥ずかしかったけど・・・大丈夫・・・うん・・・」と少し元気が無さそうだったので
「でも、あの時の葵はカッコ良かったよ。」と言った所で葵は顔を真っ赤にして
「・・・総ちゃんのバカ・・・」と何故か怒られてしまった。