第106話 優しい言葉の裏
「何、文句でもあるの?」と聞いてきたので
「いや、その位だったら問題無いよ。」と返した
「・・あらそう、なら明日から3、4日だけお願いね。後はバイトの子が入ってくれるから。」と言って明日からの予定が強制的に決まってしまった。
翌日の早朝から民宿にお手伝い向かい歩いていた。
(まぁ、近くなのが救いだな。)と民宿の勝手口から厨房に入り
「おはようございます。加治です。」と挨拶をすると
「おお、総一郎君、久しぶりだね。」と民宿のご主人が声を掛けてきた。
「お久しぶりです。真一さん、腰は大丈夫ですか?」
「いや、お恥ずかしい、ビールケースを持ったタイミングで痛めたみたいでな。普段の行動なら問題は無いんだが、配膳や布団の上げ降ろしは、ちと厳しくてな。すまんがよろしく頼むよ。」
「はい、任せて下さい。じゃ、早速配膳していきますね。」
「ああ、よろしく頼むよ。」と言って早速仕事に取り掛かった。
朝食の配膳、その後、片付け、お見送り、掃除、掃除、掃除、部屋の用意、夕食の配膳にお酒の注文取り、片付けとそれらが終われば、家に戻り課題を進める。と中々のスケジュールだったが前世の、ブラック企業のそれに比べれば、三食昼寝付きの高待遇なので不満は全く無かった。
そうこうしている内に3日ほど過ぎ明日が最終日になった。帰り際に
「お疲れさまでした。一応明日で最終で大丈ですかね?」と聞くと
「ああ、明後日以降はバイトの子が来てくれるから大丈夫だ。明日も頼むよ。」
「はい、分かりました。ではおやすみなさい。」と言って自宅に戻った。
自宅に戻りお風呂に入り、自室にて課題を進めていると
「総、今大丈夫?」と母親が聞いてきたので
「うん、大丈夫。」と返すと部屋に入って来て
「どう、疲れてない?」と珍しく優しいお言葉を頂いたので
「・・・なに・・・なんか、怖いんだけど・・・」と少し疑いの眼差しを向けると
「なんでも、無いわよ。明日で終わりなんだから、早めに寝なさいね。」と言って部屋を出ていった。
(・・・なにかあるな・・・なんだろう・・・・分からんな・・・)と考えながらも
(まぁ、何か雑用でもお願いされるだけだろう。うん、・・・多分。)と明日も早いので深く考えずに布団に入る事にした。
翌日は少し寝坊してしまったが、始業予定には十分に間に合った。
「おはよ・う・・・何・・で・・」と目の前の光景に何が起きているか、頭の中がフリーズしていると
「おはよう、総ちゃん今日一日よろしくね。」と笑顔で挨拶をしてくれる葵が姿がそこにあったのであった。