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デスターン  作者: 春川立木
39/72

36話 最終決戦

引っ越しを真剣に考えてるはずなのに、何故僕は家を探していないのだろう。

もう、高架下に住もうか……。



「悲惨だ……」


エスタ城を目の前に、勇者であるヒーク・レイナリアはエスタ城前にて、街の惨状に息を呑んでいた。


「街の原型がない。それに魔物も……」


来る途中、一匹も魔物と出くわさなかったことに疑問を浮かべ、城を見つめる。


「ヒーク!!」

「? ミーラ!?」


東方面から子供を背負ったミーラがやってくる。


「この子は?」

「うん、魔人と戦ってて……」

「子供が?!」


ヒークは驚いた顔で白髪の子供を見た。


「やられる直前でコルネが蹴りを入れたんだよ」

「魔人に?」

「いや……子供に」

「はぁ!?」


ヒークはさらに驚き、子供の体を触り始める。


「この子、コルネの蹴りを喰らった後も魔人に突っ込んで行ったんだよ!?」

「はぁ!? 嘘でしょ!?」


ヒークの目は飛び出て、口をあんぐりと開ける。


「本当だって。魔人の拳で気絶はしてるけど……息はあるから避難させようと──」


ミーラの会話が終わる直前、遮るようにそれは現れた。


「探す手間が省けた」


ローブをなびかせるそれは、いつの間にそこに居たのか、誰も気づかなまま、言葉を漏らした。


「──ミーラ! 早くその子を連れて逃げろ!」


ヒークはそれをみるなり、鞘に収めていた剣の柄を握りしめて居合の姿勢を取った。


「久しぶりの再会だろ? 礼儀作法は知らないか?」

「ガットレイ……」


着ていたローブのフードを脱ぎ、背中を向けて走る女と白髪の子供を睨む。


「まだ絶滅していなかったか……」

「なんの話だ」


ガットレイは手のひらをヒークに向けると、何でもないと首を振るう。


「しかし前回は驚いた。まさか地獄門を応用されるとは……」

「戸締りはしっかりするものだ」

「そうだな……、だから今回は鍵はしっかり締めておいたぞ」

「だから見当たらなかったのか」


ヒークは辺りを見渡し、鼻で笑ってそう言った。







「容易、逃がせた」

「はっ、別に興味が無かっただけだ」


シルバリは笑って両手を上げる。


「今度はここで殺す」

「笑止。やってみろ」


コルネは体勢をとり、シルバリを睨む。


「先行は譲ってくれるのか?」

「紳士の嗜みだ」

「そうかよっ!」


シルバリは表情筋を釣り上げ、コルネに突っ込む。


「──!?」


コルネは驚いた様子のままシルバリの槍を横腹に喰らう。


「どうした? 威勢だけかぁ?」

「なぜだ……見えぬ……」


腹を押さえてコルネはシルバリを睨み続ける。


「あぁ、なるほど……お前も祝福持ってんのか……」


槍を回しながらコルネへ近づく。


「しらねぇーのか? まぁ、いいか。結局は実力勝負になるだけだ」

「理解っ!」


押さえていた腹から手を離し、シルバリへ走る。


「不可視ならば感覚だ」


コルネの飛び回し蹴りで踵がシルバリの顔面に直撃。


「軽いな」


よろける事もせず、シルバリはこの足を掴んだ。


「──ふんっ!」


掴まれた足はそのままで、反対の足で蹴り飛ばす。


「光星の如く、焦燥の撃を『雷光槍』」


飛ばされるシルバリに向けてコルネは光る槍の魔術を3発放つ。


「──っ」


その全てをシルバリは自身の槍で弾き、後ろの建物に足をつけ、コルネの方向へ踏み込む。


その脚力で建物は全て砕け散り、爆音を奏でる。


槍をコルネの左首へ回すが、これを右手の手のひらでコルネが弾き、空いた左手でシルバリをアッパー。


その直前に、シルバリは空中で回転し、槍の反対側の柄でコルネの真反対の首を叩く。


しかしそれをしゃがみで回避。


その隙をシルバリは逃さず、コルネの後頭部へ上からの蹴りを加えた。


だが、それすらもコルネの両腕で防がれる。


「塞がっちまったなぁ!」


両手で掴んだ杖をコルネの顔面を貫く勢いで叩きつける。


「はぁ?」


ついた槍は空気だけを貫き、そこにはコルネはいなかった。


まるでその場から消えたように、高速でコルネがシルバリの背後に回っていたのだ。


「マジかよ!」

「大マジ」


コルネはそう、言い放つとシルバリの背中に重い一撃を喰らわせる。


「──消えっ!?」


全く同じように、シルバリはその場から消え、コルネの背後に立つ。


それに気づいたのか、はたまた予想していたのか、タイムラグがないほどの速さで、背後のシルバリの足元へ回し蹴り。


それをジャンプで避られる。


追撃でコルネの拳、それを槍でガード、シルバリはその場から右回りでコルネの膝へ槍を回す。


コルネは高く飛んで回避をし、ついでにシルバリの横顎へ蹴りを入れる。


「ぶべっ──」


しかしその攻撃は軽く、すぐさま反撃の槍の柄がコルネの鳩尾に突き刺さる。


「ごはっ──」


その槍をコルネは掴み、攻撃の手段を封じる。

が、簡単にシルバリは槍を手放し、コルネの顔へ両拳が連続で殴りかかる。


およそ12発、殴った後、槍を奪い返し、その槍でコルネを弾き飛ばす。


瓦礫に山にコルネは突っ込み、砂埃でコルネの姿が消える。


「勝負はすぐに着きそうだな」


シルバリは鼻で笑い、瓦礫の方へ歩く。


「さぁ、潰させてくれよ。その──」


煙幕になっていた砂埃が落ち着き、コルネの姿を確認しようとしたシルバリは驚いた。


いるはずのコルネの姿がそこには無かったのだ。


「何処に……」


シルバリの背後、その首筋に刃物が近づく気配がした。


「!!」


紙一重でそれを槍で弾き、すぐさま振り向いた。


「剣も扱えるのか」

「嗜む程度だがな」


コルネは近くに落ちていたのであろう、剣を構えてシルバリを睨むでいる。


シルバリの右足が地面を蹴り上げ、コルネの左足が地面を抉りとる。


シルバリの攻撃を剣で弾き続け、隙ができた瞬間、左拳で腹を殴る。


シルバリも負けじと槍を振るう。


それを避け、コルネの剣筋がシルバリの右手を捉える。


その剣先を槍で弾き、振り向いて槍先をコルネにぶつける。


それをコルネは腕で守り、剣筋はシルバリの腰、真横へ振るわれる。


剣を避けるため、シルバリは側転のように空中で飛び上がる。


コルネは飛び上がったシルバリを睨みながら剣筋を無理やり変え、真上の首筋に持っていく。


しかしこの剣筋は弾かれる。

そう踏んだコルネは途中で剣をその場で離し、シルバリを左手で掴み、空いた右手でシルバリの顔面へ連続のパンチをぶちかます。


さらには両手でシルバリの頭を押さえ込み、右膝で顔面を抉る。


「──っ!」


シルバリの意識が消えかける瞬間に、コルネは掴んでいた手でシルバリを真上に高く、投げ飛ばす。


コルネも一緒にその場から飛び上がり、辺りを確認してシルバリをある場所へと蹴り飛ばす。


飛ばされたシルバリは大きな深い川へと落ちる。


「チェックメイトだ。魔人よ」


河岸に立ったコルネの周りにはバチバチと火花に飛び散る。


朦朧とする意識の中、シルバリは水中からそれをを見ていた。


コルネの周りで小さく爆発し続ける火花は、川の中に居るシルバリへ。

まるでスパークする電流のの如く直行し、川の中で爆発する。


それは何度も、何度も、何度も、何度も、何度も繰り返し、爆発の連鎖を起こしながらシルバリに突っ込んで行く。


一瞬にしてその川は蒸気を上げ、沸騰し始めた。







おかしい……。

元凶のフィーナは倒したはず……。


南区にて僕とミルナは目を見開くほどの光景を目撃していた。


「おかしいの……この人たち……」


ミルナの言う通り、目の前にはここの住人だった人たちが大勢、何かに乗っ取られたかの如く、街を侵攻しているのだ。


さっきから後頭部に攻撃しているのに、全く止まる気配が無い。


僕とミルナは土魔術で攻撃し続ける。


フィーナは倒した、それは事実だ。

じゃあ、この状況は、この人達は、一体誰に操られてるんだ?


近づいてくる住人から距離を取りつつ攻撃を仕掛ける。


まさか……エルの母親と同じ状況?


「師匠! おかしいの!」


ミルナが大声で叫ぶ。


「真ん中にいる人、3年前に葬儀した人なの!」


その言葉のお陰で過信が確信に変わった。


「あの人、元精鋭騎士団の人なの! じぃの同期なの!」

「なるほどね。なら確定だよ」


僕はミルナを見て合図を送る。


「逃げよう!!」


すぐさま振り向き、ミルナと共にその場から走り去る。


さて、何処に逃げよう。

アンデットって、神聖なものに弱いよね……。


「ミルナ! 近くに教会ってある?」

「そっちを左なの!」


ミルナの言われた通り左に曲がる。


「うおっ!」

「きゃっ!」


曲がった途端、金髪の女性にぶつかった。


「ごめんなさいっ。お姉さんも逃げてください!」

「えっ、あ、はい」


目もくれずに謝罪だけをして、すぐさま横切り走り去る。


「勇者パーティが逃げてどうする」


女性の後ろに居たアンティークのゴーグルをつけた男が、女性の頭を軽く叩いてツッコミを入れた。


勇者パーティ!?


すぐさまその場で立ち止まり、踵を返す。


「勇者パーティなんですか!?」

「え、あ、う、うん」


杖を両手で持った女性は振り向いて俺の目を見る。


「助けてください。すぐそこまでアンデットが大量に来てます!」

「ア、アンデッド?! 嘘っ! どうしましょう、。えっと……えっと……、聖職者! いや、教会?!──」

「聖職者はお前だろ」


再び男がツッコむ。


「そうだった」


そうこうしている内に、曲がり角から沢山の死体がゾロゾロと集まってきていた。


「うわっ! す、すごい量!」

「シャアーラ! 早くするんだ!」


聖職者と言われていた女性はその数に圧倒され、慌てて杖を持ち直し、上手くキャッチができず、杖を落とす。


「本当に勇者パーティなのか……?」


不安になった僕は、相手に聞かれない音量で不満をこぼしたが、それは杞憂だったことにすぐにきずいた。


すぐに杖を拾い、聖職者は詠唱を始める。


「無知の血肉、身罷る気息、頽廃死者の跋扈、魂の乖離、不勝への光明、昇天への抱擁よ、地への帰死を──『エクシスヘブネス』」


まばゆく、暖かい光が辺りを包み、あっという間に20体以上のゾンビが土に変わってゆく。


うそ……。

凄すぎる……。


いや、感心するのはまだ早い。

今ので20体近くが消えた、でもそれでもまだ大量のアンデットが湧いて来ている。


「この量、捌ききれない!」

「シャアーラさん! それ教えて!!」


僕は杖を握りしめ、聖職者の横に立った。


「え!? 急に何!?」

「さっきの詠唱を教えてほしいです!」


シャアーラの驚きと、戸惑いの顔を見ながら、僕は頼み込んだ。


「教えるって、無理ですよ!」

「なぜですか」

「だって、まず今のは上級だし、初級自体回復魔術を習得してないと詠唱できないんです!」

「それなら大丈夫!」


その言葉を聞いてさらに困った顔を見せる。


目の前には後ろに居たアンデットが近づいて来ている。


「早く! お願いします!」

「う……、お、教えてる時間なんてないです!」

「なら詠唱の反覆させてもらいます」


杖を構えて集中する。


「わ、分かりました。なら少しだけゆっくりで──」


シャアーラは深呼吸をして、再び詠唱を繰り返す。


「無知の血肉、身罷る気息──」

「無知の血肉、身罷る気息──」


一言一句全く同じ様に繰り返す。


「──頽廃死者の跋扈、魂の乖離」

「──頽廃死者の跋扈、魂の乖離」


これ難しいな……。


「不勝への光明、昇天への抱擁よ、地への帰死を──」

「不勝への光明、昇天への抱擁よ、地への帰死を──」


シャアーラと、僕の周りに蛍のような光の点がポツポツと現れる。


『エクシスヘブネス』

『エクシスヘブネス』


シャアーラの詠唱の約0.6秒後、僕の詠唱が終わった時、二つの光がほぼ同時に放たれる。


「嘘でしょ……。1発ぅ?!」


シャアーラは驚きながら僕を見る。


「これ、魔力の構築と、配分難しいですね……」

「いや、難しいとかの次元じゃないですよ! 私でも四年かかった神聖魔術なんですよ! 何をしたら1発で発動できるんですか?!」


近くにいた半径10メートルのアンデットは浄化され、さっきの3倍以上の数が減っている。


「師匠は天才なの」

「世界は広いんだ。シャアーラ、気にするな」

「まぁ、そう言うことです」


ミルナと、アンティークおじさんは腕を組んで頷きながらそう言った。


「そう言うことって──」


シャアーラの言葉が終わる前に、僕らの前にいるアンデットの間をすり抜けるように、誰かがこちらに歩いてくるのに気づく。


「凄いね! パラペット。本当に勇者に新しい仲間が増えてるよ」

「ヒヒッ当たり前」


それに気づいたのは僕だけではなかったのか、シャアーラもアンおじも喉を鳴らしてそいつらを見ていた。


「おっと、ごめんね。そこ通しておくれ」


身長は僕とそんなに変わらない。


まるで子供の見た目をしているが、人ではない事はすぐにわかった。

隣にいる奴も例外じゃない。

2メートル以上ある腕に、鉄すらも噛み砕けるような歪で大きな牙。


明らかに魔族やその類の生物だ。


「来たか。予想通りだな、シャアーラ」

「はい。報告通りの魔人、トラペジとパラペットです。本当にすべて完璧です。流石はコルネ様」


さっきまでの腑抜けた空気感が一瞬にして凍りつく。


「君たちはここから逃げてください」

「ぼ、僕たちも戦えます」

「いや、ここは去ってくれ。子供は未来がある」


ミルナも2人の意見にに賛成なのか、僕を心配そうに見つめている。


「師匠。ここは逃げるの」

「あ、あぁ」


ミルナの一言で僕は踵を返し、ミルナと共に走った。


悔しいな。


道を走っていると、自分の右手の違和感に気づく。

持っている杖が震えていたことに。


今までやりやった敵とは別次元の威圧感にビビってるんだ。


戦えるとか、啖呵切った癖に、恐怖を感じている自分が恥で、不甲斐がなさすぎる。


「ミルナお嬢様!」


路地を走っていると、正面から衛兵の声が聞こえ、我に帰る。


「大丈夫でしたか?!」

「うんなの。もう帰るの」


ミルナは僕の顔を見て、衛兵に伝える。


「そうですか……無事で良かったです」

「ミルナお嬢様、クルト様、戻りましょう」

「はい……」


僕はしこりが残ったのか、来た道を振り返りすぐにミルナ達に続いた。

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