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デスターン  作者: 春川立木
49/74

45話 報酬タイム

正十字騎士團のパラディンになりてぇ

エスタ城から帰ってきた俺らはロンさんに結果を説明していた。


「で、こいつが急にブリタリアって言ってたんすよ」

「ブリタリア? クルトくんの家出元ってブリタリア領だったんですか?」


ロンは暖炉の近くに干していた洋服達を畳みながら返事をした。


「はい。実家が太かったんです」

「へー、惜しいことしましたね」


いや、ロンさんも軽いな。


「まぁ、意外といますからね。貴族出身なのに家を出る人」

「そうなんですか?」

「はい。特に冒険者に多いですね」


あー、昔読んでたラノベとかって貴族出身の主人公多かったな。

そんな感覚なんかな。


「どんな事例が多いんだろ」

「んー、隠し子とか、シンプルに向き不向きとかですかね」

「じゃぁ、クルトは隠し子なのか?」


俺は杖の手入れをするクルトを見る。


「教えないけど違うね」

「後で教えるって言ったじゃねーか」

「教える時は時効になった時だよ。そうじゃなきゃ僕の首が飛ぶ」


首斬りげんまんでもしたのかよ。


「でもよ、なんで金貨2枚渋ったんだ?」


ガエルはテーブルに残っている2枚のコインを眺めながらそう聞いた。


「そりゃぁ、恩を綺麗に残すためです。わざわざ全額渡して1割下さいってなると結局利益って思われるからね」

「金貨2枚か……小さめの城が買えるな」


ホルスはそう呟いて水を飲む。


「と言うことで、金貨2枚山分けタイムでーす」


クルトが立ち上がり、金貨を握りしめた拳を空に掲げる。


「ガエルさん達は金貨一枚で我慢して下さい」


持っていた金貨を一枚ガエルに投げる。


「うおっ、急に投げるなよ!」

「ナイスキャッチ!」

「金貨一枚も貰っていいのか?」


ホルスはガエルから金貨を受け取り眺める。


「はい。なので今回の件は内密でお願いします。僕のこともです」

「うわっ、ずるいな。本当に目立ちたくないんだな」


ホルスがため息をついて懐にしまう。


「ガエルさん達には本当に助かりました。また何かあったらお願いします」

「おう、いっときは堅苦しいのは勘弁だが」

「報酬に免じて今回は黙認するが、そのうちボロが出るから気をつけろよ」


ガエルとホルスは立ち上がり帰りの準備を始める。


「その時は諦めて浴びますよ」


クルトは笑って立ち上がる。


「あれ? リャンはまだ風呂か?」

「あいつは長風呂だから先に帰る」


ホルスが先に玄関へ向かう。


「リャーン! 先に帰ってるぞー!!」


ガエルが風呂場に向かって声を上げる。


「はーい。ごゆっくりー」

「俺らのセリフだけどなー!」


遠くから聞こえるリャンの言葉にホルスがツッコむ。


「なんかあったらまた呼んでくれ。金貨一枚分は働くからよ」

「金貨一枚ならだいぶ肉体労働強いられるぞ」

「今度は金貨2枚ぐらい用意して待ってます」

「やめとけよ、もう裏技使えねーんだから簡単には集まらん」









客人のいなくなったエスタ城は静かになるどころか、さらに騒々しくなっていた。


「ブルーノ、北区の現状は?」

「はい。北区のおよそ7割が瓦礫の山になっており、約5000人の民衆が路頭に迷っている状態です。また、西区でも同じく巨人の進行によって全く同じ傾向にございます」


カモクの書斎には大量の書類が机の上に積み重なっている。


その一つ一つを目を通し、解決への糸口を紐解いている。


「まずは家のない人達の住居の仮設だ。テントでもいい。人手なら冒険者を使おう、任務として報酬を出し、協会の方へ申請を出せ」

「分かりました」


カモクの専属秘書であり、執事であるブルーノはカモクの命令を無駄なく他の人員に振り分ける。


「資金なら余るほどあるんだ。貯めていた貯蓄も使い、北区と西区にいる失業者への仕事として大々的に取り上げて貼り出せ」

「はい。それと食事面についてですが、被害のない南区、北区、それとエスタ領土にある田畑を買い占めております」

「それはもう目を通した。それよりも衛生面だ。二次災害になっては手遅れになる」


山積みになっていた書類は徐々に減っていっている。


「以前、水路が新しく作られたため、使われなくなった下水道がございます。職人に頼んでそちらも使用できるように話をつけておきます」

「助かる」




慌ただしい城の中、1人の少女がベッドの上で悶えていた。


「師匠が……ブリタリアの公子様……」


元々あたしが許嫁として結婚する予定だった人がクルト師匠……。


「うわーーーーー!」


モヤモヤするの。

何この感じ、嫌なの。


「これからどんな顔をして会えばいいの」








「さて、金貨一枚がここにあります」


俺らはテーブルの上に置かれた金貨を睨みながら椅子に座っている。


「早い者勝ちにするか?」

「いや、貯蓄でしょう」


俺とロンは意見が合わないようで、殴り合いをするしか無いようだ。


「いやいや、どっちも違うよ。今回のこの報酬はもう決まってるんだし」

「え?」


俺とロンは意外と気が合うのか、2人して情けない返事をする。


「エルが言ってたじゃん。剣を買いたいって」

「そういえば……言ったわ」


俺の剣は気付けば無くしてるし、ロンさんも巨人に折られてる。


素振りに使ってる木刀じゃ、魔物は切れないから真剣が欲しかったんだった。


「と言うことで、剣を買いに行こう」







「ここか?」

「うん。ここの人にこの杖を貰ったんだ。だからここで買うのが一番いいでしょ」


クルトに連れられて俺とロンは西区続く大通りの少し外れの小さな武器屋の前に来ていた。


「ここは……メル君のところ」

「ん? ロンさん来たことあるんです?」

「はい。来たって言うか、向こうからやって来たって感じです」


『ドッパゴーン!!!』


「え……?」


クルトがドアノブを持った途端、店の中で爆発が起こる。


「来て早々店が壊れたんですけど……」

「本当に大丈夫なのかよこの店」


ぶっ壊れた扉をどかし、店の中に入る。


「ゴホッ。あーあ、まーたやっちゃったわ」


中は荒れ果て、床中に武器が散乱している。


「ん? お客さん? ごめんね、今片付けるから」

「いえ、大丈夫ですか?」


煙が立ち上る中、咳き込みながらロンが店主の所に向かう。


「大丈夫大丈夫。いつものこと……! ロンレルさん!!」

「お久しぶりです。メル君」


店主は立ち上がり、ロンの手を握る。


「いやー、久しぶりですね! 半年……いや、一年ぶり? そんぐらいですよね」


ブンブンと手を振りながら嬉しそうに会話をする。


「お! そっちは小さな魔術師くん! 3ヶ月ぶり!」

「は、はぁ」


珍しくクルトが引いている。

こりゃぁ、面白い人だな。


「ん? そっちの白髪の子は?」

「あ、アズエリックです」

「エリック君、よろしく」


満面な笑みで手を振る。


「メル君、剣を買いに来たんですけど……この有様じゃぁ商売どころじゃ……」

「小さな魔術師! その杖どんな感じ?!」

「えっ……」


気付けばロンの側を離れ、いつのまにかクルトの元に立っていた。


「どうとは……」

「いやー、使いごごちと言うか、魔術の質と言うか……まぁ、感想だよ」


鼻息を荒くしたメルはクルトの杖を持ち、クルトを見つめている。


「まぁ、すごくいい感じです」

「そうだろう。だって、この杖の仕入れ先はベンゲルだし、製作者はレア様だ。さらにいえばその魔石は岩村の鉱山産だ。高級肉に高級スパイスかけてチーズ乗せるようなもんだ」


例えが独特だな。

そりゃうまいもんができる。


「は、はぁ」

「あっ、剣を買いに来てくれたんだ。こんな小さな店だけど質は保証させてくれ」


クルトに杖を返し、ロンに目線を戻す。


「剣はロンレルさんの一振りでいいかい?」

「いえ、私のと、エル君の分二振りです」

「ん? エル君……? あぁ、エリック君か君も剣を振るのかい?」


今度は標的が俺に向く。


「まぁ、素人ながらですけど」

「手のひら見せて! あ、両手ね」

「はい」


言われるがまま手のひらを見せる。


「んー、ほうほう、なるほど……」


両手をモミモミと揉まれ、まじまじと見つめられる。


「剣を習い始めてどのくらい?」

「んー、だいたい半年? そのぐらい?」


そう言うとメルは少し黙って考え始める。


「え、なんですか? なんかおかしいことでも言いました?」

「ロンレルさん、すごい人を弟子にしましたね」


メルは立ち上がってロンにそう言った。


「まだ、ロンさんの弟子って言ってないですけど……」

「手を見れば分かる。その人の剣技の型、剣の握り方、くせ、色々ね」


す、すげぇ。

この人只者ではないな。


「君の剣はこれだね」


そう言って一振りの剣を渡される。


「これ安いやつだけど君の筋力に合ったいい剣だ」

「えー、もっと高くてかっこいいやつがいいです」


渡された剣は全長90センチほどの子供用の剣。

クルトのような宝石などは一切入っていない無難な剣。


「まぁ、子供だからすぐ大きくなるし、その時はもっといいのを渡すから、これで我慢してよ」


頭をぽんぽんされ、ロンの方へ向かう。


「ロンレルさんはこっちね」

「はい」


ロンには110センチほどの長めの剣。


「ロンレルさんは背が高いし、そんなに剣に固執してないだろうからこっちが無難かな」

「ちょうどいいですね。流石です」

「まぁ、こっちもプロなんでね」


メルは倒れた椅子を起こし、座り込む。


「てか、なんで爆発してたんですか?」

「あぁ、こいつに魔導石をはめ込んだんだよ。無理やりね」


取り出したのは一振りの剣。俺の剣とロンの剣の中間の長さの剣。


たくさんの宝石が柄に嵌め込まれており、剣身は黒く澄んでいる。


「それは?」

「ん? 剣と杖を混ぜたらおもろいかなって思って色々やったてたらドカンとなった」

「剣と杖を混ぜる?」


その話にクルトが興味をだす。


「そんなことできるんですか?」

「分かりません。でも、おもろそうじゃん。だからやってる。さっきので7回目の爆発。そろそろ近隣から苦情が出るな」


椅子をぐらぐら斜めに揺らしながらそうメルは言う。


「杖には基本魔道体って言うのが入ってるんだよ。だからこの剣にもそれを入れた。でも魔道体って衝撃に弱いんだ」

「弱いなら剣に向かないんじゃ」

「いや? それが魔道体は魔剛製に通せば他の剣と変わらないほどの強度に変わる」


魔道体とか、魔剛製とか訳わからん。

なんでクルトは話がわかるんだ。


「じゃぁ解決……」

「しない」


クルトの言葉にメルが遮る。


「それだとただ剣に魔道体を入れただけの『魔力が伝わりやすいよ剣』になるだけだ。必要なのは魔道石。それをつける途端なんか爆発するんだよね」

「なるほど」

「なんなら魔石もつけたいのに」

「それは欲張りすぎじゃ」


クルトの言葉にメルが指を差して言う。


「妥協したくないんだ。武器屋のプロとしてオタクとしてね」

「ごめん、クルト話が全くわからん」


痺れを切らした俺は猿でも分かるようにクルトに打診する。


「ごめんごめん。簡単な話、魔力は水。魔道体は魔力を物体に通しやすく、貯めるだけのもの、詰まる所コップだよ。で、魔導石は魔力を魔術にする水をお茶にする茶っぱ。魔石は水の不純物を無くすための濾過装置みたいなものかな」

「うーん。わからん」


それ以上聞いていたら脳がショートする。


「ハハハ、まぁ、興味ない人が聞いていたら眠くなるような話だ。ロンレルさんもほら」


メルに言われて気づく。

コックリコックリと首を折ながら眠るロンに。


「ロンさんもお疲れだし、会計しようか」

「あ、会計まだだったんだ。忘れてたよ」


メルはそう言って値段を確認し始める。


大丈夫なのかよ、この店は。

リャンは剣を買いに行っている間に帰りました。

安心してください。

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