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37話 「僕だって、エメさんとかエメとか言いたいのに」

 


「ここは魔女のダンジョンだから。そのために、アダマント様と深紅の魔女、ルビィ様の支援を受けているの。アンディもその支援。お二人が研究して、この子がゾンビ化しないようにしてくれてるんだと思う」


 あたしがそう言うと、アンディは頷く。


「ちなみに、あたし以外がメインで攻略すると、モンスターのレベルは上がる。前回そういう感じだった。だからサム。モンスター見つけても、手を出さないように。こっちはダンジョン攻略なんてしたことのない初心者なんだから」


 スケルトン・サムは自分の剣を抱きかかえて、あたしを見る。


「……超高額武器の銃とか取り扱って初心者……しかも一発必中って何?」


 訓練してるのよ。実践も積んでるところなんだけど?


「モンスターを見つけてくれればいいわ。斥候って基本そうでしょ?」

「マッピングは?」

「トップランカー用のダンジョンカードが自動に」


 でもだいたいボス部屋はわかる。

 絶対出口、こっちって気がする方向へあたしが歩いていくと、ボス部屋に辿り着くから。


「オレ、エメさんに会うまで結構さまよったのに……マッピング自動って……おまけに迷わずボス部屋到達って……」

「サム、あんた、今のレベルって、どのぐらいなの? 生前のレベル引き継ぐの?」

「だから生前とか言わないで!! 引き継がないっスよ。レベル1からコツコツと。今ようやくレベル9スね」


 モンスター化するとレベルダウン説はアリなのね……。


「レベルが上がったということはモンスターを討伐したのね?」

「オレも一応は攻略者だし、モンスターになっても攻略者だし、ここはダンジョンだし」


 ふむ。

 でも、討伐したゾンビのダンジョンカードを拾ったけれど、生前のレベルだったわよ?

 やっぱコイツ……討伐してみる?

 そしたらダンジョンカード見れるよね。


「エメさん! なんか怖い!!」


 検証の為だけに討伐するのと、逆にこのままの状態を見るのとどっちがいいのか……。

 アダマント様とルビィ様なら後者を選ぶ気がする。


「気のせいでしょ」

「なんか一瞬殺気があった!!」

「エメラルド様、殺るならいつでも言ってください」


 アンディがそんなことをぼそりと言う。

 アンディ……そんなにサムが嫌いなのか。

 この子がこんなに、陽であれ暗であれ、誰かに対して、感情出すの珍しい気がする。

 アレクの対応にだって、大人のように、困った表情を浮かべるだけだったのに。


「だいたいここがどこで、貴女が誰なのか、この雑魚モンスターは理解していない。セントラル・エメラルドの住人を甘やかした先代のツケを貴女が請け負うことはない。エメさんとか呼ぶな、エメラルド様だ」


 厳しいなーアンディ。

 エリアを統率する魔女への畏怖と敬意のことか……。

 アンディと三馬鹿を鉢合わせたら、アンディが三馬鹿を瞬殺しそう。


「了解です!!」


 了解するのか……サム……。


「僕だって、エメさんとかエメとか言いたいのに」


 アンディがぶつぶつ呟いてる。

 か、か、可愛い~何、この子可愛い~。

 呼んで呼んで~。

 そんなあほな考えが、一瞬で消え失せた。

 ゾンビだ。

 ゾンビが来てる。

 頭の中で、さっきよりも強い危険察知の知らせがよぎった。

 今度はあたしが動くよりも先に、アンディが前に出る。

 憂さ晴らしにしては、機械的だね。

 バトルアックスで一振り二振りするだけで、4体のゾンビが魔素化して消えた。アンディの戦闘を見て、スケルトンはまたぱかーんと口をあけている。

 サム、あんたそんなに頻繁に大口開けてると、下顎骨外れない?


「ゾンビ四体、瞬殺って……」


 まあ、サムに武器を向けた時点で、サムもヤバイとは思ってたんだろうから、アンディが強いのはわかってたでしょ。


「強いんだろうなって思ってたけれど、何っすかアンディさん!?」


 うん。さん付けしたくなる強さよね。


「せめて、オレ、ゾンビとかグールにならなかったのか……」

「サムがゾンビだったら瞬殺ね」

「うう」


 そんなおしゃべりなサムを先頭に立たせて、ところどころ、休憩を入れて、ダンジョンを攻略していく。

 予定よりも、階層を進むことができて、十二階層のボスも攻略できた。

 なんか芋虫みたいな姿のモンスターだったけれど、糸だけではなく、酸も吐き出す。ただ動きは鈍かったけど。


「そろそろ戻るか……」


 休憩を挟んでいたけれど、あたし、お風呂に入りたい……。

 生活魔法の『クリーニング』とかも教えてもらったし、使えるようになったけれど。バスタブに入りたい、髪をちゃんと洗いたい。魔法なんかより、そこは絶対っ!

 あたしの呟きにアンディは頷く。

 そしてあたしとアンディはサムを見る。

 こいつをダンジョンの外に出すわけには……いかないだろうなあ……。

 あたしが何を考えていたのかアンディにはわかったみたいで、首を横に振る。


「え~さびし~次回はいつ?」

「七日後ってアナウンスがあったから」

「え~そんなにか~でも。いっか」


 いいんかい!?


「次のえーと十三階層? オレ見ておくよ。それでどんなモンスターがいるか、エメラルド様が今度来た時にお知らせするよ~」

「……サム……あんたいいヤツね」

「今!? 今なの⁉ そこは最初からいいヤツじゃないの⁉」


 相変わらずひょうきんだな。


「ただ、このダンジョンは魔女の後継限定で、変化しそうだから、あたしがいるのといないのとでは違うかもしれない。無理はしないように」


「……エメラルド様っ……優しいっ……!!」


 サムはお祈りポーズを作る。

 大丈夫かな……こいつ。

 あたしがまたここに戻る時に、すでにほかのモンスターにやられてたら――……いや、でも、こいつ何気に運が良さそうなのよね。アンデッドのスケルトンになっちゃったけれど。




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