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43話 「疾風迅雷! オレ参上!」

 



 あっという間に地上の時間は終わり、ダンジョンへ潜る時間がやってきた。

 ダンジョンに入っていく人間はまだ減らないらしい。

 死んじゃうよ、危ないよって、知らせてるはずなのに、ダンジョンに眠る宝を求めて、攻略してくる人々を――……最初こそは、何考えてるんだろうって思っていた。

 けれど今となっては、ゾンビになって、あたしがダンジョンに入る度に、現れてくれれば、強力なモンスターの出現を抑えるのに役立ってくれるんだから、ありがたいわね。

 今回もなるだけ長く潜って、攻略階層を進めよう。

 何層まで進められるんだろう。二十層には到達したい。できれば二十五。

 その間に現れてくれるのがアンデッドだけなら、全員メイスでボコってやる。

 前回の続き――十三階層。

 風景は洞窟のままだ。


 そしてサムの姿はなかった。


 地上にいて、前回攻略の報告と検証会のあと、セドリックさんから回復系の講義を受けていたら、アダマント様がひょっこりやってきて、「エメラルドが今後サムと共に行動をする可能性があるんだから、回復系もいいけど、契約や死霊術ネクロマンシー系を覚えさせて」と意見を述べられた。

 だから予定していた回復系魔法の講義を中断して、そっちの講義を集中して受けることになったんだけど……。

 こっちの魔力と脳が爆発四散するかと思ったわ。

 詰め込みすぎだっていうのよ。

 契約魔法や死霊術とか……サムならそんなことをしないでも付いてきそうではあるけれど、アンデッドになってしまったからには、保険は必要だからと言われてしまった。

 しかし、ゾンビの10体目を討伐した後も、サムは出てこなかった。


「なんとなくだけど、この層にサムはいない気がする」


 あたしがそう言うと、アンディはあたしを見る。


「わかるんですか?」

「はっきりってわけじゃないけれど。サムは先へ進んだかもしれない。無茶をしないといいけれど……」

「十三階層を進んで、階層をあげましょう」

「そうね」


 アンディの言うように、サムを探すよりも、あたしは攻略を優先させる。

 これは今回ダンジョンに潜る前に決めていた。

 このダンジョンでは、何が起きてもおかしくない。

 あたしの返事が意外だったのか、アンディはあたしを見上げる。

 以前のあたしなら、サムを探したかもしれない。ダンジョンに潜る度に、あたしはそれまでの普通の感覚が抜けるみたいだ。

 あたしはこの中層を攻略するのが一番の目的。

 シエラやポリーが、いつものように生活していける場所を護る。

 それだけ。


「頼りにしてるわ。アンディ」

「お任せください」


 アンディはいつものようにそう言って、笑顔を見せた。

 この階層ではゾンビだけしか見ていない。

 十三階層を抜けても、出てこなかった。

 十四階層を抜けても、サムは現れなかった――。


「サムが気になりますか?」


 十五階層に行く前に、ちょっと休憩をとっていると、アンディがそう尋ねた。

 うん。まあ、気になるよねえ。


「ポリーは元気で、未来は幸せがあるって伝えたかったんだけどね」


 そう言うと、アンディは「骸骨のくせに……」とかぶつぶつ呟いている。

 やきもちなのかな?

 アンディは、ダンジョンに入ってる時の方が会話率多い気がする。


「アンディも占ってあげようか」


 そう言うと、ぱっと表情まで明るくなるけれど、少し考えて、寂しそうに笑う。


「もったいないのでやめておきます」

「もったいない?」

「ここはダンジョンだから。占いもエメ様の力の一つだし、大事にとっておいて」


 占いも力の一つ――……そうなのかな? よくわからないけれど。

 でもそう言われると、結構何かに繋がっているかもしれない……って気がしてる。

 例えば、ダンジョン潜る前に無理やり詰め込まされた契約とか死霊術も、別系統にいくとテイマーとかチャームのカテゴリに連なっていくし。


「行こうかアンディ」


 休憩終わり。

 サムは気になるけれど、あたし達は十五階層に進んだ。

 十五階層はまた草原だった。


「誰かが入り込んだかな」

 風景が変わるっていうことは、一階層に誰かが侵入したってことだ。

「ここにくるまで42体のゾンビを討伐しています。アダマント様が『入れた』可能性もありますね」


 アノ人ならやるでしょうね。

 見張りの人がいて、あたしが攻略中ってわかってるけれど、アダマント様がOKだしたら、入れるだろうし。

 でも42体か……。十三、十四階の階層で合計で42体。

 これが少ないのか多いのか……、一桁階層の時と比べたらこんなものかもしれない。

 あたしも階層を進んでいるから、難易度をあげておかないと、強力なモンスターも出てくる可能性があるからっていうのは考えられる。


「……アンディ、ここはゾンビが大量にやってくると思っていたんだけど……。なんでゴブリンが大量にやってくるのかしらね?」

「イレギュラーの法則とかありそうですよね」


 とりあえず、あたしが銃で数を減らす。アンディがその後に攻撃に入る。

 いつものパターンだけど、メイスをぐっと握り、向かってくるゴブリンをボコる。

 そして、ざわつくあたしの勘。


「チッ。なんかくる」

「舌打ちとか、ダメですよ! エメ様!」


 アンディはそう言うけれど、頭の中で危機察知のアラームがうるさい。

 目の前にはゴブリン30体。

 ゴブリンの奥にはゾンビが10体

 おまけに左側からも何か接近してきてる。

 十五階層自体が、スタンピードなのか⁉

 あたしの前にアンディが立つ。

 武器を剣に変えた。

 あんまり見たことのない剣……。

 黒くて、鞘がなんか紋章刻んでいて、エメラルドの原石かな? 細かい石が線を作るようにはめ込まれている。


「大丈夫。絶対僕が守ります」


 アンディの瞳がエメラルド色から赤に変わった。


「守られてるばかりでは、魔女にはなれないと思うの」


 アンディの隣に立って、あたしはメイスを振るった。

 魔法で出した威力のない火炎を風に乗せ、目の前のゴブリン30体に向かって放つ。

 ゴブリンの先頭は燃えたけれど、半分も討伐できてない。

 契約とか死霊術とかよりやっぱ攻撃系の魔法の修練を積むべきだったよ!

 そして砂埃をあげて、左側から来る団体の姿が見えた。

 スケルトンの団体だ……。

 団体から飛び出した一体が、馬――スレイプニルに乗っている。

 馬上? のスケルトンが叫ぶ。


「ははは~! 疾風迅雷っ! オレッ参上! エメラルド様~~!!」


 サムなの!?




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