肺がきゅうっ
「お前、覚悟できてんだろうな?」
今日は天気がよくてきもちいいなーなんて、のんきに歩いてました。
放課後の学校はすきです。
図書室にいました。
芥川さんの地獄変に、こっそり涙しちゃいました。
彼の文体は、はてしなくうつくしいです。
そんなことを思って歩いてたら、ふいに現れた彼…ええと、たしか、誉くんのお友達です。
「柳川三國だ!」
ああ、親切なかたでよかったです。
わざわざ名乗ってくださいました。
けど、ものっそいにらまれてます。
どうしたことでしょうかね。
「…名前覚えてなかったのは、まあいい。」
いいらしいです。
わたしだったらちょっとへこみます。
「お前、最近やたらと誉に近づいてはチャチャいれてるだろ。」
「…チャチャ、ですか?」
もうかれこれ耳にしない某アイドルグループを思い出しましたが、チキンなので、それこそチャチャはいれません。
あ、ちょっとうまいこといえました。
「お前が誉をどう思ってるか、だいたい察しはついてんだからな!」
「…どう?」
「そうだ!」
…誉くんをわたしがどう思ってるか?
柳川くんにはどうやら、この一人えらいこっちゃなきもちの真相が見えているようです。
たいへんです。
ぜひとも、教えてもらわなければいけません。
「どうだと思います?」
まじめにお伺いをたててみました。
「…ふっ、お前なかなかやるな。」
悪徳代官みたいに笑って、びしっとわたしをゆびさしました。
どうやら、教えてはもらえないみたいです。
「わかった、お前は今日からオレの好敵手だ!」
肺がきゅうってなりました。
好敵手…
ライバルとはいわず、あえて好敵手…!
「…は、はいっ。」
わたし、がんばります!
走り去る柳川くんの背中に、また、肺がきゅうってなりました。
けど、結局柳川くんは、誉くんのなんなんでしょうか。
いえ、お友達ですが。
よくわからないですが、わたしには好敵手が出来たようです。
うれしいです。