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デスターン  作者: 春川立木
51/73

47話 1時間目

Switch2買おうかな……やめとこうかな……

あえてPS5にしようかな。

始業式なのか、入学式なのか、特にこだわりなんてものはこの世界にはなかったのか、あっさりとした会は終わり、教室に来た。


「基本席は自由、早い者勝ちだから好きな所座って」

「うん」


ニーナはそう言って窓際、前から四番目の列に座る。


「え、隣ぃ?」


ニーナが不服そうにこちらを見ているが、私だって好きで隣に座ってるんじゃない。

周りに知ってる人がいないから仕方なく座っただけだ。


「ま、いっか」


そう言ってニーナは教材を机の上に置く。


「いつの間にロッカーに寄った?」

「ん? まぁ、気にしない」


寮を出てここに来るまでずっと一緒に居たはずだが、ロッカーには行ってない。


「さ、宿題開始ー!」

「今からやるんだ……」


私は今日から編入の為、課題は出されていない。


──どんなのが課題なんだろ……。


興味本位で隣を覗く。


──? なにこの課題……。


目に映ったのはこの世界の言語でもなく、前世で見た言語でもない、どちらかと言えばルーン文字? に似た文字が大量に書かれていた。


「? なにこの文字……」

「あー、神語神語。それの簡略版で暗号版。これチョーダルいんだよね」


神語? 簡略版? 暗号版?


「空いてる空いてる。口空いてる」


ニーナが笑ってそう返す。


「聖職者が使う詠唱の基礎はこの神語(笑)が使われんのよ」

「へー」

「ま、今の魔術には使われない古ーい文字」


古典みたいなノリのやつかな?


「うちこういうの嫌いなんだよねー、なんか古臭いって言うか、可愛くない」


その割にはスラスラとペンが動いている。


「全部読めるの?」

「そりゃぁ、だてに聖職者やってないんで」


ニーナの手は止まることなく問題を解き続けている。


「ニーナちゃん! ここ教えてぇ」

「ん? あー、ここは神語でルーレストロスで、衰退……亡骸……のさばるだから── 頽廃死者の跋扈だね」

「なるほど……ありがとう!!」


????

ドユコト???


「ニーナお前また課題やってねーのかよ」

「うるさいな。あんたはいいよね剣術専攻にしてるから課題なんてないもんね」

「おうよ……ん? その子は?」


ニーナの周りに気付けば人が集まっている。

その中の1人の男子が私に気づく。


「編入生。あんたと同じ剣術専攻」

「お、よろしく。俺はルト、魔物魔獣を愛し男だ」

「は、はぁ。よろしく、私はセリーヌ」


ルトは握手を求めてきたので心良くその手を握る。


「? なんで手袋してんだ? 寒いのか?」

「えっ、あ、えっと……」


まずい、手袋を室内でも付けてるのがおかしいのは盲点だった。


「はぁー、オシャレに決まってるじゃない。そんなんだからあんたはモテないのよ」

「はぁ? 俺だってモテるわ! モッテモテだわ!両手で収まりきらないほどの女が居んだわ!」

「テンション下がるわー。大声で怒鳴られてうちが可哀想」


ルトが地面を足で叩きながらニーナに反論するが、その様子ならきっとモテはしないのだろう。


「ヨシ! おわりー。セリートイレ行こー」

「え? もう出来たの?」

「こう見えてうちは天才なんでね」


Vサインをかましながら席を立つ。


「おい! まだ話は終わってねーぞ!!」

「ウケる。マジになっちゃって図星じゃん」







「皆さん。おはようございます。今日から魔術を教えるアリアです」


最初の授業は今年から必修になった魔術の授業。


黒板の前にある教卓に教科書を開いたアリアがお辞儀をする。


「初めに皆さんには初級水魔術を使えるようになってもらいます。この中で初級魔術を扱えるものはいますか?」


アリアは生徒の顔を一人一人見てゆく。


「いないのですか?」


その言葉はある1人の生徒に向けられているのか、アリアの目は一点を見つめている。


「は、はい」


アリアの目線の先にいた癖っ毛の緑髪をした丸眼鏡の男子が恐る恐る手を挙げる。


「フォルトさんだけですか?」


再びアリアが生徒達を見つめ出す。


「……!」


アリアの目線は一人一人を通し目で見ていたはずだが、なぜか私と目が合うと驚いた様子でこちらを凝視する。


「まぁ、いいです。今日でみんな使えるようになりますので。あと、教材とセットになっていた杖を用意しておいて下さい」


そう言ってアリアは黒板に文字を書いてゆく。


「魔術に必要なものはなんだと思いますか? フォルトさん」

「……えっ!? あ、えっと……魔力と詠唱です」


オドオドしながら答えるフォルトにアリアは頷く。


「魔術を使うのに必要なのは魔力と詠唱です。なので皆さんにはまず、この詠唱文を丸暗記してもらいます」


文を書き終えると、その場から離れて用意していたコップを生徒全員に配り出す。


「ありがとうございます」


コップを両手で受け取り、机に置く。

コップの中には布巾も入っていた。


「基本的に魔術には詠唱が必ずあります。水、火、土、風。これが四大元素、そこに追加されるのが雷、闇、空の外付け元素です」


アリアは説明を続けながらコップを配る。


「元々、四大元素の詠唱魔術はエルフからの恩恵でした。そこから人族が研究を重ねて出来上がったものが外付け元素になったんです。つまり、四大元素をマスターすれば自身で術式を構築し、新しい魔術を生み出すこともできると言うことです」


コップを全て配り終え、教卓に戻る。


「ま、ほとんどの魔術は公式術式になっていますので、今更新しいのを作ったところでパクリと言われますが……」


アリアはフォルトを見て、コップに杖をかざすサインを送る。


「皆さん、フォルトさんに注目して下さい」


生徒達は一斉にフォルトの方を向く。


「え……え?」


急なスポットライトに驚き、アリアに助けを求める目線を返す。


「フォルトさん。板書している文を読んでコップに水をギリギリまで注いでください」

「え──あ、は……はい」


言われた通り杖をかざし、フォルトが詠唱を始める。


「水は万物の根源。水は廻り、潤し、押し流される『ウォーターロウ』」


フォルトは黒板を見ずにスムーズな詠唱を終え、コップに向けていた杖の先端から水が現れる。


「溢れましたね。不合格です」

「す、すみません」


慌ててフォルトはこぼした水を布巾で吸い取る。


「飲んでみて下さい」

「は、はい──うっえ!」


一口飲んだ表情は曇り、たまらず吐き出す。


「はい。皆さんにはこのコップから水を溢さずにそして飲めるほどの純水な水を入れることが目標になります。と言うか今度行うテストがこれです」


アリアは振り返り、黒板に文字を書き始める。


「評価基準は魔力の制御と、魔術の質、詠唱の暗記です」


3つの評価基準に数字を書き足す。


「魔力制御は5点。魔術の質は3点、暗記は2点です。それでは皆さん始めてください」


魔術か……今まで触れてきたことが無かったから出来るかは不安だな。


初級水魔術の詠唱が辺りから発せられる中、私は生唾を飲む。


ニーナはどうなんだろう。


ふと隣を見るとあくびをしながら水を注ぐ姿があった。


「アリ先ー。出来たー」


ニーナはそう言って手を挙げる。


「えっ!? もう出来たの?」

「うん。こんなの昔にやったし」


朝からやってた課題も悩んでいた様子もないし、もしかしてこの子優秀……?


「アリアです。見せて下さい」


アリアがいつのまにかニーナの隣に立ち、コップを覗く。


「……制御は完璧です」


その言葉の通り、表面張力で膨れた水がコップに顔を出す。

床にはなに一つ溢れておらず、完璧な制御と言ってもいい。


「飲んでみて下さい」

「えー、こぼれるって」


ニーナはイヤイヤ顔を近づけて行儀悪く、口だけで飲む。


「飲めまーす」

「…………」


ニーナの言葉が信じられないのか、アリアはコップを奪い、水を飲む。


「……美味しい」

「言ったじゃん」


コップを机に置き、アリアがニーナを見つめる。


「……合格です。あとは詠唱の暗記です」

「あ、あー、それはまだ無理」


流石のニーナも板書を読んで詠唱したらしい。


「なら暗記の時間に当てて下さい」

「はーい」


ニーナはそう言って黒板と睨めっこを始める。


「あなたは出来ましたか?」


アリアは私にそう言ってコップの中を覗く。


「まだですか、やってみて下さい」

「は、はい」


杖を持ち、コップの中に向ける。


深呼吸し、黒板を見る。


魔術……ここに転生してから存在だけは知っていた。


だけど、使ったことはない。

そもそも私に魔力があるのかもわからないし、体から出るはずもない物質が出ることに少し抵抗がある。


「初めてですか? 魔術は」


不安な様子が見て取れるのか、私にの肩に手を置いてアリアが口を開く。


「はい」

「大丈夫です。落ち着いて詠唱すれば暴発する事はありません。と言うか初級魔術なので威力は水道水ぐらいが最大です」


アリアの手が震える私の手を支える。


「わかりました──」


先生の言葉を信じて詠唱を始める。


「水は万物の根源……」


ついに詠唱が始まった。


「水は廻り、潤し、押し流される……」


不思議と背中が熱く焼かれたような感覚が起きる。


怖い……まるで体のどこかから知らない力が溢れるような感覚。


「大丈夫です。私がいます」


全身から指先にかけて、流れる何かは杖に集まり、淡い水色に輝く。


「ウォーター──」

「嘘……まずいっ!!」


アリアが何か言っているが、詠唱に集中していて聞こえない。


「──ロウ!!」


そう言い放った瞬間、杖の先端が閃光の如く輝き、大量の水がまるでショトガンのように放たれる。


「──廻りの前途に凝固のうねり、瀑布の閑却は遥のち!! 『ウイング』!!」


アリアが一瞬で取り出した杖から放たれる水は私が放った水と混ざり、コップを机を抉り取りながら急激に曲がり、窓を破壊し空に消える。


「はぁ、はぁ、はぁ、危なかった……」

「…………なにが──」


轟音と共に刹那に消えた魔術に他生徒は席を立ち騒ぐ。


「怪我はありませんか?」

「は、はい」


アリアは私の心配をし、他生徒に席に着くように指示をする。


「え? 急に机が消えたんですけど……」


まばたきする間もない出来事にニーナは理解ができず困惑する。


他の生徒も同じくなにが起こったか理解はしておらず、壊れた窓と壁を見つめている。


「セリーヌさん。放課後でいいので私のところに来てください」

「す、すみません。分かりました」


アリアは教卓に戻り、深呼吸をして少し落ち着かせる。


「今日の授業は中断します。窓際には決して近づかないでください」

「セリー、なんかした? 私達の机が消えたんだけど」


ニーナはキョロキョロしてそう呟く。


「さ、さぁ? 私も急に消えたからわかんないや……」


どうしよう。

これ、私がやったんだよね……。

え……でも、アリア先生は初級魔術で暴発はしないって言ってたし……。


「次の授業は専攻授業ですね……。先生達には私から伝えますので、早いですが準備をして移動して来てください」


しかも威力は水道水が限界みたいな事言ってたし……、あの時先生が私の魔術を曲げてくれなかったら今頃この教室は……。


あまり考えたくないことが頭に浮かび、身震いをする。


「あ、魔術専攻の人たちは少し待っていて下さい」


アリアが教卓に置いていた教材を片付け始める。


もしかして……私が勇者だからこの威力になったってこと……?


「では今日の授業を終わります」


アリアは礼をして教室から急いで出て行った。

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