8話 「だから素養はあるって言ったじゃんよ」
武器。
一般的に長剣に短剣、ハンマーに斧、モーニング・スター、槍や鎌に、鞭、弓とかあるけれど、銃なんてものもある。
銃、初めて見た。
トップランカーで持ってる人もいるって聞くけれど……。
魔法使いなら、魔導書なんて使いこなしたり、ロッドが打撃武器になったりもするって言われている。
ハンマーやモーニング・スター、斧なんかはあたしの非力な身体じゃ使いこなせない。
幼馴染達がきいたら「イケる、イケるよ!」と揶揄しながら言うヤツもいるかもしれないけれど、あたし、無理だから!
「持ってみてください、エメさん」
アレクに勧められて、いろいろと持ってみる。
けどやっぱり重量のある武器はダメだ。
持ち上がらないって。
「ダンジョンに入れば、重量は気にならなくなるだろう、とりあえず、メインとサブウェポンは決めておいた方がいいな」
……本当ならここで剣とか選ぶよね……でもこれもなー……。
だいたい武器自体わからないって……。
「ロッドやスタッフ、メイスなんかは、まだいいんじゃないの? 魔力の伝導率いいし、アンタ一応魔法使えるし」
新紅の魔女様の推薦で、ちょっと握って持ってみた。無難ですよね……。
むう……いい感じ? どうなの?
「平均的な一階層ぐらいのモンスターなら、打撃だけでいいからそれでいいいかもな」
……打撃……あたしはスタッフとメイスを見つめる。
メイスのほうが長い? なるだけモンスターには近づきたくないと思うんですよ。
「メイスか……スタッフじゃないのか? まあ妥当だけど。あとはサブか」
あたしは銃をもってみる。
アダマント様と深紅の魔女様はニヤニヤする。
アレクも目をキラキラさせている。
「持ってみたくなるよね~」
「遠距離攻撃用にサブとしても心強いが、モンスターの急接近でメイスが取りまわしづらい時なら近距離で使用しても効果的だろう。魔弾に付与をかければ殺傷能力も上がる。素人には弓よりもいいかもな」
「どう使うんですか?」
あたしが小首をかしげると、お二人が立ち上がる。
「外で実射してみようか」
庭に出ると、深紅の魔女様が土壁を作る。
「あれを標的に、持ち方はこうグリップを握る。安全装置を外して、撃鉄を起こして、狙いを定め、トリガーを引く」
この人も銃を使った事あるのか……ルビィ・ダンジョンの魔女だもんね。あるか。
持ち方から使い方まで一通り、見せてもらった。
新紅の魔女様が土壁に向かって射撃をすると、壁は霧散した。
「ルビィは銃弾にさらに魔力を乗せるから、ああいう感じになる」
アダマント様が解説する。
「……すごい……」
「エメさんも! やってみてください‼」
アレクに勧められて、グリップを握り、深紅の魔女が作った土壁の標的に向かって引き金を引くと、風穴があく。
うはあ……。
「え、集中と命中のスキル持ちなの? いいね」
「だから素養はあるって言ったじゃんよ」
アダマント様と深紅の魔女様は頷く。
スキル……集中に関しては、付与魔法を防具や武器に着ける時、このスキルでてるのかなって思ったりしたけど。
命中……って何?
「すごいです! わたしも、初めて扱った時は外れまくってました!! でもエメさん一発で命中です」
「そ、そうなの?」
この子……癒されるわ……そして褒め上手だわ……。
「アレクの場合は、標的に当たらないが、魔力が乗りすぎて、余波で周囲が吹っ飛ぶからな」
アダマント様の言葉にあたしはアレクを見る。
アレクさん……。あなたどんだけ魔力あるの?
「銃も種類があるから、もっと連射可能なヤツにするか? 両手が塞がるからあまりお勧めできないが」
「よくわかりませんが……とりあえず、これでいいかもです」
あたしの言葉を聞いてルビイ様は頷く。
「そうね。アンタ、付与魔法以外をダンジョンで取得できるかもしれないから」
「攻撃魔法を習得したら、銃いらないからな。補助的な意味でもいいんじゃないか?」
アダマント様の言葉に耳を疑った。
なんで? どういうこと?
「だって、ノータイムでモンスターに照射、連打可能だろう」
それって……誰レベルのお話なのですか? 辺境伯爵様……。
「防具はさっき渡した服でいけるでしょ。あんたの身体じゃ鎧なんて着れないだろうし、ローブが迷彩仕様だから」
黒いローブだったけど迷彩って何?
あの、めっちゃ高いとか言われるヤツ?
付与の仕事で受けた時「いや~光学迷彩マントとか、高価過ぎて手がでなくてさ~せめて回避上昇つけたいんだよ~」って人いたわ。
まさかの……それ!?
どれだけの0が並ぶ金額なの!?
幼馴染の連中が言っていた、辺境伯と深紅の魔女の全面的バックアップって、こういうことなの?
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