第110話 女将さん
自分自身の理性との戦いも終わり、葵と一緒に部屋のセッティング作業を黙々を続けていった。
(ヤバイ、葵の顔を見れない・・・・どうしよう・・・」と少し自己嫌悪に陥っていると
「総ちゃんさっきから大丈夫?」との問い掛けも今の自分にとっては心の痛む形になっていた。
「・・・ダイジョブ、ダイジョブ、早くオワラセナイト。」とのカラ返事に
「本当に大丈夫なの?私、頑張るから総ちゃん、少し休んだら?」と言うので
「大丈夫だ。問題ない。さぁしっかり お・も・て・な・し の準備をしようか?」と気合を入れ直すと
「・・・なんか、変な? ”おもてなし” だね」とツッコまれた。
(しまった、これは・・・例のプレゼン時のアレだからまだこの世には存在しないものだった。)と思いつつ二人で作業を進めていった。最後に真一さんの確認が終わったのが14時少し過ぎだったのであまり余裕は無かった。
「お疲れ二人共、少し休憩したら夕食の支度に入るから、この後もよろしくね。」と言って早速厨房に向かって行った。
「分かりました。じゃ葵、少し休憩してから作業に入るか。」
「うん、了解。」と言った所で、正面入り口が開いた。
「すいません、チェックインは15時から・・あ、女将さんお疲れ様です。」
「あら、総一郎君今日もありがとうね。本当に助かるわ・・・え、っとあなたは、そうそう葵ちゃんよね朱鷺子さんからは聞いているわ、今日は本当にありがとうね。助かるわ。」と出先から戻ってきたこの旅館の女将さんが感謝を言ってくれた。
「どうでした?検査のの方は?」と聞くと葵が
「どこかお悪いですか?」と心配そうな顔をしてきたので
「ううんちょっとね。で大将は?」との問いに
「多分、厨房でソワソワしてますよ。」と言うと
「そう、じゃ行ってくるわ。」と笑顔で厨房に向かいその少し後に大将の歓喜がとどろいた。
「真一さん、嬉しそうだな。」とボソッと言うと
「そうなの?」
「ああ、ずっと子供が欲しがっていたからな・・・」と頭の中の妄想で葵との子供を想像してしまい、顔が真っ赤になっている所に
「総ちゃん、大丈夫?顔真っ赤だよ?」と覗き込んできたので
「大丈夫、ダイジョブ、無問題。」と言っている所を真一さん達に影から見られていたのには気付かなかった。
「ねぇ、あの二人はどうゆう関係なのかしら?」との女将さんの反応に
「・・・まだまだ、はっきりしない関係かな?」と真一さんが返すと
「・・・ねぇ、夕食の用意は総一郎君と二人で大丈夫?」と女将さんが確認をすると
「・・・まぁ、特別注文少なし・・・少しなら大丈夫だが・・・何をするんだ?」と聞くと女将さんは
「男子は女性の変化に弱いの生き物だからね♪」と言って葵を呼び別室に連れて行った。