33話 「エメ様、いまの何?」
四階層にはグールとゾンビ、あとスケルトンがちらほらといた。
見事にアンデット系。
スケルトン、骸骨、青空平原の景色にスケルトンってみた感じの違和感がすごい。
こういうモンスターは洞窟とか暗い感じの背景にいてこそ迫力ある感じなのに。
ゾンビを討伐するクセでメイスで頭をボコ殴りするとわりと簡単に倒れた。
ボディを狙うと再生するからあまり意味はないとアンディに言われて、結局は弱点は頭なんだとか。
ただ、スケルトンって長剣持ってるから、間合いを詰めるまでに時間を取られそうになる。
ひたすら魔法付与で敏捷をあげて、メイスで頭部を殴り倒す。
タイマンなら全然苦労しないんだけど、団体でこられるとちょっと苦労する。
あと魔法が効かない。
一気に六体のスケルトンが顕現した時は、あまり使わない土魔法で足元を崩して倒してみると、良い感じにバランス崩してくれて、頭部を狙いやすかった。
土魔法はセドリックさんのアドバイスと指導のおかげで習得できたから、さっそく使ってみたの。
広範囲はまだだけど、一体でもバランスを崩すと、団体状態の敵は左右や前後の仲間に当たって、バランスが崩れる。
アンディがその様子を見て、「え?」みたいな顔をする。
「エメ様、いまの何?」
「土魔法で足元を崩した。ごめん、そっちのバランスも崩れた?」
でもアンディなら補えるでしょ。
実戦での土魔法ってはじめてだったけど、上手くいってよかった。
四階層で23体のアンデッド……新規ダンジョンに勝手に入った人間の成れの果てを討伐して五階層に進む。
初回12体で一日かけてたあたしとは大違い。
結構短時間で討伐できた。
それでも1/4の消化か。これが言い進み具合なのかどうなのかわからない。
ボス部屋にはやはりそれっぽい道ができてて、崖に異様な扉が設置されていた。
ダンジョンが魔女を深層まで誘うように、どんな空間でも、ボス部屋にたどりつける仕様なんだな……。
ボス部屋を開ける前に、魔弾を装填した銃をチェックする。
ボス部屋の扉を開けるとグールがいた。
開けた瞬間にありったけの銃弾を浴びせて迷彩光学のマントで自分を隠した。
グールはアンディに向かって一直線に走り込んでいく。あたしは、敏捷の重ね付で背後に回り、メイスで殴り倒した。
倒れ込むところに、アンディがバトルアックスでボスの首を刈り取る。
胴体から素早く魔素に還元されていき、ダンジョンカードが残った。
あたしはそれを拾い上げる。
「……」
「どうしました?」
こいつ、あれだ、赤毛のベイルだ。
幼馴染の三馬鹿を脅して、ダンジョンに団体で潜り込んだクランの代表。
それが四階層ボスか。
まって……それって、どうなの?
あいつなら十階層ぐらいにいそうだったけれど。
モンスターになると一律攻略者としてのレベルがダウンするのかな?
一階層にいたり、魔女が再び入る層にゾンビがいたりって、アンディが言ってたよね。
てことは、ベイルは元々この四階層にいたってこと?
ケルベロスに倒されてモンスター化の際に四階層ボス部屋に飛ばされた。
もしくはモンスター化しても、ダンジョン最深部目指し、四階層でボスになってしまった。
どっちかな。
もう倒しちゃったからいいんだけど。
とにかく、今後新規の鍵付きダンジョンの検証材料になるから、そういう事象は報告していかないと。
五階層に入ると、また洞窟の景色。
「また洞窟の景色……」
「はい」
っていうことは、魔女の後継がダンジョンに入った後に、誰かが入ると、景色が変わる説が有力なのかな。
そしてアンデッドはゾンビとスケルトンだった。
ゾンビは単体からパーティーメンバー単位が最高だけど、スケルトンは最低パーティーメンバー単位から、もっと数が多く出現する。
数が多いとメンドクサイわ!
一体一体はゾンビの方が強いというかパワーあるけれど、スケルトン、こいつら頭いいし、団体戦大好きなのか、ほんと数で押してくるのよね。
あと、剣術! 上手いヤツ多い! オルセンさんと対人戦の訓練していてよかった。
五階層のボスは所せましのスケルトン。
数の暴力ってこれかって感じ。
団体で動き出す、足をふみだす瞬間、奴らが地面に足を付けようとした部分を土魔法でぬかるみにして動きを崩す、メイスで頭部を殴り倒してやると、アンディがハンマーで頭部を吹き飛ばすそこからもう打撃、ひたすら打撃で、討伐した。
やっぱりモンスター化した四階層ボスよりも体力消耗したよ。
そこに降りかかってくるダンジョン・アナウンスがうるさい。
「ここで少し、休憩しましょうか、一気に階層を抜けたのでお疲れでしょう」
「またボスが出てくるならこのまま六階層に行ってもいいけれど」
「大丈夫ですよ、我々が出ていくと、魔素が溜まってまたボスはでてくるでしょう」
そういう感じなのね。倒したボス部屋って、休憩ポイントなのか。
「でも、エメ様は、すごいですね」
「はい!?」
「だっていままで、全然ダンジョンに潜ったこともなかったのに今度は六階層ですよ」
「今までの魔女のダンジョン攻略で大失敗した例がラピスラズリでしょ? 大成功例ってあるわけ?」
「大成功……ルビィ様ですかね」
あ、うん、そりゃ聞かなくてもわかるわ。
ルビィ様お一人で、ダンジョンぶっ壊す勢いで踏破したんだろうってわかる。
「サファイア・ダンジョンは現在深層階攻略中なんだってきいたけれど、サファイアの魔女ってどんな人かアンディは知ってる?」
「お会いしたことはありません」
「ふうん」
「僕もそんなに、外のことは知らなくて、普通に学習してきただけですから」
学習してきただけっていうけれど、子供って勉強好きじゃないよね。
中にはそうでない子もいるけれど。
「あたしは好きな科目は好きだったけれど、苦手なのは苦手だったな」
この辺境領自体が特殊だからなあ。
「エメ様はどんな科目が好きだったんですか?」
「数学と化学かな」
「魔女の素養ってそういうところも出てますね」
「え?」
「錬金術とかは好きでした?」
「そう、好きだったなーもっと勉強したいなって思っても学校卒業して食い扶持を探さないとって感じだったし、護符や魔法付与の方が出来が良かったから、稼ぐにはそっちかなって思ってさ。でも『普通そこで結婚を考えないアンタはおかしいでしょ』とかシエラに言われたこともあったな。アンディは何が好き?」
「……よくわからないです。でも知らないことを知るのは楽しいです」
「そっか」
「だから、魔女のダンジョンに入れるのは、嬉しいです」
戦闘の時とは違うアンディの瞳はあたしと同じグリーン。
まだまだ子供なのに、どこか大人びてる雰囲気が、気になるといえば気になる。
この年でこんな落ち着いてる子はそうそういないと思う。
「アレクのサンドイッチ食べな。美味しいから」
「はい」
あたしが勧めると、笑顔を見せてくれる。
その笑顔は可愛いし綺麗なんだけど、なんて言うか子供子供してないのが、気になるなとは思った。




