24話 「お願い、手は出さないで! あたしが倒すから!!」
そんなわけで、アンディさんが五階層まで連れって行ってくれて、最初の二階層に戻ってきた。
ダンジョンの階層の間で、攻略済の階層を選択できたり、地上に戻ったりできる。
これって、このエメラルド・ダンジョンだけなのか。魔女が入り始めたダンジョンならではの形態なのか。あとで、地上にいるルビィ様にきいてみよう。
そして対峙するモンスターは、一階層にいたスライムやホーンラビット。あと、ボス戦で戦ったゴブリンが追加されていた。
戦闘を重ねるとセドリックさんやアレクと練習した火魔法の発動も、徐々にスムーズなものになくるのが実感できる。
威力は銃弾には及ばないけれど、使用していくことで、増していく感じもする。実体験するとアダマント様が言っていた「魔法が使えれば、銃はいらない」という言葉になるほどなと思うけど。
現状、あたしの魔法と銃なら、絶対的に銃の方がまだ使えそうだ。
威力あるけど、飛距離が違うから。
敏捷付与をかけて、攻略を進めていく。
そしてボス部屋前で、ゾンビ三体と戦闘。
……これでもあと10体以上のゾンビがこのダンジョンに潜んでいる。10体……多いのか少ないのか……。
二階層のボスはオークだった。
ゴブリンやオークはゾンビと同じ二足歩行だから、これまでゾンビを倒した経験が生きる。
オークはあたしより巨体だから、リーチが違う。
そして頭がいい、知恵がある。フェイントとかかけてくるんだよ。
敏捷付与をつけていなかったら、フェイントの動きがわからなかった。
あたし付与も結構レベル上がってるのかな?
「一階層の攻略の時間と比較すると断然、今回の方が早いですよ、エメラルド様」
アンディさんが伝えてくれる。
道も一回通った道だし。
あたしは迷彩マントを使用しているから、ゾンビはあたしには気が付かず、アンディさんに向かって突進していくところに、ガツガツとメイスで殴り片付ける。
近距離での火炎で焼き払うこともできた。
誰かがいてくれるだけで、全然違う。
メンタルが違う。
「僕は魔法が使えないので、すごいです」
アンディさんは感動したように、ゾンビを焼く尽くす火魔法を見てそう言った。
……アンディさん魔法使えないのか……。
その分、恐ろしいほどの身体能力をお持ちですよね。
あたしの魔法なんか、アレクやセドリックさんの魔法に比べたらまだよわよわレベルで、何発か連続で打ち込まないと倒れませんよ。
でも、アレクの「新たな魔法を習得できるのだから伸びしろはあります」という言葉を信じて積極的に魔法を使って行こう。
二階層で休憩を挟んで、三階層に進む。
三階層ではゴブリンとオークの出現率があがる。スライムの出現率はゼロだ。
二足歩行モンスターはゾンビ対策としてはいい練習台よね。そう考えちゃうところがなんかあたしも染まってるなー。ただの護符屋の店長代理が脳筋ダンジョン攻略者になるまでに時間かからないってことなのか。
状況が状況だからなのか。
モンスターを討伐する力が、あたし自身にないと、魔女のダンジョンはただただ長く深くなっていく気がする。時間を掛ければかけただけ、ゴールが遠くなるような。
だからって、ダンジョン攻略をさっきみたいにアンディさん無双で一気に進めたとしてよ?
もしもアンディさんが動けない状態になったら、あたしがモンスターと対峙しなくちゃならないじゃん。
その時何もできなかったらどうなんのよ。
スタンピードまで一直線じゃないの。
力は……必要なんだ。
このダンジョンに潜り続ける限り……。
このダンジョンの理。
魔女を誘う真意。
魔女の成長を促すもの。
鍵付きダンジョンにはそういう要素もきっとある。
だから魔女以外を拒絶する。
攻略者の慣れの果てのゾンビがまた5体、出現する。
あたしの魔力は上がってるはず。全力で、魔力を枯渇させたってコイツを燃やし尽くして倒せば―――……。
アンディさんが剣を取り出して、待機してる。
それを横目で見たあたしは叫ぶ。
「お願い、手は出さないで! あたしが倒すから!!」
敏捷二倍、攻撃力二倍の付与をメイスに乗せて、ありったけの魔力でゾンビの頭部を横殴りで燃やす。
二体は魔法とメイス、残り三体は銃で片付けた。
「そろそろ、魔力もない感じかなあ……」
「大丈夫ですか?」
「疲れた」
「ボス戦の前に少し休みましょう、休まないという選択肢を選ぶなら、僕はボス部屋に入った瞬間、ボスを殲滅します」
「……うん。ちょっと休憩」
「ボス戦が終了したら一度ダンジョンの外にでましょう」
アンディさんがそう言うってことは、あたしが目に見えて疲弊してるってことか。
まあそうだよね、初日に一階層でだいたい半日分の時間をかけて攻略したのが、二階層三階層を連続で踏破とか。
この差はなんだろう。一階層終了してダンジョンから戻って訓練したけど、三日四日の訓練で実力がぐんと上がるわけでもない。
そんなド素人が一気に二階と三階をクリアする事態、無茶苦茶だもんね。
三階層ボス戦で今回のダンジョン攻略は終了か……。
「アンディさん、三階層のボスを倒したら地上に戻るのはいいけど、再びダンジョンに入る時はどうなるの? アンディさんが倒した五階層から開始?」
「魔女の為のダンジョンだから、魔女の意思によると言われてますよ」
「あたしの意思……」
「はい」
なら四階層から開始でもいいかな……。
できれば、アンディさんとモンスター攻略の為に、連携とかできないだろうか。だってこのダンジョン深層ダンジョンなんだよね?
地上に戻ったらオルセンさんあたりに聞いてみよう。
「よし、三階層ボスを倒すわ」
あたしは立ち上がって、ボス部屋へ足を進める。
「エメラルド様、僕が先制をかけます。魔法を打ち込んでみてください」
ボス部屋の前でアンディさんの言葉にあたしは頷く。
この実践で、今後のダンジョン攻略のスタイルを決めていく感じね。
ボス部屋を開けると、そこには、身体をぐるぐると全身に包帯で巻いているモンスターがゾンビに食われていた。
「っ!!」
階層ボスを捕食するゾンビって何!?
どういうこと!?




