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36話 「こっちはさっさと中層攻略しないといけないの!」

 



「で、サム、アンタはこれからどうするの?」

「それはオレが聞きたいっスよ! どうしたらいいもんですかね!?」


 あたしの言葉に情けない口調で答えるスケルトン・サム。

 そんなサムに向かって、アンディがぼそりと呟く。


「一択に決まってる……モンスターなんだから、討伐されろ」


 アンディはそう言うと、軽々とバトルアックスを素振りする――風を切るブンブンという音を鳴らして、サムの前に一歩進み出る。

 その様子にサムはじりっと一歩後退する。


「ねえ! ちょっとエメさん、なんでこの子はモンスター化してないの!? でも中身はモンスターみたいに殺気ブンブンですけど!?」


 バトルアックスもブンブン言わしてる~! とか叫んだ。


「ダンジョンに入った人間が、モンスター化するのは知ってるのね」

「見たもんよ! あの後、ベイルの団体の後にも入ってきた連中も軒並みモンスターの餌食になって、魔素に包まれてモンスター化したのを!」

「そう……サム、あんたの選択肢は二つ。ここで殺されるか、この場を逃げるか」

「ええええ⁉ 待って待って、もう一つあるでしょ!!」

「もう一つ?」

「『モンスターが仲間になりたそうに見てる、仲間にしますか? はい!』じゃないの⁉」

「いくら会話ができるからって、後で背後からバッサリっていう可能性を残すような選択肢はないわね」

「エメさん!! そういう人!? 以前はもっとこう、優しい感じだったよ⁉」

「優しいだけで、魔女の後継になんかなれないわ」


 あたしの言葉にアンディは頷く。


「じゃあ、斥候で!! ほら、見た目モンスターだからダンジョン内をいろいろ探れるし! オレもそれなりに強かったし。ただでさえエメさんを前に出すとかないし!!」


 必死だなーサム。

 じゃあ斥候でって、なんでお前がポジション勝手に名乗るか。

 このダンジョン本来は斥候いらないんだけど?

 あたし一人で攻略しなくちゃならないから。


「ダメですかね……ダメですか……アンデット最弱になっちまったオレには、魔女の後継を護ることも無理か……」


 しょんぼりと項垂れるスケルトン。

 こいつなら殺そうと思えば、殺せる……と思う。

 アンディなら本気を出せば瞬殺できるだろう。


「サム、先頭で進んで」


「エメラルド様!?」

「エメさんっっ!! 神よっ!!」


 またあたしの名前を呼ぶの二人被ったな。

 アンタ達、実は息ぴったりなのか。


「こっちはさっさと中層攻略しないといけないの!」

「ハイ! ガンバリマス!!」


 スケルトン・サムは、あたしが付与した剣を高々と上げて、進み始める。


「ねえサム、ベイルの奴に引っ張られた攻略者の中に、アンタみたいに、あたしの付与を受けてる武器を持った攻略者っていた?」


「いないっス。エメさんの店って、結構トップランカーご用達護符屋だったから、オレが組むパーティーとかクランには、高くて手がでねえっスよ。オレと妹の稼ぎを三月ぐらい貯めて、付与してもらったのが最初っスから。そもそも、オレの剣がエメさんの付与受けてるって聞いて、あいつ寄こせって言ってきたことありましたよ」


 ベイル……せこい。

 そしてこのサムはフリーの攻略者なのだそうだ。

 どこのクランにもパーティーにも所属しない。

 それでレベル28までよく上げたわね。アンタまだ若かったよね?


「でも、ベイルよりレベル上の奴もいたってことよね」

「いたっすよ、でもそいつら別エリアからやってきてた連中だったから」


 なら、本当にサムだけなのか……あたしが武器に付与を施したの。

 コイツ、運がいいの? 悪いの?


「ベイルのヤツがツケで付与依頼してきたけど断って正解ね」

「当然っしょ、エメさんはトップランカーに守られてたから」

「はい?」

「みんなエメさんに憧れててさ~ベイルの奴がエメさんの店に行ったって情報が流れた途端、みんな一斉に店に向かってたもんよ。でも、そういうヤツらって結局、別の子とイイ感じになっちゃうんだよね~」


 ……何それ。

 なんだそれ。

 聞いたこともないけれど?


「なんつーか、エメさんダンジョン深層部のオアシスに咲くブルー・シャイン・リリーみたいだなって、みんなで言い合ってたもんよ~」


 そういうことはっ!  あたしがっ! 魔女の後継に! 選ばれる前に! 言え!! ちくしょう!


「だから、オレ、悪いスケルトンじゃないよ?」


 サムがアンディに首を傾げて振り返る。


「僕からも一つ、聞いておきたい」


 アンディがそう言うと、サムはピシっと直立する。


「は、はい!!」


「お前はどうやって七階層まできた?」


 それはあたしも知りたいわ。


「歩いて? 普通に、ボス部屋通ってきたっス。ボスとの対戦にはなりませんでした。ボス部屋のモンスターは、オレなんか眼中になかったっス。あと階層によっては、ボスはまだ顕現される前だったから。魔素が渦巻いてるな~って感じで部屋の隅っこスス~っと通って、普通に次の層に移動したっス」


 モンスター、階層の行き来が自由なのか……。

 これも地上に出たら、報告しておこう。

 アダマント様は知ってるかもだけど……喋るモンスターを抱えてるアダマント・ラビリンスの持ち主だから。

 ただ、今後、魔女のダンジョンが発生した際の事例にもなるか。


「あ、ゾンビ前にいるっス」

「何体?」

「一体っス」


 あたしは銃を取り出して、魔弾を仕込む。

 あ、うん。ゾンビの気配、あたしにもわかる。


「サム、アンディ、横にどいて」


 かなり距離があるけれど、魔弾に付与した効果が出るはず。

 バレルにもそっと付与を施して、あたしが構えると、遠方にいるゾンビが見えた。

 トリガーを引くと魔弾は音を響かせて、ゾンビの頭部にヒットする。

 サムはあたしを見てぱかーんと口を開いている。


「え、え、銃なんて持ってるの⁉ エメさん! 超高額武器じゃないっスか!!」

「貸与されてるの」

「貸与、誰からっス?」

「アダマント様から」

「……」


「本来なら、このダンジョンはあたし一人で攻略しなければならないのよ」




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