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35話 「なんであんた会話ができるの?」

 



「いや、ほんとこの子を止めてくれ~」


 カチカチ歯を鳴らしながらも会話してくるスケルトン。

 オマエ誰よ。

 あたしもさ、ダンジョンに入ってくるヤツはもう誰だろうとアンデットモンスターになるんだから、討伐するのに躊躇いとかはないんだけど、会話って何よ。


「アンディ、止めて」

「……」


 あたしがそういうと、臨戦態勢のまま、アンディがバトルアックスを構えてあたしの前に出る。

 アンディの動きが止まると、はあ~と溜息っぽい感じで、膝と手をついて、ガックリしてるスケルトン。


「マジ怖え~」

「アンタ誰よ」

「え!? オレがわからないの!?」


 知らないよ。誰がどう見ても、スケルトンだよ。


「ショック。トップランカーみたいにしょっちゅうエメさんの護符屋には出入りはできなかったけれどさ……それでも、いつも大きいパーティーに誘われたら、エメさんに剣の付与は頼んでたんっスよー今回は、いろいろ理由があって、剣の付与もできないから断ったのにさーベイルのヤツが強引に引っ張ってきやがって……」


 歯をカチカチ鳴らしてそう言い募るスケルトン。

 コイツ、あたしの店の客だったのか。

 そしてベイルのヤツに巻き込まれたと。


「でも、ダンジョンの財宝目当てなのは間違いないよね」


 あたしの言葉が合図となったのか、アンディが再びバトルアックスを振りかざす。


「わああ! やああ! 待って待って待って~!」


 コイツ口ではぎゃあぎゃあ言いながらもアンディの攻撃を防いでる。

 結構強いの?


「エメさんが魔女の後継で不在だって知ったから、本当に断ったんだってばー。でも妹がベイルのヤツに手をだされそうだったから、仕方なく……ちょっと入ってすぐに出るつもりだったの!」

「あんた、名前は?」


「サム」


 うん? いたような店の客に……。

 いたわ。

 彼女連れで来てたと思ったけれど、彼女じゃなくて妹だった。

 それで妹、なんかあたしの占いのファンだったわ。

「アンタの妹、ポリーって言うの?」


「覚えてるんじゃないかー!!」


 スケルトン・サムは歯をカチカチならしながらそう言う。

 いたわー仲良し兄妹。

 サム&ポリー。

 あたしと同じように孤児って言っても、サムが16の時に親が亡くなったから、あたしみたいに小さい頃からの孤児じゃなかったけれど。

 まあそういう境遇とかはあたしも弱いっていうか。

 軽口でケンカしつつも、兄の剣の付与を頼んできたりしてたわ。妹が。健気で可愛かったから、オマケにいろいろ占いもやってあげたこともある。


「人に向かって指さすのはおやめ」


 あたしがそう言うと、スケルトン・サムは手を降ろして「スミマセン」と謝る。


「なんであんた会話ができるの?」

「オレが知りたいデス」

「アンタみたいに、他に喋るヤツいるの?」

「……いませんでした……スケルトン、アンデットで最弱とか思ってたけれど、マジ怖いんですけれど! モノ言わぬ軍隊みたいなんだよ!?」


 その印象はわかる。あたしもそう思った。

 だけど、アンタは今、そのスケルトンだからね。

 それでもってアンデットらしくない。うるさい。喋りすぎ。

 こいつがグールで、人間の姿で話しかけてきたら問答無用でメイスで撲殺してる。

 逆に骨の状態でカチカチ歯を鳴らして喋るもんだから、こっちも話を聞く体勢になってしまう。

 本人も自分の手を見て「やっぱり骨……」とか哀愁漂わせて呟いてるし。



「アンディ、魔女のダンジョンに入ってモンスター化、スケルトンになっても会話ができる事例ってあるの?」

「モンスターとの会話……あるにはありますが……魔女のダンジョンではありませんね」


 あるのか。


「どこのダンジョンであったの?」

「アダマント・ラビリンスです」


 持ち帰り案件だね。

 アダマント様に聞いておかないと。

 なんでこいつだけモンスター化しても、あたし達との会話が可能なのかな。


「サム、あんた、洞窟に入ってからどうなったか自分でわかってる?」


 サムは歯をカチカチ言わせながら、記憶の限り、今までその身に起きたことをあたしに話し出した。

 ケルベロスの出現に、腰を抜かしそうになったけれど、この騒ぎに乗じて、逃げようとしたらしく。洞窟のどこかに隠れてたらしい。

 でも、魔素が濃くなって気が付いたら、スケルトンになっていたと。

 最初、自分がモンスター化したのがわかってなくて、ゾンビを見つけて討伐した際、剣を握る手が、白骨だったのに愕然としたらしい。

 会話を試みても、どのモンスターも会話はできなかったとか。

 ふうん。結構、記憶もはっきりしてるもんなのね。


「サム、あんた生前の攻略者レベルってどのぐらいなの?」

「生前とか!! 言い方!!」


 サムが半泣き声でそう言うけれど、アンディがバトルアックスを振りかぶる動作を見せると「28!!」と叫ぶ。

 ふむ。三馬鹿よりは上なのか。

 結構、そこそこ頑張ってたんだ。

 そりゃそうだよね、妹養わないといけなかったしね。


「サム、あんたの武器をちょっと見せて」

「え、エメさんが付与してくれるの!?」


 嬉々として剣の柄の方を向けてどうぞと差し出す。

 アンディが受け取って、あたしに渡した。

 この剣……確かにあたしの魔法付与が残っている。

 こいつの、記憶があって会話ができるのは、この剣の持ち主だから……って気がするな。


「魔女の後継が付与魔法をかけた武器の持ち主だから……アンタがスケルトンになっても記憶があって会話ができるって可能性は?」


 あたしがそう呟くと、アンディとサムはあたしの方を見て「なるほど」と異口同音で答えた。

 なんで二人とも、息ぴったりなのよ。




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