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26話 「あれ……あいつの名前ないね」

 




 ダンジョンから地上に戻ると、入り口のところでアレクが待っていた。

 膝を抱えて地べたに座り込んでいたアレクが顔を上げて、あたしに走り寄ってくる。


「エメさん~よかった~36時間も潜りっぱなしでどうなることかと思った~」


 アレクがわーんと言って、抱きついてくるけどよろよろしちゃう。アンディさんが支えてくれるけれど、絵面的に、ちっちゃい子に囲まれてる感があって、なんか癒されるわ。

 言葉から察するに、アレクはあたしが半日で戻ってくると思ってたのか。

 助っ人のアンディさんがいれば無茶な攻略はしないだろうって予想したのかも。

 ごめん、全然進んでないよ。あのままアンディさんが片付けていたら多分、十階層に到達してたかもしれない。


「なんで、貴方がいるのに、エメさんこんなに疲れてるの!?」


 アレクがアンディさんを責める。

 アレク、それはあたしが頼んだのよ。

 エメラルドの家につくと、アレクはアンディさんに言う。


「ルビィとアダマント様が待ってるから貴方は、隣の建物に行ってください」


 あたしがお世話するから、もう男の子は入ってきちゃダメなのと、アレクがぷんぷんしながら。

 そんなアレクの様子を気にする風もなく、アンディさんはあたしを見る。

 え~この子人間出来てる。アレクと同じ年ぐらいだけど、このぐらいだと、女の子の方がおませというか、精神年齢高いよね。


「ありがとう、アンディさん。またよろしく」

「おやすみなさい。エメラルド様」


 エメラルドの家に戻って、自分でお風呂を入れようとすると、アレクが手伝ってくれた。


「あの子。ルビィが言ってたけれど、全然お役立ちではない感じです! やっぱりわたしが一緒に行きたかったです!!」


 アレクが憤慨した様子を見せてる。

 お役立ちですよ、完全に無双状態でしたよ。小さな紳士だったでしょ、アレクが噛みつき気味に追い払ったのに、そんな嫌な顔もしなかったし。

 それに……アレクだとゾンビ化するのかな……。中層階の魔女の権限を手に入れないとダメなんだよね。

 男の子だから平気なの? むしろ魔女のダンジョンなんだから、魔女の後継となるアレクならゾンビ化はしなさそうだけど。

 そんなことを考えてると、再び湯舟の中で意識が飛びそうになった。

 お約束のように、アレクはあたしを湯舟から引っ張りだす。

 前回同様、風呂から出たら泥のように眠った。



 今回も、まだ生きてる。

 スタンピードは起きない。

 よかった……。




 今回のダンジョン攻略は38時間要したらしい。

 だけどダンジョン攻略一回目に地上に戻った時よりも目覚めはよくて、筋肉痛もひどくない。状態異常耐性の付与が効いてるからなのか。

 それでもアレクがあれこれ世話をやいてくれたけれど。

 アダマント様に呼び出されて、隣の建物に入る。

 ブルヘルムさんはじめとする、スタンピード対策の面々に加えて、アダマント様もルビィ様もいて、今回はあたしも一緒にダンジョン攻略の動画を視聴。

 視聴を終わると、オルセンさんはヘンな顔でアンディさんを見てた。


「その子はなんですか。どこから拾ってきたんですか。ていうか、新規エメラルド・ダンジョンの中層階の攻略終わったら、キミ、オパール・ダンジョン深層階に行く気ない?」


 深層階を攻略するオルセンさんも、低層とはいえ五階層を一時間で踏破するアンディさんに驚いたみたい。


「気になるのはゾンビ化された攻略者が残ってることか」

「アンディが単独で攻略した時はゾンビの出現率は低いな」

「しかしアンディが対戦すると、時々強いモンスター出現してるな。魔女エメラルドが主体で攻略すると雑魚いモンスターとゾンビになる」

「そうなると魔女の後継の育成には力を入れる方針は正しいんだな。雑魚とゾンビだけなら攻略できる。今後出現するだろう、アレクサンドライト・ダンジョン攻略において、いい参考資料ができた感じですかね」

「アクアマリン・ダンジョンが成功したのはやはり、条件が良かったというのも立証されたわけだ」


 偉い人が口々に言ってるけれど……。

 前回もこんな検証をしてたのか。

 ダンジョン・カードでの戦闘録画とかも、つい最近らしいし。


「あれ……あいつの名前ないね」


 あたしが回収してきたダンジョン・カードを見ていたオルセンさんが口を開く。

 あいつって誰?

 あたしが小首をかしげていると、オルセンさんが言う。


「赤毛のベイル。ほら、エメラルド様に絡んでダンジョンに入った代表の男だよ」


 幼馴染の三馬鹿から無理やり情報聞き出して、勝手に人数集めてダンジョンに潜っていった男――このセントラル・エメラルドの武器、防具、アクセサリーとかの商会連盟でも、ブラックリスト入りしてる――赤毛のベイル。

 口が悪くて、横暴で、前借りやツケは当たり前。よくあんなゴロツキもどきの男がクランの代表やってるもんだなって思ってた。

 商会関連から聞いた話だと、武器の代金が払えなくて、それがどうやら部下の妹を娼館に売って返済したとかもあるとかないとかそんな噂話がたっても、あいつやりそうだなって感じの男だった。

 オルセンさんが言うには、よそのダンジョンエリアでも、掟破りなこともやらかして結構悪名高い男だったらしい。

 そういうクズだから、我先にあのダンジョンに飛び込んだんだろうけど。


「一階層にいるか、四階層にいるかわからないってことか。あいつ、強いんですか?」


 あたしがオルセンさんに尋ねると「そこそこ」という返事。

 四階層以降にいるんだろうな。

 モンスター捕食してめっちゃ強くなってそう。そうなってもダンジョン踏破しそう。


「大丈夫です。エメラルド様、僕が片付けます」


 可愛いアンディさんがそう言ってくれる。

 そうね、多分そうなるでしょうね。

 再びダンジョンに潜る間にすることは、アンディさんとの連携での攻略ができるようにの訓練とか、更なる魔法の強化とか。そんなところを話し合った。


 あと護衛をつけるのを条件に、一度、セントラル・エメラルドに戻れるみたい。

 お休みをいただいたの。

 服とか雑貨とか、その他日常品の買い出しもしていいって。

 あたしを待ってる家族はいないけれど、シエラに直接会えるのは嬉しいな。





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