手がじんわり
頭を撫でつけられ、とつぜん前触れなくみーこと呼ばれ、うやむやのうちに一週間経ちました。
はやいものです。
あいかわらず、内心えらいこっちゃなわたしですが、じゃあ何がえらいこっちゃなのか、と言われると、ですね。
いやはや、よくわかりません。
『こえり、ファイットオー!オー!』
…とか、友達の夕七ちゃんに言われました。
ついでに、一緒にオーってやらされました。
あ、夕七ちゃんは、真田夕七ちゃんといいまして。
さ な だ・ゆ う な ちゃんです。
七夕生まれだそうです。
ステキングですね。
とにかく、オーってやりましたが、何がオーなのか、いまいちつかめません。
つかめませんが、つかまれてはいます。
「みーこんちって、どっち?」
…はい。
誉くんに、がっちりがっつり、何故か手をつかまれてる現状です。
何がどうなってこうなったかといわれれば、誉くんが教室を出たところでわたしの手をつかんで、何だか知らないうちに、一緒に下校することになったんですよ。
ああ、説明がながかったです。
息がきれそうでした。
ふがいなくて、すみません。
「みーこってば。」
「あ、はあ…えっと、あっち、ですよ。」
あいかわらず、誉くんはお花が咲いてます。
笑顔のことです。
脳味噌のことは、もういいんです。
「高校、近いんだ?」
「はい、歩いて十五分くらいです。」
学校が近いといいですね。
朝、トーストくわえながら走ったりも、ちょっとあごがれます。
近いので、したことないですが。
朝強いんです。
ちょっとだけ残念なきもちです。
けっこう一生懸命にいろんなこと考えてますが、どうしてでしょうか。
つかまれた手が、じんわりとするんですが。
「…うーん?」
「どしたの?」
ひょいっと近くなった誉くんの顔に、また、少し、手がじんわりとしました。
けど。
やっぱりよく、わかりません。