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太陽のように

 次の日の朝。


 六年一組の教室には、昨日とは違う空気が漂っていました。

 あの怯えと恐れが混ざった暗澹とした雰囲気とはまた異なる緊張感。


 そう。彼女が戻ってきたからです。

 先日ひと騒動を起こしてクラスとのわだかまりを残していた、あの子が。


 「みんな、この前はごめんね。アタシ、あの時はどうかしててぇ」


 開口一番の謝罪の言葉。

 涙をぬぐうような仕草をしながら、たどたどしく振る舞う詠梨ちゃん。

 本当に泣いているかは怪しいところ。


 「おいおい、どの面下げて戻ってきたんだよ!」

 「ごめんで済むわけねーだろ! 土下座しろ土下座」

 「ちょっと男子ー! 矢倉さんが可哀想でしょー!」

 「男子サイテー! 潰すぞ!」


 罵声を浴びせる男子と、それを抑えにかかる女子。

 言葉だけ聞くと剣呑な感じですが、これも生徒たちなりのケジメというか照れ隠しというか、そんな感じのアレなのでしょう。


 「うーん、許しちゃう!」

 「そもそもそんなに怒ってないし!」

 「本当は心配してたんだよお。矢倉さんのこと!」


 クラスメイトの前に姿を現わしてから一分も経たないうちに、詠梨ちゃんはみんなに温かく迎え入れられたようでした。

 まあ最初からみんな、許すって決めてたようですからね。


 「みんな、ありがとねぇ。これからもアタシと仲良くしてよねぇ!」


 アイドルばりの眩しい笑顔で手を振り、クラス全体に煌めきを届ける詠梨ちゃんの姿がそこにはありました。

 さっきまで泣いてませんでしたっけ?


 まあとりあえず、彼女に関しては一安心でしょう。

 もう少し一悶着あるかと心配していましたが、さすがは私の生徒たちです。


 そしてクラスの雰囲気も一気に陰から陽にガラリと変わった感があります。

 まるで暗闇に差し込んだ太陽の光のように、詠梨ちゃんの存在が生徒たちを明るく変えてしまいました。


 もしかして、これで一見落着ですか?

 七不思議のこととか、死体云々の話とか、もう考えなくていい感じですか?


 そんな私の甘い考えは。


 どうやら的中のようでした。

 詠梨ちゃんが戻ってきたことで、昨日までのクラスのどんより感は嘘のように消え失せていたのです。


 授業中にふざけまわる生徒たちも久々に出てきて、そのたびに私が注意し、クラス内に笑いが巻き起こる。

 そんなかつて悩まされた光景が、こんなにも嬉しく感じるとは。


 素晴らしいことですね。

 なんだか、肩の荷が下りた気分です。

 私はとくになにもしていませんけれど。


 そんなこんなで、心配事がいろいろと解消したわけです。

 だから今夜は、ひさびさに安眠できる気がしたのでした。


 少なくとも昼休みになるまでは。


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