46話 「ゴーストは厄介です」
三十層以降に、またアンデッドが増えてきたように感じた。
特にゾンビ。
あたしが最初の一体をメイスで屠る。
死肉と脳漿が飛び散ろうとも、気にしなくなった。
休憩を挟みつつ、現在45階層。
実体のない霊体が出てくることがある。これはアンディやサム達でも、討伐することができない。
それに、死霊術を使う前にぱっと消えてしまう。
スケルトンの一体に憑りついて、物理でこっちに向かってくるヤツ等もでてきた。
憑かれたスケルトンには悪いと思ったけれど、思いっきりメイスでボコりました。
頭蓋骨さえ残ってれば、魔素で復活できるし。遠慮はしない。
「ゴーストは厄介です」
アンディは討伐できなくて歯がゆいらしい。
実体だったら、結構なレベルのモンスターでも討伐できるアンディだけど、実体がなく宙を漂うだけのモンスターに苛立ちを感じる様子だ。
かなりストレスがあると見た。
仕方ない。ここまでかな。
「アンディ、サム、この階層を超えたら、一度地上に戻るわ。オルセンさん達から何か対策案がもらえるかもしれないし」
「え~」
声をあげたのはサムだ。
「サムは念の為、軍団率いて、ちょっと下の階層でレベルを上げていて頂戴」
「へーい」
ゴーストみたいな実体のないモンスター対策は魔法に限るけれど……。
死霊術を使ってみたら、ふっと消えるし。
アンディだけじゃなくあたし自身もストレス溜まる。
そしてまた、ゴーストが、スケルトンに憑りついた。
その瞬間に契約魔法をかける。これまで何回か試して失敗したけれど、今回は成功みたい。
「くそ、固定された!」
ゴーストに憑りつかれたスケルトンが叫ぶと、アンディが鬼爪でスケルトンの頭蓋骨を鷲掴みにした。
アンディの目が思いっきり赤く染まってる。ストレスマックスだったのね、アンディ。
「喋るスケルトンなんて、サム一体で十分なんだよ。このクソゴーストがっ!」
「アンディ、殺しちゃダメよ。まだね」
あたしはアンディに捕まったゴースト憑きのスケルトンに歩み寄る。
あらあら。
お前はすでに一度死んで、痛みも何も感じないモンスターになったのに、なんでそんなに怯えた感じなのかしらね。
サムを見慣れたからか、あたしは、割とスケルトンから発せられる感情みたいなもの――モンスターにあるかないかわからないけれど、感じ取れる。
闇の色をした眼窩に怯えの気配がある。
「訊きたいことがあるのよ。お前、ゴーストってことはアンデットよね。サンドラに会った? あの子を見ないのよ、絶対にどこかにいると思ってるのだけれど――」
ギリギリと鬼爪でスケルトンの頭蓋骨を〆るとピキッと頭蓋骨にひびが入る。
何体かいたはずのゴーストの気配が消えた。
コイツをおいて逃げたな。
「教えてくれないかしら? あたし、探しているのよ。さあ、喋れるわよね?」
お前はこのスケルトンの身体に魂を固定されて実体化している。
ダンジョンに潜った攻略者なら、魂だろう。
「ちゅ……中層に……向かっている。魔女の後継になるのは自分だと」
「向かってる……生きてるの?」
女だから、モンスター化していないの?
いいや、女性の攻略者が魔女のダンジョンに入っても、モンスター出現でアンデッド化したって聞いている。
「あの子、今は何になってるのかわかるかしら?」
「し、知らない……本当だ! ただゾンビじゃない! 腐っていなかった! 魔力もあった!」
魔力は少なくてもあったらしいのは知っている。
あたしみたいに付与もできない感じではあったけれど。
「このスケルトンは、お前達の味方なんだろ!」
「でも、お前はサンドラの味方なのよね」
アンディがミシミシと頭蓋骨を掴む鬼爪に力を加えていく。
「あの子は何層にいるの? ゴーストなんだもの、わかってるわよね? もう多分、人間じゃなくなっている、身体は腐っていないなら、何のモンスターになったのかな?」
「知らない、本当だ!」
「そう……アンディ、潰しちゃダメよ」
この言うこと聞かない元人間は、あたしがメイスで殴り倒して、魂も消滅させないと。
だって、ゴーストだもの。
なんとなーくわかったの。
お前も、なんでゴーストになったのかしらね。肉体を持つアンデットになったなら、よかったのに、幽体なら、確かに死なないけれど、魔女の魔力を注げば消え失せる。
いい実験よね。
「一度目は人間としての死、二度目はスケルトンに憑りついて死、ゴーストとして魔素還元されての死を味わうのね」
「な、なんでもいうことを聞く!」
あたしはにっこりと微笑む。
「嬉しいわ。お前の魂をそのままにする代わり、今後彷徨う幽体を、あたしの前に出さないようにして」
そーと顎骨を指で触れる。
「先代と同じ名前を持つあたしに逆らったら、三度目の魂の消滅を味わう。覚えておきなさい」




