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デスターン  作者: 春川立木
25/73

22話 師弟関係

まだ暑い。

まだまだ暑い。

まだ暑い。

夜は寒いが昼暑い。

逆になっても良いんだよ。

寒くなっても良いんだよ。

着る服ないから外出んが。

「おーい、起きろー」


天気のいい朝、俺は気持ち良さそうに寝ているクルトを揺さぶっていた。


「門の前に来てるぞーお弟子さんが」

「うう、後5分……」

「さっきも5分って言って寝てたじゃねぇーか」


もぞもぞと布団の中に入っていくクルトを見ながらため息をつく。


「じゃぁ、後15分」

「増えてどうする」


俺はクルトの頭にチョップをキメる。


「あだっ。だってぇ腰が痛いもん」

「腰が痛ぇって、昨日自分で回復魔術使ってピンピンしてじゃねぇーか」


包まる布団を無理やり剥ぎ取り、無理やり起こす。


「うぅ……これが人間のやることかぁ……」

「いや、俺クウォーターらしい。母さんが半分人間って言ってたし」

「うえぇ?」


変な冗談言うなと言うように、眉を八の字に曲げる。


「多分冗談だから気にすんな」

「多分ね」


渋々ベッドから降り、身支度を始める。


「はぁ、今日から先生か……。僕、先生って程の年齢でも、器でもないんだけどなぁ」


自分の自信の無さと、場違い感から来る不安のせいで頭を抱えた。


「おはようございます。エルくんクルトくん」

「あ、ロンさん。もう具合は大丈夫?」


貫かれたはずのロンの腹は塞がっており、杖をついて元気に歩いている。


「えぇ、クルトくんのお陰ですよ」


回復魔術と言うものは、初めて目の当たりにしたのだが、便利なもんだ。


「クルトくんのお弟子さんが来てますよ」

「お弟子……」


追い討ちをかけられたクルトがクソでかいため息をつく。


「? 乗り気じゃなかったんですか?」

「ロンさん。クルトは不安なんですよ。初めての弟子で、ちゃんと教えられるのか、期待に応えられるのか」


ロンは顎に手を置き、頷いた。


「なるほど。魔術のことはさっぱりなので詳しくは言えないのですが、魔術師のほとんどは弟子を取ることはないですからね」

「そうなんだよ。弟子を取れる魔術師は普通、宮廷魔術師レベルの人なんだ」


はへー。

流石クルト。

その歳でそのレベルまでいってると、ミルナお嬢様のお墨付きってことだな。


「でも僕はそのレベルに達することは無い」


皮肉のように、自虐のように言葉をこぼす。


「なに勝手に未来決めれるんだ。実際俺の父親は宮廷魔術師だったけど、そのレベルに達してるぞ、お前は」

「そうですよ。元冒険者の私が太鼓判をできるほどの実力は持っています。なんならそれ以上です」


クルトの俯いたままの返事が返ってくる。


別に嘘は言っちゃいない。

事実、クルトはすごい魔術師だと思う。

たった8歳で無詠唱で魔術を使えるやつなんているわけがない。


「まぁ、やるだけやってみるよ」










「おはようございます。ミルナお嬢様」

「ミルナでいいの」


目を擦りながら玄関を出て門まで歩く。


「お付きの方もおはようございます」

「おはようございます。クルト様、私のことはじぃで構いません」


昨日まで腫れ上がったじぃ顔はクルトの魔術で治してもらったおかげで、イケおじの執事に戻っている。


「エル様もおはようございます」

「エルでいいですよ」

「クルト師匠、早く魔術を教えてほしいの」


俺への挨拶は時間の無駄らしく、ミルナはすぐさまクルトへ駆け寄った。


「師匠……」


その言葉がむず痒く、クルトが右耳を触る。


「じゃぁ、ミルナ、魔術はどこまで習われましたか?」

「敬語もいらないの。あたし達は師弟関係」

「うっ──」


恥ずかしさキャパオーバーになったクルトは、右耳を触るのをやめ、ため息をつき、両手で顔を押さえる。


「魔術は初級なら使えるの。でも、前の火球みたいなのは出来ないの」

「前の……?」

「お城から見えたの、お花みたいな火球」


あぁ、魔術お披露目会の。

あの花火目立つもんな。


「あれに憧れてんだなミルナお嬢様は」

「あれかー」


クルトは少し難しそうな顔を見せ、ミルナに言った。


「あれは魔術を3つぐらい混ぜ合わせたやつなんだよ」

「頑張るの」


握り拳を出し、ミルナは気合い十分だ。


「あ、あれ。持ってきた?」


クルトはミルナのバッグを見つめてそう言った。


そもそも弟子なんか取りたがる歳でも、性格でも無いクルトが昨日ミルナにオーケーを出したのには理由があった。


ミルナは返事をするとバッグから分厚い本を取り出した。


「これが……魔術教本!!」


目を輝かせ震えるてでその本を受け取る。


「よかったな。エスタ城に魔術教本があって」


受け取るや否やクルトは本を開きマジマジとページを進めてゆく。


「なるほどね」


パタンと本を閉じると、クルトは俺とミルナを見て、


「じゃあ、最初に質問。魔術は何を媒体して発動出来る?」


と、質問をした。


「魔力だろ」


それぐらい知っている。

誰にでも備わっている魔力、それを変換させて炎だったり、水だったり出せるようになる。


「じゃあ、魔力はどうやって作る?」


作る?

何を言ってるんだ。

作るも何も魔力は人間個人に備わってるモノだ。

日々のエネルギーが魔力に変わるだけだろう。


「強いて言えば食事とか?」

「ふふ、エルは分かってないね」


人差し指を振り、クルトが笑う。


「……魔素」

「そう! ミルナ正解!」


魔素?

なんだそれ。


「魔素とは、この世界にある目に見えない物質のようなモノ、無限のエネルギーとも言われる存在だよ」


はへー


「魔術教本ではこう綴られてる────」


クルトは再び教本を開き、音読を始めた。


「魔力とは魔素を体内に取り込んだものの名称である。魔素本体は生物に有害である為、それを薄める器官、魔経と呼ばれるものによって魔力に変わる」


クルトは読み終わると本を閉じ、俺をじっと見つめる。


「なんだよ」

「意味わかった?」


おい。

俺がこんな簡単な説明すら理解できない猿とでも思ってんのか?

思ってんなら失礼だぞ。


「わかりません」


潔く首を横に振る。


意地を張るのと、嘘をつくのはよくないからね。


「簡単な話、魔素を薄くしたのが魔力。で、血管のように魔力は体の中を常に動き回ってるって話し」

「その文だけでよくわかったな」


クルトは鼻を鳴らして、まぁねと胸を張る。


「ほんとはもっと詳しく書いてあっただけなんだけどね」


なんなん?

少しの間尊敬していた俺の気持ちを弄びやがって、返せその俺の気持ち。


「えー、魔力はさまざまなものに変化できます」


クルトはお茶を濁すように咳をして、話を続ける。


魔術で石の棒を作り出し、地面に文字を書いてゆく。


「皆さん知っての通り、四大元素。火、水、風、土です」


言葉の通り、地面には四つの文字と絵が描かれる。


その他に後3つ後付けの属性が存在します」


四つの下にプラスを描き、雷、闇、空という文字を描く。


クウってなんだ?」


雷とか、闇とかならまだわかる。

でも空ってなんだ?


「あー、これは虚空って意味だよ。空っぽみたいな意味合い」

「いや、わからん全く」


クルトは地面に四角を描く。


「ここに箱があるとするよ」

「はい、箱があります」

「この箱の中はどうなってますか?」

「はい、空っぽであります」


箱の中に砂時計を描くを


「これは?」

「はい、砂時計が入っています」


次にクルトはその砂時計を消し、代わりに力こぶの絵を描いた。


「これは?」

「こ……これ……? 力?」

「そう。正解」


合ってたんだ。

合ってたんだって思ったところで、これはなに?


「時計が時空。力が重力って感じだね」

「はぁ?」


普通にキレそうかも知れない自分が、少し悔しい。


「真っ白いキャンバスには色んな色が塗れるねって話しだよ」

「ナルホドネェー」


全く理解はしていない。

と言うより、理解できたとて魔術は使えないので、もういいです。


「ミルナお嬢様はわかった?」

「……半分くらいなら」


すごいな、俺は頭が空っぽだから何にもわからんぞ。


「……でも、回復魔術はどこに属すのかわからないの」


確かに、それだけは俺もわかるぞ。


「あー、回復魔術は魔力を使わないんだ」

「使わないって、魔力使うから魔術だろ?」

「使わないってより、利用するが合ってるかも」


その遠回しの口調はどうにかならんか?

猿でもわかる魔術授業にしてくれよ。


「魔力ってのは常に振動してるんだ。人それぞれの周波数で」


振動して、身体中あちこち移動もして、忙しい奴だな魔力ってのは。


「回復魔術はその人一人に対して周波数を合わせて、無理やり活性化させ、再生時間を爆発的に早くしてるだけなんだ」


それはもう、魔術ってより、共鳴だな。


「クルト様。短時間の黙読だけでここまで理解したのですか?」


静かに見ていただけのじぃだったが、不自然に思ったのか、そんなことを質問した。


俺も言われるまで気づかなかった。

魔術教本初めて読んだにしては詳しすぎる節がありまくる。

全部で500ページあるんだ、そう短時間で理解されちゃ困るってもんだよ。

実は魔術教本読んだことあるだろ。

あのゲールですら70ページだぞ。


「まぁね。三分の一くらいは理解出来たよ」

「キモっ」

「ひどっ」


やべっ

つい言葉に出ちまった。

これが才能ってやつか。










クルトの授業は週に6日間、朝から昼にかけて行われていた。

もちろん俺は魔術は使えないため、少し遠くで自主練に打ち込んでいる。


「ミルナ、頭の中で詠唱するんじゃダメだよ。発動する瞬間のあの魔力の流れをイメージするんだ」

「はいなの!」


1ヶ月たった今、ミルナは無詠唱魔術の習得を頑張っている。


「てかさぁ、毎日のようにこうやってミーガバードに来てるけど、家族とかに心配されねぇーの?」

「大丈夫なの。じぃが上手くしてるの」

「はい。上手くしています」


少し自慢げにじぃが微笑んだ。


さっすが、うちのじぃだ。


「俺、向こうで自主練しとくわ」


1ヶ月、たった、1ヶ月でミルナは驚くほどの成長を遂げていた。

初めはカミカミの詠唱だったが、今はスラスラと言葉が出てくる。

つい昨日、憧れの花火を打ち上げるほどに成就している。


「これもクルトの教えと、ミルナの才能なのかね」


少し、嫉妬心を混ぜた言葉を放ち、俺は腕立てを始める。






「エルくんは今日も筋トレですか」


腕立て908回目に到達したところで、洗濯物を干しているロンが笑顔でそういった。


「エルにぃーちゃんは筋肉が友達だって、言ってたよロンさん」


茶髪のケインが良からぬことをロンにチクる。


「そんな時期が私にもありましたねぇ」


あったんだ。


「ずっと筋トレしてても飽きないの?」


ケインが俺にのし掛かり、良い負荷が胸に伝わる。


「ぐっ……、筋トレは……習慣……で、飽きなんてない……」


にしても重くなったなケイン。

成長してる証だ。


「今、何回目ですか?」

「962回……です……」

「エルくん。神体術だけじゃなく、剣術も習いませんか?」

「え?」


967回目で俺は地面に衝突し、腑抜けた声でロンに返事をした。


「実は私、弟子を取ったことないんです」

「取りたいんですか?」


馬乗りケインが俺から剥がれ、立ち上がる。


「えぇ、我流の剣術ですが、人に教えたいと昔から思っていたんです」


剣術か、クルトは魔術授業で忙しそうだし、ミルナがどんどん成長をしているのを見て、何かやりたいと思っていた。

それに、剣を使えれば、剣士と戦うときアドバンテージになるかもな。

神体術と合わせた戦い方なんてこともできるかも。


「俺なんかで良ければぜひ」


断る理由が思いつかず、なんなら受け入れる理由しかなかったため、俺は即答でロンの弟子になった。










「ずっと疑問に思ってたことがあるんだけど。魔術師ってさ、みんな魔術、魔術言ってるけど、魔法とは違うもんなのか?」


日課の腕立て、腹筋、体幹を終え、剣術修行も明日からなので、暇になった俺はミルナの修行をあぐらをかいて眺めていた。


「お、いい質問だよそれ、エル」



「魔術はね術式化された物なんだよ。で、魔法は魔力を使う方法って感じ」

「いや、わからん。猿でも分かるように説明求むよ」



「んー、魔術は誰でも使えるように公式が決まってて、答えも変わらないってこと」

「魔法は?」

「魔力の新しいあり方、方法って意味なんだけど、これは答えも公式も存在してないんだよ」

「?」

「人によって魔法の認識は違くて……ほらなんて言うのかな? ステーキを料理するじゃん?」

「はい、料理をしましょう」


「肉をスパイスと一緒に焼けばおいしくなるって調理本に書いてたとするよ」

「はい」

「これ通りに料理するのが魔術」

「はい」


「じゃあ、焼かずに煮たり、蒸したりしてステーキを作ります」

「はい」

「これがステーキになります」

「別もんじゃねーか!」

「そう! その感覚が魔法なんです」


「つまり、魔法は違うやり方ってこと?」

「まぁ、その認識って感じかな? それに魔法は他の人には使えない特許的な物なんだよ」

「難っ」



「魔法は教えるより、習得した方が簡単だからね」

「クルトは使えるん?」

「いや、無理だね」


無理なんかい。 

なんか出来ます的な感じで言ってんのかと思った俺が恥ずいわ。


「出来たの!!」

「え? 魔法?」

「違うの! 無詠唱なの!!」


ミルナが叫んでいる場所には、クルトが作った岩が粉々に砕かれていた。


「すごいよ、ミルナ! ものの1ヶ月で魔術を無詠唱で使えるようになったなんて!!」

「ふふん、あたしはすごいの! 天才なの!!」


アドレナリンのせいか、ミルナは少し高いテンションでじぃに抱きついた。


「流石です、ミルナお嬢様。私も鼻が高くなります」


元から鼻が高いくせにそれ以上高くなったら凶器だろ。


「やったの! これでお父様に言えるの!」

「そうですね、お喜びになると思います」


領主様に自慢でもするのだろうか。

それなら俺とクルトを美化しまくって、給付金でも余った食料でも分けてください。

ミルナも毎日のように味が薄いと文句言ってたし、美味しいご飯が食べれるのもそう遠くないかもな。


「じぃ! 早速行くの!!」

「えぇ、行きましょう」

ちなみにじぃの本名はジィーナス・ルエルです。

ミルナの周りはジィーナスと呼んでいるんですが、ミルナが言葉を発し始めた時、ジィーナツと呼び辛そうだった為、ジィーナスがじぃで呼んでくれと頼んだ結果、じぃになったらしいです。

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