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There are no point to be here.

 ウルヤス王子は時間をとり、嫁候補各自と過ごすと言って実行してくれた。ベルッタにとってはいい迷惑だったが。


「このお茶会に意味はございますか? もうお相手は決めてらっしゃるのでしょう」


「平等に知る機会がなければ不誠実だろう」


「いえ、そうは思いません。お呼びじゃないのなら早いところソンダーブロに帰していただきたいのですけれど?」


 アーティサーリは怖いもの知らず。言いたいことは臆面なく伝える主義だ。


「すまないがその要望は聞き入れられないな」


 両手を膝の上で組んでゆったりと背を椅子にもたれ掛ける。挑発するような態度に、不敬を混ぜた嫌味を返した。


「わたしのことは邪魔なくせにそばに置くとおっしゃるのですか?」


「理解しているだろう? 君が帰りたくても、私が帰してあげたくても無理なんだ」


「わたしを人質にとらなくったって、父は裏切ったりいたしません。三代相恩の誉れをご存知でございましょう?」


 ベルッタの父も祖父も曽祖父もその前だって、忠誠を誓って国境を守っている。そこに不穏な影があったことはない。


「とうぜん、アーティサーリ家の忠義は重々承知だ。けれどこれは陛下の決められたことだからね」


 目が笑っていない。ベルッタは足元から冷えを感じた。うるさい娘の相手をするなど、彼からしても面倒なのだろう。

 今後自分からは絶対近寄らない。ベルッタは心に決めた。


「私のそばにいてもらうのではなく、ロヴィーサの一番の支えとなってほしい」


 それは、言われなくともそうするけれど。

 なにがなんでも、王都から娘たちを帰すなんてことはしないのだ、と身に沁みた。




 妃候補だった三人の娘の住居は別棟に移された。いわゆる使用人寮で、各々に個室を与えられている。王子妃となるロヴィーサだけは王宮に招かれたまま。


 王子は言を違わず、ベルッタをロヴィーサお付きの筆頭侍女に据えた。イローナはともかくカイヤは敵意剥き出しなので頭を抱えた。王子やロヴィーサの前では澄ましているが、ベルッタに対抗してまるで己こそが筆頭かのように取り仕切ろうとする。侍女たちの予定を組み立てるのも勝手を通す。ロヴィーサが身につけるもの、給仕するあれこれを検分して彼女が納得しなければ通さない。


 かといってベルッタも大人しく役目を譲って彼女の指示を聞くわけではないので二人は衝突した。

 

 「たしかに品の目利きは素晴らしいから任せるけれど」


 服でも装飾品でも、カイヤが選んだものはロヴィーサによく似合い、その美しさをより引き立てた。ベルッタに嫌味は言うけれど、カイヤなりにこの仕事に誇りを持っている。


 王子妃になるという夢はロヴィーサを前にして叶わなくなったので、侍女頭を狙っているらしい。切り替えが早いというべきか。


There are no point to be here.

(ここにいる意味なんてない。)

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