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The sounds of the sealing wax broke.

こちらまでいらしてくださりありがとうございます。


完結までの間に、予告なく暴力・流血・性的描写がでてきます。

というわけで、R15です。

ヒーローが出てくるまで長めなうえに、後半のいちゃいちゃがだいぶ強めです。

あと文明が時代をあっちこっちしております。さらっとこの世界ではそうなんだな、と流してくださいませ。


あらすじに追いつくまで8話かかります。

 かすかな音とともに封蝋は剥がれた。

 その手紙が届いたとき、ベルッタは隣国イブリーカ帝国にいた。何十年か前はドンパチしていたのだが、終戦し和平条約を結んだいまとなっては合同で軍事訓練をする間柄にある。ベルッタは自州が抱える軍を率いて、父の代理として挨拶にきて滞在していた。


 ベルッタの父が治めるソンダーブロ州は非公式ながら独立国家と呼ばれ、他の州とは一線を画す。陸の孤島として州独自の法が制定されていたり、よそよりも福祉に厚かったりする。都会でも他の州より栄えてはいないものの、州の端と中心を比べても大きな貧富の差はなく州全体での豊かさを誇る。


 帰国したベルッタはかっちりした礼服を脱いで、一張羅でもない普段着に着替えた。父に呼び出しを受けているからだ。


「ただいま、父様」


「おかえり私のベルッタ。疲れているだろうに悪いね。お食べ」


 こんなときには甘いもの、とチョコレートタルトとバニラで風味付けされたカフェオレを用意してくれている。


「ありがとう! でも休みたいから簡潔にしてもらえる?」


 遠慮なくフォークでタルトを口に運びながら、甘さと美味しさに頬が緩む。


「国王陛下から手紙が来てね」


「へぇ」


「嫁に来いってさ」


 フォークがタルトごと皿に突き立った。カチンと音がして陶器の皿が割れた。少女はそこそこ力自慢である。ソンダーブロ私軍のトップには到底及ばないが、街でそこらへんの男に襲われても返り討ちにできるくらいには強い。

 勝手を言われてカチンときたが、早とちりはいけなかった。物を無闇に壊したことを反省する。


「ごめんなさい。誰が誰の嫁に?」


 アーティサーリ家には他にきょうだいもいない。だが聞かずにはいられなかった。名前を口にしていないのだから、もしかしたら親戚の話かもしれない。


「ベルッタを王子殿下の、だろうね」


「王子殿下は十六歳でしょう? 歳下は嫌よ」


 十八になったベルッタでも許容範囲内と判断されてしまった。しかし光栄と受け取れずベルッタはへそを曲げた。父は微笑んで続ける。


「ただの候補として呼ばれるだけだ。他にも三人候補がいるってさ。私としてもベルッタをなよなよした男にやるつもりはない。だから二、三年ほど城の様子をその目で見てきてごらん。いい社会勉強になるだろう」


「嫁候補なんて(てい)のいい人質でしょ。数年で帰ってこれるの?」


 側妃にでもされて後宮に閉じ込められるのではたまらない。自由のない生活なんて。

 やはりわかるか、と父は柳眉を寄せた。

 王族が各州の、特に力を持つ四つの地から娘を差し出せと丁寧な文体の要求があった。それぞれ従順の意を示せと暗示されている。


「かわいいうちの姫を王家に存分に見せびらかしたら、攫ってでも連れ戻すさ」


 父は実際それだけの力を持つ。王族がアーティサーリ家やソンダーブロ州を迫害しようとすれば、国一の軍事力を以てして一週間も経たずして首都を制圧できる。だからこそ恐れられてどこぞに寝返ったりしないよう担保をとられるのだ。


「信じてるわよ、父様」


「ああ。バルテリを護衛に連れて行きなさい」


 軍自慢の猛者の名前を聞いて、ベルッタは目を輝かせる。兄とも慕う人物がついてきてくれるのくなら怖いもの知らずだ。ソンダーブロ州からバルテリが抜けるのは痛手だが、大事なベルッタを守るためである。


 ところがバルテリはベルッタの出発に間に合わなかった。国境付近で三ヶ月に及ぶ海上任務に従事しており、陸に上がるまでさらに期間を要する。部隊の中から選ばれたイッカという男に一時を託された。


The sounds of the sealing wax broke.

(封蝋が破れる音。)


お話は手元で完結しておりますので、安心してのんびりお付き合いくださいませ。

書きたい〜! と思ったことを詰め込んだだけで急展開もありますが、お気に召したら幸いです。


毎日一話投稿予定です。

一話ごとに文章量に差がありますがご了承ください。


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