17話 「エメさん……あの3人、お友達の人じゃないですか?」
はい、連投は明日、1話分でおしまいになります! お付き合いありがとうございます!
ストック切れたよーははははヽ(*´∀`)ノ
ダンジョンの入り口付近にまで近づくと、いかにも攻略者っぽい風体の男達が見えた。
どうやら何人かの攻略者パーティーもしくは少人数のクランが見張りの人を取り囲んでる。
その中でもリーダー格の男が、見張りの人に食って掛かってる。
「アンタ達もここにいるってことは、見張りなんだろ」
「ああ。お前達みたいにこのダンジョンに入り込む奴等を阻止する」
「って言ってもよう、東側辺境伯領のセントラル・アダマントの権限が、このセントラル・エメラルドにあるのかよ」
「ダンジョン出現で72時間経過して、なおかつ、スタンピードも起きてねえんだろ? もう新たな魔女が攻略してんじゃねえのかよ」
バカなのか。
ウィザリア大国東側辺境領の歴史と施政についてもう一遍、学園で講義受けなさいよ。
ダンジョン潜りすぎて脳筋に拍車がかかったのかしらね。
あるから街とこのエメラルドの家の道を封鎖して、防壁建ててんのよ。それはアダマント様の指示でしょ、セントラル・エメラルドの住民の安全を考えてくれたからでしょ。
セントラル・エメラルドの権限は、亡くなったエメラルドのものとか考えてるの?
確かにそういうのも含めて、魔女エメラルドはこの地を平定してた。
でもね、貴族位で置き換えると、アダマント様は王様もしくは大公、亡くなったエメラルドは侯爵か伯爵ぐらいじゃないの?
この新規のダンジョンが、オルセンさんのところのオパール・ダンジョンみたいに、踏破者を待つダンジョンかもとか思うわけか。
こういう考え方のやつが我先にとダンジョンに潜ってゾンビ化したのね。多分。
「エメさん……あの3人、お友達の人じゃないですか?」
くいくいと、あたしの服をひっぱって、アレクが指さす。
うん……集団の中に、あたしの幼馴染が混ざってる。
ほんとにアホか。
「きけば、新たな魔女は、ダンジョンに潜ったことのないド素人って話じゃねーか」
……幼馴染の三馬鹿トリオめ、そういう情報も流してるのか。
クランに入ってダンジョン攻略者になって5年にはなるけれど、トップには逆らえないってところか。
嫁や彼女もいる身なら将来見据えて堅実にダンジョン攻略者やるしかないんだろうけれど、この鍵付きダンジョンはヤバイって、アンタ達も言ってたのに。
アレクはあたしと集団を交互に見る。
「アダマント様がダンジョンの見張りに置いた人は、私兵ですが、これぐらいの人数ならば、二人でも一掃できますよ、戻りましょう」
この人数を一掃って、どんだけ強いのよ。
戦闘になったら、今後のダンジョン攻略の参考になるかな~? なんて思った。
多分、あたしが二階層に入っても、きっとゾンビとかグールとかスケルトンとかいそう。
だから対人戦の戦闘が、一番参考になりそうな気がする。
この人たちは見張りとかするんじゃなくて、そういう戦闘の方が本職だと思う。
「もし、戦闘になったら、参考になりそうなんだけどな」
あたしがアレクにそう言うと、集団の中の一人があたしとアレクに気が付いた。
近づいてくる男の服や装備に見覚えがある。
セントラル・エメラルドのダンジョンを攻略しているクランの中でもあまり評判はよくないと言われる連中の代表だ。
金払いもけち臭いのよ。あたしにツケで付与魔法を依頼してきたのよ。
もちろん、断ったけれどね。
そんなガラの悪い男と対峙して、よく無事だったわねって、シエラに感動されたけれど、相手に敏捷低下の付与とかかけてたから、振り上げられた拳は空振りで派手にこけて、すぐに店に入ってきた他の攻略者に外に連れ出されたことがある。
「よう、護符屋、無事に一階層抜けてたのかよ」
いやアンタには関係ないでしょ。
「お得意様のオレがクランあげて、先にダンジョンの露払いをしてやろうっていうのに、止められてんだよ、なあ、お前からも口添えしてくれねえかな。アノ見張りおっかなくてさあ」
見張りの人がおっかないとか言うのなら、ダンジョン潜っても大した露払い出来そうもないじゃん。
それにアンタは、お得意様でもなんでもないし。
馴れ馴れしいのよ。あと、その舐めまわすような視線やめてくれないかな? 気色悪いんだけど。
あたしの様子を見て、ダンジョンの入り口の警備に当たっていた人達が、慌ててあたしと男の間に入り込んで、男の接近を阻む。
「いいわよ、そのダンジョンに入れば?」
あたしの言葉に信じられないといいたげな顔で振り返る見張りをする二人。
「話のわかる女は好きだぜ」
あたしはアンタみたいな男、大嫌いだけどね。
そして同じ孤児院出身の三バカトリオに視線を向ける。
「あの三人に話があるから、そいつらは残してちょうだい」
あたしがそう言うと、上機嫌で男はあたしに背を向けて、幼馴染三バカトリオをアタシの方に行くように促して、自分達は早々に、ダンジョンの入り口に向かっていく。
「よろしいのですか? エメラルド様」
あたしにそう尋ねたのは、見張りの人ではなくて、別の人物。
背後から聞こえた声はオルセンさんの声だった。いつの間にか、あたしとアレクの後ろに立って、そう尋ねる。この状況のどの時点からそこにいたのだろう。
「いいのよ。入りたいって言ってるんだし、『危ないからやめなさい』で話を聞く連中でもないでしょ、それとも、アダマント様から見張りを依頼されている貴方達も入りたいならどうぞ、止めないけれど」
見張りの人は、口元をへの字に曲げてあたしを見る。
「魔女の許可が下りればいいんでしょ? オルセンさんもよかったらどうぞ。入りたいんでしょ? ダンジョンは巨万の富を生むんですものね」
あたしが振り返ってそう言うと、オルセンさんは苦笑する。
くっそ、余裕だな色男は!
「今はやめておくよ、エメラルド様。俺は臆病なんでね」
まあ、いつかはもぐりたいわけね。いいけど。
あたしは、幼馴染の三馬鹿トリオにこっちにこいと顎をしゃくって見せると、三馬鹿トリオは躊躇いがちにこっちにむかってくる。
「さっさとこい! この三馬鹿!!」
あたしがしびれを切らしてそう怒鳴る。
横にいるアレクが「魔女の風格……」とぼそりと呟いたのは聞かなかったことにした。
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