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5話 「本当にあたしがダンジョンに潜るの?」




 深紅の魔女……彼女はあたしを心配してくれてるのか。

 エメって名前だけで、この瞳の色が同じってだけで、魔女の後継なんてとんでもない立場に立たされたあたしを。


「ダンジョンは、巨万の富と名声を踏破者に約束する。でもきっと、貴女は普通の生活をしたかったんだろうって」


 そうよ、好きな人ができて、一緒になって、子供を作って、わいわい言いながら過ごすの……物心ついた時からの、孤児だったあたしの夢……。

 素敵な人と恋に落ちて結婚するのが夢。

 そんなあたしに「理想と現実は違うわよ、結婚は生活だし子供ができたらもう、大変なんだから」と、幼馴染や店の常連客にも何度も言われた。

 だけどあたしは、家族が欲しかったのよ――……。


「アダマント様も協力してくださいます。中層階抜けたら、わたしもお手伝いします。わたしなら潜れるでしょう」


 家に押し掛けてきた連中は、小さい子――アレクサンドライトを見つめる。


「あなた方も、新たな魔女様をお守りください」


 アレクサンドライトにそう視線を向けられた連中は慌てて、あたしに言葉をかける。


「そ、そうだな、愚痴なら聞いてやるからな⁉」

「大変だろうが、頑張れ?」

「ほら、なんだ、武器屋とか防具屋とかにも声をかけてやるから」


 え……何それ。


「あ、あのさ、あんまり考えないようにしていたんだけど、本当にあたしがダンジョンに潜るの?」


「はい」


 アレクと名乗る小さい女の子が頷く。


「中層階まで?」

「はい」

「一人で?」

「はい」


 無理無理無理無理ぃっ!!

 あたしは幼馴染の連中に視線を向けるが、彼等は首を横に振る。


「魔女を踏破者に選ぶ鍵付きダンジョンの条件なんだよ」

「中層階まで到達できなかったらどうするの!? ダンジョンって潜りっぱなしなの!?」


 死ぬわよ! 絶対!!


「死んだらどうすんのよ!」


「だからアダマント様が厳戒態勢を敷いて、ダンジョン外を防衛します。現在、土魔法使いが街とこの森の家を結ぶ街道の中間地点に、防壁を建て始めました。スタンピードの発生をそこで止める為です」


「うそお……」


「お友達の方もご協力してくださるようですが、武器や防具なんかは、アダマント様とルビィが用意してくれます。頑張って下さい!」


 ちょっと! 頑張れって、何それ!?


「まあそうだな、オレ等は応援するしかできねーな」

「深紅の魔女とラビリンスの王が支援するって、ぶっちゃけないから逆にちょっとうらやましいな」

「オレ等の紹介する武器防具よりも、すげえの用意してくれるかも。最新装備とかなら、一層、いけるんじゃね?」


 ちょっと、アンタ達! 何お気楽なこと言ってるのよ!?

 ちょっとそこまで散歩できるんじゃね? 的な感じで今、言ったわよね!?

 潜るのあたしよ!? アンタ達じゃないのよ!?


「階層ごとのボスを倒したら、そこから、外に出ることが可能です」


 え、そういうダンジョンなんだ……。

 孤児院にいたころ、早々にダンジョンに潜った連中から聞かされていたことを思い出す。


「それに第一層を攻略できたら、この家に戻れて、二層の攻略について予測や対策なんかも立てることができますし」

「ねえちょっとちびっこちゃん……。軽く言うけど……あたし魔法は付与魔法しか使えないのよ?」

「アレクサンドライトです。アレクとお呼び下さい。ですが、魔女様は付与魔法をお使いになられるのですね? 素晴らしいです! 文献ではラピスラズリ・ダンジョンに選ばれた魔女は魔法を使えず、一層攻略で亡くなったので」


 いやあああああああああ!! さらっと言ったっ!! さらっと言ったよ!?


「えーと皆さまはどうされますか? ダンジョン攻略中なのでしたら、街へお戻りになられた方がいいと思います。まもなくルビィがこちらに来るそうですから」


 アレクサンドライトの言葉に連中はあたしの肩を軽く叩く。


「じゃ、帰るわ! ま、頑張れ!」

「なんとかなるぞ!」

「戻ってきたら、結婚してやってもいいから!」


 お断りじゃ! なんで上から目線でモノを言うのよ? お前は結婚してるくせに、変なフラグ建てんな!! ばかやろおおお!! 

 とっとと帰れ!! 

 いや、帰らないで!! 

 待って!! 

 誰か、誰か、あたしの代わりにダンジョンに潜って!! 


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