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22話 「じゃあ、今回の検証はあたしじゃなくて、その子なんですか?」

 




 不信感しかないって表情をしていたと思う。

 迷宮の王に対して、不敬だとは思うけど。

 この人にとって、魔女のダンジョンって、何なのか。

 スタンピードを起こしたくないとはルビィ様も言ってたし、各ダンジョンの代表をここに集めてることからしてもそうなんだろう。

 けど、攻略者本人に詳細な情報を伏せてるところがあるし。

 極めつけが同行者だよ。

 なんでアレクと同じぐらいの年の子なのか。

 子供だとゾンビ化を防げるとか?

 あたしはアダマント様の隣にいる少年を見る。

 亡くなったエメラルドみたいな緑色の瞳が、あたしの不審そうな表情を映していた。

 オルセンさんやブルヘルムさんも、眉間に皺を寄せている。


「これも検証の一環ですか? 同行者と一緒に入って同行者がゾンビ化するのかどうかっていう」


 あたしがそう言うと、アダマント様は片手をヒラヒラとさせる。


「それはもうデータとってるから大丈夫」


 ……まじか。


「だって、エメラルドが勝手に大漁のゾンビを作ってしまったから、私も結構焦ったんだよ?」


 それはすみませんでした!

 でも事前に言って欲しかったよ!


「まだ隠してることはあるんですか?」

「うん。ある」

「……」


 あたしは片手で頭を抱える。

 全部、今、言ってほしいよ!


「けど、こっちも言いづらいコトとかもあるんだよ。エメラルドにへそ曲げられたら詰みだから」


 そこはなんかもう今更って感じ。


「キミは、先代エメラルドに見守られてきたから、ダンジョンに潜らない、普通の人の感覚を持ってる。ダンジョン攻略の為にそこまでするのかって、怒られるのも怖いし、魔女の後継なんてごめんだとか言われたくないし」


 その言葉を聞いたセドリックさんとオルセンさんは「ああ……それはあるかも」とか呟いている。


「それに本当に、一階層の12体のゾンビはこっちも計算外だったんだ」


 しゅんとしてるアダマント様。イケメンって得だね! いま一瞬きゅんとしたわ。


「じゃあ、今回の検証はあたしじゃなくて、その子なんですか?」


 ルビィ様は頷いた。


「エメは勘がいいのね。だいたいその通り。でも、絶対にゾンビにはならない。サファイア・ダンジョンでも実証されてるから安心して。あと、この子は強いから」


 サファイア・ダンジョンでも実証。

 同行者として――魔女のダンジョンに入ってもゾンビ化しないという条件を持ってるってこと?

 どう見ても少年ですよ。人形みたいに綺麗な子だけど。

 でもアレクだって魔女の後継で、散々修羅場をくぐってるし、一緒に訓練してる時にも、さすがルビィ様の秘蔵っ子って感じだった。

 世の中には実年齢にそぐわない、攻略者としての実力を持つ子もいるんだろう。

 見た目で判断しちゃいけない。

 あたし自身がよわよわの初心者レベルなんだから、多分、この子の方が強いんだろう。

 ルビィ様が挨拶をするように促すと、彼はあたしの方に歩み寄る。

 人形みたいな綺麗な少年はまっすぐあたしを見上げた。


「初めまして深緑の魔女エメラルド様――アンディと申します。僕が貴女の盾となり、剣となり、貴女を護ります」


 そう言って、一礼する。

 その所作も洗練されてて……どこの国の貴族の子弟なのよ……。

 おまけに、物語のお姫様に忠誠を誓う騎士のごとくのセリフじゃないの。

 あたしとそう変わらない年齢の男が言ったら「お前、頭大丈夫?」と聞き返すけど、このぐらいの子が言うと可愛い~。

 は~弟がいたらこんな感じですか?

 こんなあたしをシエラが見たら、「あんたほんとに、チョロすぎ!」とかどやされそうだ。

 ええ、否定しません。


「アレクぐらい強いんですか?」


 あたしの質問に、ルビィ様はアレクを見て唸る。


「アレクは成長が早いからねえ……でも、今のところは同じぐらいかな」


 アレクは「え~ならわたしが一緒に行きたいです~」と言葉にしないけれど、表情が語っている。


「アレクはダメ。エメラルドが中層階抜けるまで我慢して。多分、アンディが無傷でエメラルドを連れて行ってくれるから」


 無傷でって……。

 この子に攻略させてこの子がダンジョン継承した方がいいんじゃない?

 そこは、話し合ってるの?

 この子はダンジョンの踏破者になれるぐらい強いってことよね?


「エメラルド。そろそろ時間よ、ダンジョンが勝手に二階層に連れて行ってくれる」


 ルビィ様にそう促されて、あたしは「行ってきます」と告げると、アンディと名乗る少年が後をついてくる。

 ……たった一人でダンジョンに潜るよりも心強いかな。


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