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デスターン  作者: 春川立木
21/72

18話 魔術教本を取りに行こう

最近忙しすぎん?

ゼル○とかゼ○ダとか○ルダとかやらないかんこと多すぎる

「では、気をつけて行ってきて下さい」


太陽が上がりきっていない早朝、孤児院の玄関でロンが手を振って見送る。


「行ってきます」

「ふわぁー、いって……きま……す……」


クルトが目をこすりながらあくびをする。


「ココ村は馬車で半日で行けるはずです」

「はい。帰るのは明日の昼なんで、今日は俺の家に泊まります」

「……ムニャムニャ」


隣でクルトが船を漕いでいるのを見て、俺とロンがため息を吐く。


「本当に大丈夫ですか?」

「俺が何とかするんで、大丈夫です」


胸をドン、と叩き鼻息を荒くする。


「頼り甲斐がありますね」

「そりゃ、ロンさんより強いですから」

「あれは手加減だって言っているでしょう。本気を出せばエルくんなんて、けちょんけちょんです」


口は何とでも言えますよロンさん。

俺だって本気出せば呼吸することすらさせず、ロンを叩きのめせる自信がある。


「それは楽しみです。今度本気でやりましょう、ロンさん」

「う……、え、えぇ。いつかで」


あ、逃げた。

大人のくせに。


「ほら、早くしないと馬車出てしまいますよ」

「おい、クルト起きろ。早く行くぞ」


クルトにチョップを喰らわせ、夢の中から引きずり出す。


「いだっ! え……もう着いた?」

「寝言は寝て言え」

「いや、寝てたからセーフですよ」







「お嬢様ー! お嬢様ー! どちらに行かれたのですかー!」


エスタ城は早朝から混乱に満ちていた。

なぜかと言うとエスタ・ミルナの姿がベッドから忽然と消えていたからだ。


「まだ見つからんのか!」


そうスーツを着た老人に怒号を浴びせるのは、ミルナの父であり、エスタ領主のエスタ・カモクだ。


「すみません。城中探し回ってはいるのですが、未だ見つかっていません」

「使えん奴らめ」


唾を地面へ吐きつけ書斎へ戻る。


「はぁー、どこに行ったのでしょう……。まさか……」


老人は心当たりがあった。

昨日外を眺めてため息を吐くお嬢様の姿が。






孤児院を出て、約30分。

エスタの正門の東側。

馬の乗り合い広場。

俺とクルトはあくびをしながら列に並んでいた。


「おい、これ全部ブリタリ湖行きの人たちか?」

「うーん。どうだろ、ノアリア行きの人たちもいるんじゃない?」


どこだよそれと、言わんばかり顔でクルトを見る。


「ノアリア領はブリタリアのずっと北にあるブリア山脈の向こう側のことだよ」

「へぇー物知り」

「ロイさんが持ってた本に載ってた」


流石クルトだ。

何でも知ってる。


「僕らはブリタリ湖行きに乗って、途中ココ村近くで降りるから、金額が聖貨一枚ってとこだね」

「一人?」

「うん」


列が進み俺らの番が来る。


「いらっしゃいませ。どちらに行かれますか?」


愛想の良い店員が、笑顔で接客を始める。


「えっと……ブリタリ湖行きなんですけど、途中のココ村って場所の近くで降ります」

「でしたら、10分後に出る馬車で行けますよ。手前の馬車から二番目の馬車が、ブリタリ湖行きです」


案内された馬車を見る。

ヒヒーンと前足を上げ、うまそうに干し草を頬張る。

威勢のいい馬だこと。


「料金の方は、あのバンダナの御者に渡して下さい」

「あ、了解です」


クルトはそう言うと、馬車の方へ歩く。

俺はその後ろをついていく。


「どこまで行くんだ?」


バンダナを巻いた大柄な男が干し草を馬にやりながら話しかける。


「ココ村付近で」

「そうか、聖貨2枚って言いたいとこだが、子供二人ってことで一枚でまけとくよ」


お、ラッキー。

子供って便利なもんだ。


「おっちゃん。ココ村はどれくらいで着く?」

「んーそうだな、昼ちょい過ぎには着くと思うぞ」


まぁ、妥当な時間だな。

俺なら1時間もかからんぞ。


ちょっと誇らしげに馬を見る。

俺に負けたことなんて知りもしない馬は、ブルブルと頭を動かした。






「あの炎が上がった場所はここらへんのはず……」


ミルナは安っぽい変装をして住宅街を歩いていた。


「もし会ったら魔術を教えてもらうの」


ミルナはそのまま路地の方へ入って行く。


「嬢ちゃん。こんなとこで何してんだ?」


路地に入った瞬間、前にいかにも柄の悪そうな男が二人、待ち構えていた。


「うるさい。あたしはやることがあるの」


子供ながらに怯えず先を進もうとする。


「つれねぇーなぁ。ミルナお嬢様ぁ」

「?!」


ミルナが完璧だと思っていた変装が完全に見破られたことに驚きを隠せず、帽子を深く被り、つけ髭を確認し、かけていた眼鏡をクイっと押す。


「誰ですか、その人は。あたしはただの旅人ですの」


男たちはその言葉を聞いて大笑いをする。


「はは、ちっちゃな可愛い子が、変な格好してることが変装になるのか?」

「ムッ、もういいです。先を急ぐの」


ミルナは踵を返しその場から立ち去る。


「まぁ、逃さないけど」

「えっ」


振り返るとそこには別の男が二人立っていた。


「挟み撃ちなんて卑怯……」

「まぁ、そう言うな。大人しくしとけば痛いことはしない」


後ろの男がミルナを羽交締めにする。


「うっ……!」

「声を出すな。黙ってついてこい」


口を抑えられ頭に袋を無理やり被す。


「領主様はいくら出すかね」

「金貨10はくだらねぇーだろ」

「そりゃぁ、一生遊んで暮らせるな」


ロープでミルナを縛り上げていると、路地に一人の男が剣を携えてゆっくりと歩いて来る。


「幼い女性を乱暴に扱うのは少し許し難いことですね」

「誰だ? テメェーは」


剣を鞘から引き抜き、優しい顔つきをした男は笑みをこぼす。


「ただの孤児院の院長をやってる元冒険者です」

「はっ、なら関係ねぇーことだな」

「えぇ、その通りです」

「ならその剣しまって回れ右するんだな」


頬が上がっていた顔のまま男は問いかける。


「私は衛兵でも、ヒーローでもありません。なので、少女を助ける義理はないです。しかし、あなた方を無視する義理はもっとない」

「あぁ?!」


一人の輩がナイフを取り出す。


「ましてや、ここの隣では私の宝たちがまだ眠っています。大事な宝に嫌な噂を聞かせたくないですし、私がここで見逃せば明日気持ちの良い朝を迎えられません」


ナイフを持った男が飛びかかる。


「え……」


誘拐犯は揃って口を開けていた。

目の前には先ほど威勢だけが良かった仲間の右腕が落ちていた。


「ああ゛──!!」

「言ったでしょう。私は元冒険者、魔物を怪物を人間を数えきれないほど殺してきたって」

「おい……おい……やったな、やっちまったなぁ!」


切り取られた右肩を押さえ込み悶える男を指刺してもう一人の男が叫び、腰に携えていた剣を抜く。


「やっちまった? ちょっとだけ違いますよ。やったんですよ、やってやったが正解です」

「どっちも一緒だぁ!」


剣で切り掛かる。

それを軽やかに弾き返し、院長が踏み込む。


「にぃ」


同じように右腕を切り落とそうとすると誘拐犯の男は不敵な笑みを浮かべた。


「うっ!」


軽やかに弾き返したはずなのだが、院長の顔には切り傷が入り込む。


「入ったなぁ、ほんの少しだけ、入ったなぁ!」

「こんなか擦り傷だけで喜ぶのは素人以下ですね!」

「いやぁ、喜ぶぜぇ、大いに感激する。だってなぁ、たった数ミリの傷さえ入ればいいんだぁ!」


その言葉の意味を院長はすぐに理解した。


「──! 毒……っ!」


握っていた剣が地面に落ち、その場で崩れる。


「甘いなぁ、院長さんよぉ!」

「くっ……」


院長の笑みは苦しみに変わる。


「この男も連れて行く。後でたぁーっぷり楽しむからなぁ!」

「へいへーい」


男どもは身動きのできないロンを、慣れた手つきで縛り上げ肩で担ぎその場を後にした。







馬車で揺られること約1時間。

俺たちはやることがありません。

唯一あるのは何も変わり映えしない景色を、ただ呆然と眺めるだけ。


「暇ぇー」

「それなぁー」


二人揃ってあくびをする。


「眠たそうですね」

「退屈なだけですよ」


ダラけきった俺らを見て笑いながら商人が声をかける。


「退屈なら私の商品を見てもらえませんか?」

「商品?」


商人は大きめのバックからいくつかの小物を床に置いて行く。


「えぇ、こう見えて私は発明家兼、商人なんです」

「ほほぅ」


玉ねぎの形をした木製の小物を取り出した時、クルトが目を輝かす。


「それって、あれだよ!」

「あれって何だよ」

「あの、あれだって。えっと……」


こめかみを人差し指でトントンと叩き、脳みその片隅に記憶されているはずの玉ねぎ型を思い出す。


「蓄音機です」

「そう、それだぁ!!」


商人が答えを出した途端、クルトが商人に指を刺して叫ぶ。


「蓄音機ぃ?」

「ボタンを押して話せば、話したことがこの中に入るんです」


いや、蓄音機が何かは知ってるよ。

この世界にもそんな技術があったことに驚きなんだよ。


「そのてっぺんの突起を押したまま声を出してみてください」


俺は言われた通り蓄音機を手に取り、ボタンを長押しした。


それと同時に商人はハンカチを取り出し、口に当てる。


「……クルトのあほー」


そう声を出した時、玉ねぎ型蓄音機のボタンの隙間から煙が上がる。


「え……」

「あーあ、悪口言うからバチが当たったんだよ」


クルトがクスクスと笑っていると、弱い煙は瞬く間に勢いをあげ、蓄音機は弾け飛び、中から煙幕の如く煙が荷台に充満する。


「あれ……? なんか目が……」


クルトのまぶたが閉じる。


「──ガス?!」


気づいた時には体に睡眠ガスが巡り、まぶたが鉛のように重くなっている。


「なんで……」


俺は重い目を開き、商人を見る。


「バカで助かったな、ジン」

「あぁ、まさかこの時代に存在してたなんてな。てっきり絶滅してたもんだと思ってた」


俺を睨み、ジンと言われた商人が帽子を取る。


「だから言っただろ、俺は嘘じゃないって」

「はいはい」


ジンは着ていた正装を脱ぎ、ボロボロの下着に、ヨレヨレのズボンに着替える。


「あぁーやっぱ、これが一番落ち着くわ」

「似合ってたぞ。意外とな」


……誰だ?

誰と、話してる……?


「うるせー。黙って前見ろ」


ジンが、バンダナをマスクにしていた御者に声をかける。


「へいへい」


……バンダナのおっさんもグル……かよ……。


俺は眠気に耐えきれず目を瞑った。

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