62話 豊作戦
夏休みって長いはずなのに、あっけなく終わるよね。
レベル上げすぎたときのボス戦みたいだね。
夏休みはあっという間に終わりを告げて1ヶ月たった。
とにかくパーティとの連携や手合わせを行い、みっちりと練習をした。
ニーナがサボり首根っこを引っ張って、練習場に連行する羽目になるかと思ったが、意外と素直に言うことを聞いていた印象がある。
「ついに明日は収穫祭。皆さんの練習の成果を出せる素晴らしい機会である豊作戦です」
「はい」
「やっと来た……」
「これで朝練から解放……」
「今の俺らが上級生にどれだけ通用できるか」
「ぜ、全力で頑張る」
唯一1人だけ一致していない意見だが、その場にいる全員ニーナの性格は理解しているため、スルーされる。
「トーナメント表が今日発表されたので、共有します」
クエン先生が一枚の紙を机の上に置く。
「一回戦目は3年生のBチーム。僕らと同じ今年初出場のチームです」
「? 2チームあるんですか?」
私たち2年生はこのチーム1組だけのはず。
他のクラスメイトは観戦するって言っているだけで、出場するとは言っていなかった。
「はい。3年生は2組、4年生は3組、5年生は4組で、1組づつ増えていく仕組みになります」
と言うことは全部で10組が出場するのか……。
「このチームは情報がないのですが、間違いなくレベルは同等だと言えます」
「言い切れるんですね」
「はい。定石はしっかりしていますが、急な対応を苦手としていてそこを崩せば勝てます」
クエン先生はルトの顔を見て頷く。
まるでルトに掛かっているかのように……いや、正直ルトにかかっている。
それはここにいるみんなが思っていること。
「詳しいですね、情報がないと言っておきながら」
「えぇ、前に練習の様子をこっそり見てましたので」
流石はクエン先生。
スパイ活動もお手のもの。
「でも問題はその次です」
「4年のAチーム……」
ロズがボソリと呟いた。
「そうです。シード枠の4年Aチーム。剣士枠にはベルセン設立以来の最高傑作と呼ばれるアルゴ君がいます」
私でも知っている。
この学校で最も強い生徒は誰? と言われるとほぼ全ての生徒が名前を挙げるほどの実力者。
相対したことはないが、去年の豊作戦で準優勝したらしい。
「僕も一度だけ担当の先生の代わりに授業をした際、この目で見たけど……すごくデカい。11歳のはずなのに、僕と同じくらいの身長差で、体格も大人顔負けな屈強さだよ」
そんな生徒がいたら一目で分かるはずなのに、一度も見たことないな。
「アルゴ君の凄さは体格だけじゃない。まず崩れないバランス力。そしてパワー。スピードはセリーヌさん程じゃないけど……それを遥かに凌駕するほどの力が彼にはある」
「マジかよ……」
珍しくルトが怯えている。
「このチームの凄さはアルゴ君だけじゃない。聖職者のエミリーさん、魔術師のクリーク君も実力者と言っていいほどの経験値を持ってる」
聖職者のエミリーさんは知ってる。寮が一緒でたまに一緒にご飯を食べる仲だ。
まぁ、食堂での席順が近いってだけだけど。
「クリーク先輩は知ってる」
そう答えたのは意外にも魔術師とは縁のなさそうなロズだった。
「詠唱速度が異常に速く、さらには近接での攻撃も出来る人」
「近接? ゼロ距離から魔術放ってくんのか?」
ルトがフォルトの胸に人差し指を押し当て魔術を放つフリをする。
「いや、シンプルな体術」
「肉体系かよ」
聞くだけで化け物を想像してしまうのは私だけだろうか?
「でも、まずは目の前の相手だよな」
「ルトにしてはいいこと言うね」
「まぁな」
二回戦目の話を一回戦突破していない私たちが対策しても意味がない。
まずは一回戦。
それが終わってから次の敵だ。
「今日は早めに休みにしよう。明日の朝、開会式の前に軽く練習をする。じゃぁ、解散」
「あざした!」
◇
収穫祭。
秋の実りに感謝をし、旬の食材を振る舞うお祭り。
その中でも、最も盛り上がりを見せるリューベルの大イベント豊作戦。
毎年の生徒の出来を大衆に見せ、今年の成長の良さを知らせるお祭りだ。
「よく晴れてら」
「雲ひとつないってやつだね」
賑わう人集りをかき分けて私たちは闘技場へ向かう。
太陽はしっかりと私たちを照らしてくれているのに、少し寒い。
秋といってもここは北の街、冬には雪がこれでもかと積もる場所。
私が前世住んでいた地域ではあまり雪は降らないし、夏は死ぬほど暑かったから少し嬉しい。
「こっちの秋は少し肌寒いね。夏も涼しかったけど」
「? お前の生まれってテリバだろ? 気温はそんなに変わんねーじゃん」
「あ、いや……そうだね。忘れてた」
「? 緊張してんのか?」
ルトは笑いながらいつの間にか屋台で買っていた唐揚げを貪っている。
「そ、そうかも。観客ありの公式戦なんてやってこなかったから」
「私たちもそうだけど」
隣でロズがサンドイッチを食べている。
「ぼ、僕はき、緊張してて……やばい……」
「あー、嵐でも来てくれたら中止になったのに……」
ぎこちない歩き方のフォルトの横を歩くクレープのクリームのついたニーナがため息を吐く。
「え、みんな今食べるの?」
私は緊張で水も喉を通らないって言うのに、5人中3人がむしゃむしゃと音を立てている。
「だって今食べねーと、試合始まったら食えねーじゃん」
「時間的に消化されるタイミングが今だから」
「甘いものはいつ食べても美味しいじゃん」
頬についたクリームを人差し指で掬い舐める。
「でも朝から唐揚げって胃がもたれそう」
「クレープよりマシだろ。男なら肉食わねーと、ほらフォルトも食え」
「え、えぇ……」
無理やり唐揚げをフォルトの口に捩じ込む。
「セリーヌは食べないの?」
「……うん。今お腹空いてないから」
カゴから一切れのサンドイッチをロズが差し出してくれるが、今食べ物を見ると吐きそうになる程緊張してるため、目を背ける。
「セリーヌって普通の女子なんだな」
「? 緊張は誰でもするでしょ?」
頬張った唐揚げのせいであまり聞き取れないが、失礼なことを言ってるのは分かる。
「いや、ほらセリーヌってストイックってやつ? 周りが引くほどの努力家だろ? はたから見れば化け物だから緊張してるの見るとなんか落ち着く」
「あー、分かるわー。うちなんて同じ部屋だからセリーヌが飽きもせず素振りしてるの窓から見てて気持ち悪くなるもん」
酷すぎる言い草、流石に少し傷つく。
「ちゃんと休み取ってるの?」
「うん。週一は休みにしてる」
「でも剣振ってるけどね」
剣は振るでしょ。
休みだからってずっと寝てるわけじゃないし、隙間時間は嫌でも出来るわけじゃん。
「ニーナも見習えよ」
「うっさい」
◇
「本日は良い天気に恵まれ、天災もなく豊かな作物にも恵まれ、この収穫祭を迎えられたことを深く感謝します」
ついに始まる豊作戦。
闘技場に出場する生徒たちが並んで校長の開会式の言葉を聞く。
「ここにお越しの皆様のご協力のおかげで、今年も屈強な若者たちが出来上がりました」
闘技場の2階では全ての席を埋めた観客が座っている。
「毎年大きな盛り上がりを見せる豊作戦。今年はどんな面白いものを見せてくれるのか私も楽しみです」
観客席とは別の闘技台に近い席、関係者席にはマザードさんやアリア先生、クエン先生たちが座っている。
「開会の前に、優勝カップ返還をしましょう。前回優勝したチームを代表して現ノアリア国境魔術師団所属のファセス・ノアリアさん」
「はい」
名前を呼ばれて返事をしたクールで大人びた見た目のファセスは、優勝カップを両手で持ち、ゆっくりと校長の元へ歩く。
「名前の通り彼はノアリア王国の次男であり、リューベルセントラル養成学校の昼食メニューの改善を進んで取り組んだ立派な卒業生です」
お、おぉ……この人があの料理たちのレシピを提供してくださった方なのか……。
「いえ、私は弟達の料理に感動しもっと沢山の人達に口にして頂きたかっただけで、無理言っただけですよ」
謙虚……!!
そして何より爽やかな笑顔!!
これは女性ファン多いですよ。
カップを丁寧に手渡しし、踵を返し一礼。
観客に向けてもう一礼。
関係者にもさらに一礼。
最後に振り返り、校長へも一礼。
流石は王国の次男坊というところだろう。
礼儀作法も完璧だ。
「受け取ったこの優勝カップは43組の優秀な生徒から受け継がれたものです。第44回豊作戦ではこのカップは一体誰のチームに渡るのか……」
校長が闘技場から見える一際高い時計塔に手を向ける。
皆が目線をそちらに向けると、時計塔のてっぺんから閃光がさらに高くへと昇る。
「それでは、第44回豊作戦を開会致します!!」
宣言と共にその閃光は花火よりも遥かに大きな爆音を鳴らし、花火よりかは少し鮮やかさは劣るが、それよりも遥かに大きな花型が空高くに咲き誇る。
いつの日か見た三連の火球とは全くの別物のそれは観客たちの火付になった。
轟音の歓声が耳をつんざく。
「うるさーい」
「え? なんて言った?」
「出番2回戦目でしょ、アップしとこ」
「……や、やばい。し、心臓……と、と、飛び……でる──ウプッ」
ニーナ、ルト、ロズ、フォルトはそれぞれ歓声に驚きながら待機席に向かう。
◇
「どうでした? 俺のスピーチ」
関係者席に座っているアリアの横に座り込み、ドヤ顔で自慢をする。
「なぜここに座るんですか?」
「なぜって、俺は関係者ですから」
ファセスは前髪を触って答える。
「違いますよ。なぜ私の隣にわざわざ座ったんですかと、言っているんです」
「……そりゃぁ、俺を振った女性をもう一度振り向かせたいからですよ」
アリアはため息をついてファセスから少し距離をとって座る。
「もう一度も何も一度も揺らいだ事ないですけど……」
「酷いなぁ、嬉しくないんですか? 元教え子がこうして立派になったんですよ?」
取られた距離を再び縮める。
「そりゃぁ、嬉しいですよ。四年も教えていた生徒が前線で活躍してるとよく聞きますし」
「おほっ嬉しい事言ってくれますね」
開会式のあのクールさはどこへ行ったか、少し照れた様子で取り乱す。
「そちらは忙しくないんですか?」
「クソ忙しいに決まってるんじゃないですか。プレナイとノアリアの同盟のせいでこっちもあっちも任務任務で引っ張りだこ。挙げ句の果てには中央大陸の調査も入ってます」
やれやれと首を振り、ため息と同時に肩を落とす。
「でも、今日アリアに会えて疲れが飛んでいきました」
「…………」
急な呼び捨てに嫌悪感をむき出しに引き攣った顔をファセスに向ける。
「なんて顔してるんですか。せっかくの美人顔がより可愛くなってますよ」
「黙ってて下さい。そしてそのままノアリアに帰国して出てこないで下さい」
「ひど……」
闘技台に一回戦目の生徒が出場を始める。
「先生は今2年生の担任ですか?」
「えぇ。優秀ですようちの子達は」
自信満々で答えるアリアに少し興味を出したファセスはトーナメント表を確認する。
「へー、出場は二番目か。それまで暇ですね、どこか遊びに行きます?」
「嫌です」
「即答ー」
がっかりとしたファセスにアリアのため息が止まらない。
「じゃぁ、いつ式をあげます?」
「一生ありません。もう諦めては?」
「無理。俺は一目惚れをしたんですから責任とって下さい」
開き直ったファセスは席を立ち、アリアの前に立つ。
「意味が分かりません。そしてメリットもありません」
「いいじゃないですか。結婚したらアリア・ノアリアですよ。語呂がいい」
「ふざけないで下さい。そんな理由で一生を棒に振りたくありません。それにあなたなら引くて数多でしょう。あの猫被りなら女性も沢山寄ってくるんじゃないですか?」
その言葉にファセスは嫌々頷く。
「キャラ作りを間違えたんです。それのせいで毎朝出待ち、夜も家に帰るの大変なんです。今は弟を言い訳に断ってるんです、それももうすぐ使えなくなる」
「弟さんはいくつなんですか?」
「え? 9歳ですよ。双子の男の子、頭も良くて料理も上手い。最高に可愛い弟達です」
ファセスのその言葉には嘘はない。
現に頬が緩んでいる。
「根は家族思いでいい人なのに、何故こんなに変人なんでしょうか?」
「え……そうですか? 俺ってそんなに優良物件です? じゃぁ、藉入れます?」
「それは無理です」
◇
一回戦目。
3年Aチーム対4年Cチーム。
お互いに整列をし、礼。
「3年生の方って、去年も出てたんでしょ?」
「うん。でも初戦敗退」
次の試合の準備のために、アップを始めながら様子を見る。
「というより、2年生は基本負け戦って言われてる」
「ひでぇ。ただの数合わせかよ」
「まぁ、経験になるからまだマシじゃない?」
木刀を手に取り、素振りを始める。
「やっぱり軽いな……」
いつもの剣とは違う重さと形に少し違和感を覚えながら無理やり体に慣れさせる。
「だよね、私もいつも使ってる弓じゃないから弦の張りがイマイチ」
支給された武器は殺傷能力皆無の木刀たち。
怪我人が出ては洒落にならないのはしょうがないが、それにしてもボロい。
「もうちょっとしっかりとした作りのやつはなかったんか?」
ルトは木刀を振り回し、首を傾げる。
「こんなんじゃすぐ折れちまうよ」
「骨折させないように、わざと壊れやすくしてるらしいよ」
地べたに座ってあくびをするニーナが自分の錫杖を磨いている。
「へー、でもフォルトとニーナはいいよな。自分の使ってる獲物で出れるなんてよ」
「刃物でもないし、叩いても威力がないからね。まぁ、筋肉ないから叩かないけど」
磨きの確認をしながら錫杖をクルクルと回す。
その横ではフォルトがお腹を抑えたうずくまっていた。
「大丈夫か? 唐揚げまずかったかな」
「……いや、ち、違う。緊張、緊張で、お腹い、痛いだけ」
「情けねーな。そんなんじゃロズに迷惑かかるぞ」
ルトがフォルトの側でしゃがみ込み、腕を掴み立ち上がらせる。
「……だってぇ」
「腹痛ならいい魔術あるよ」
ニーナは錫杖を構えてフォルトに向け、魔力を込める。
「気休めだけどリラックス出来て集中力がバカ上がるバフ」
「聖職者ってそんな事も出来るんだ」
「うん。持病じゃ無ければほとんどの病気も治せるし、腹痛ってほとんどメンタル問題だからね」
病気も治せるのか。
そりゃぁ科学の進歩なんて無いはずだ。
薬なんてものいらないもん。
「どうだ? 動けるか?」
「……痛く無い……すごい」
お腹をさすりながらフォルトは立ち上がる。
「ありがとう……」
「どいたま。でも気休めだからあんま信用しないで」
闘技台で繰り広げられる戦いに歓声が起き、目線を向ける。
途中からだが、4年生の剣士が3年生の弓使いを倒している。
「ひゃー、遠距離は近距離に敵わないよね」
「本当にそう。だからこその1ヶ月」
ロズは腰に手を置いて試合を見つめる。
「大丈夫。ロズはセンスがいいし、動きも速い。私だって少し苦戦した」
「でも少しなんだ」
だって私は剣士だよ?
近接専門としてロズには負けない自信がある。
「このままだとすぐ出番が来そうだな」
「そうね。フォルト、走るよ!」
「う、うん」
出番が早い2人がアップのために走り込みを行う。
「体力残しとけよー」
「私も走ろかな……」
「お前は出番最後だろ? てか、出番ねーかもな」
それは困る。
私だって戦いたい。
「……でもそれが一番いいかも」
余力を残して勝ててくれれば次が楽になる。
闘技台ではまた1人交代で入った3年の魔術師がやられた。
「やべーな。もう剣士2人と聖職者しか残ってねーよ」
「向こうは全員残ってる。もし聖職者が1人だけになったら負けになるんでしょ?」
「あぁ、ルール上攻撃要員がいなくなれば負け、でも残り3人で1人聖職者なら3人出れる」
クエン先生の特別授業で教えてもらった豊作戦のルールの一つ。
「ラストローテだっけ?」
隣にいるニーナが答える。
「もし、こっちも同じ状態になれば……ニーナ頼んだぞ」
「……いや、そうならないようにルト頼んだぞ」
ルトの顔真似をしてそう返す。
声も少し寄せている。
「3年はきついぞ、技ありもないからポイントゼロ。向こうは2人戦闘不能にして2ポイント取ってる」
「残りの剣士2人を倒せば勝ちだもんね」
いや、ニーナはそう思っているだろうけど……2対3は少し厳しい。
「4年の狙いは多分技ありポイント」
顎に手を置き、ルトが呟く。
「正直こっから剣士だけを2人倒すのはきつい。なら首や胸を狙った技ありを3回やる方が楽」
「うん。私もそう思う。剣士よりも聖職者の方が狙いやすいし、それ目当てで守りに来た剣士からもワンチャンある」
守りになるとどうしても後ろが気になる。
一対一なら気にしなくてもいいことを脳をよぎって判断が遅れる。
それが剣士の弱点だ。
今の4年の出場は剣士2人。
個々の能力はCチームだけあってそこまでだが、それを2人で補い合っている。
「ここで交代!?」
ルトの言葉通り、1人の剣士がウォームアップエリアから出てきた魔術師とハイタッチをして入れ替わる。
「魔術師と交代ってことは……」
「強気だな」
今まで剣士2人だけの攻撃だったため、ローテ的には超攻撃型だった。
だが、魔術師を入れることでその型は守りも追加した攻守型へと変貌する。
「流れが無理やり変わる」
剣士の攻撃に付随して魔術の攻撃。
「スピードでゴリ押し……同時に3対2じゃなくて1対2を一瞬で片すつもりだ」
四年生の剣士の横振りを3年生の剣士ギリギリで弾くが追加のロックマグナムがヘッドショット。
威力は弱く貫通はしないが、これは技ありだ。
審判は片手をあげて技ありのポーズをする。
それと同時に観客の叫びが闘技台を包む。
「残り2点。次は聖職者だろ?」
ルトは分かったかのようにそう呟くと、予想通りに4年生の剣士は踏み込んで聖職者に突っ込む。
「あれは分かってても無理だな」
あっという間に剣士に吹っ飛ばされ、聖職者は場外。
「場外だと、一度ウォームアップエリアに入らないと再出場ができない。実質2対2──!!」
私もそうだと思っていた。
でも違った。
先ほど1人の剣士をロックマグナムで仰け反らしたあの瞬間で、魔術師が拘束をしていたのだ。
「すげぇ……味方の剣士が聖職者に向かうせいで、相手のもう1人の剣士がそっちを警戒。その隙に魔術師が拘束させたのか……」
ルトって意外と解説上手いな。
てか、意外と頭いい。
誰がどう動くのかよく分かってる。
「1対2だ。絶望だろ向こう」
苦笑いでルトが興奮で上がっていた肩を戻す。
「よし、あったまっとくか。行ってくる」
「いってらー」
すぐに出番が来ることを理解して、ルトはフォルト達の元へ走って向かう。
「ニーナ、今の避けれる?」
「……へ?」
ぼーとしていたのか、返答がふやけている。
「さっきの攻撃、ニーナならどう対処するんだろって」
「……いやぁー、どうもこうも目が追いつかないでしょあれは」
「……そっか。そうだよね」
聖職者は回復とバランス調整役。
無理をして攻撃はしなくていい。
何より聖職者の負傷は前衛の責任だ。
「え、えぇ……何その反応」
「ん? いや別に」
でもさっきみたいに前衛がどうにか出来るわけじゃない攻撃だってくる。
私だけじゃ勝てないし、ニーナだけじゃ解決はしない。
でも……
「別に……期待はしてるから」
「え、えぇ……」
◇
2回戦目
私たちは整列をして相手チームを睨む。
3年のBチーム。
先ほど見ていた3年Aチームとは少し劣るのだろう。
だが、皆しっかりと強そうな見た目をしている。
「2回戦目、3年B対2年Aの試合を始める」
審判の挨拶で同時に礼をする。
「おなしゃーす!!」
中央に来るとわかるこの熱気。
観客からの激励に似た応援。
どちらも今回初出場のチームだからか、あたたかい言葉が多い。
「リーダーは前に」
「はい」
相手の剣士とこちらのロズが前に出る。
「ファーストローテは?」
「剣士と魔術師」
「魔術師と弓使い」
ローテを伝えて、リーダーどうしが握手をする。
「うわー、緊張してきた」
戻ってきたロズがジャンプをして体を慣らしている。
「ロズ、フォルトがんば!」
「全力で」
「円陣組も!」
私は皆んなを集めて肩を組み合う。
「円陣って何いうんだよ」
「なんでも良いんじゃない? テンション上がれば」
「セリーヌよろしく」
「うん」
あぁ、良いなこの空気感。
緊張とワクワクが混じった感覚……前世の部活を思い出す。
高校は帰宅部だったけど、中学はしっかり運動部だった。
強豪ではなかったが、中堅の中では上位の方。
こうして試合前に円陣を組んで気合いを入れていた。
「私たちは初出場。まぁ、相手も同じだけど。この1ヶ月無駄な時間は過ごしていないと胸を張れるように体を動かして、頭を回せ。出し惜しみなんてのはいらない全て、私たちが出せる全てをここで出す。私やニーナ、ロズにフォルトそしてルトこの5人は何があろうと味方だ。私は皆んなを信じてる。だから──」
私が全てを言い切る前に、何かを察した他のメンバーが
「「──勝つぞ!!!」」
と声を大にして応えてくれた。




