1-4 鎮魂/「100戦目の立ち合い」
「ヴィ……ェラァァァ!!!」
体勢を立て直したキマイケーラ、“トードファンガス”はヴィエラの名を叫びながら突撃する。
「ディオン!私です!ここに居ますよ!」
『Pla-sma!』
石造りの地面を伝い、剣から発せられた電撃が迸る。
「ェァァァァァアアア!!?」
直撃。
全身に感電し、トードファンガスは動きを止める。
「電撃……!」
『Fire…』
「はあっ!!」
同じく炎も命中。
「ルルルァァァ!!!」
トードファンガスは火を消し止める手段が無く、苦しみながら炎上している。
「ッ……ごめんなさい!これ以上ディオンを苦しめるわけには……!」
『此がサクリスタルに込められた力。我はその力を解放する鍵である』
『鎮魂するなら早急に、一発で仕留めるのだ』
「鍵……」
「ヴィ、ヴィ!」
右肩が燃えながらもトードファンガスは背中をヴィエラに見せびらかす。
敵に背を向けてはいるが、逃げるつもりは一切無い。
「ッ!!」
咄嗟の行動ではあるが避けようとはした。
だが、完全には避けきれなかった。
トードファンガスの背中から球体状の卵が大量に放出される。
卵はヴィエラの服や体に付着すると服を、肉を食い破ろうと小型のオタマジャクシが大量に生まれてくる。
「あぁ……あぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
想像を絶する痛み。
みるみる内にオタマジャクシが孵化し、強靭な顎で噛みつかれる。
「おい!何してやがる!」
「ぁぁぁぁぁああああああああ!!」
『Blizzardを己に使え!』
『Blizzaaaaaaard!!!』
震える手でBlizzardのサクリスタルを使用する。
神器から凍えるような冷気が発され、急な温度変化でオタマジャクシが凍死する。
「ハッ……ハッ……ァッ……」
……が、そんな荒療治、ヴィエラにとって負担が大きすぎる。
ブルブルと震え、呼吸が荒れ、膝から崩れ去る、
そんな姿で戦闘が続行できる訳がない。
『鳥仮面の者、主は危険状態にある。今は退散──』
「待って……ください……」
「一番、危険な、状態に、あるのは、ディオンです……彼は、死に、ながらも、今も、苦しんでるんですから……」
「だとよ、主サマがそういうのなら見届けてやれよ」
『しかし……』
「大丈夫……です、行きます……!」
『Pla-sma!』
『Fire…』
『Blizzaaaaaard!!』
『Triangle Break!!』《三元素三連撃》
Plasma。
電流を放射し、対象に感電させて行動を封じる。
Blizzard。
凍てつく豪風で対象の肉体を凍結させ、確実に動きを止める。
Fire。
炎を纏い、凍結させた対象の肉体を熱膨張、及び爆発四散させる。
三竦みの力。
トードファンガスに放たれた。
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なんだこれ。
死ぬ前に見る“走馬灯”って奴か?
「パパ、あの女の子は?」
「ヴィエラ王女だ、綺麗なお方だろう?」
「ディオン、お前が大きくなったとき、あのお姫様を守ってあげるんだよ」
「絶対守るよ!だってオレはパパの子だもん!」
なんか……懐かしいな……
「本日ディオン・フォルティスは王女ヴィエラ・クレセンドの王室護衛兵隊長として任命される」
「私の剣に誓い、忠誠を誓いなさい」
「今生のこの命を、永久の忠誠を貴女に捧げます」
ヴィエラだ……
「……ハァ……ハァ……流石ですねディオン……」
「昨日と今日で2連敗かよぉ……流石【剣天】の娘だなぁ……」
「槍の腕ではディオンはこの国一番ですよ、最初の手合わせじゃ私を圧倒してたじゃないですか!」
「へへ、ありがとな、……でもいいのかなぁ……ただの兵士と一国の王女様がそうやってタメ口言い合える仲なんて……」
「お父様には黙っていてくださいね?ちょっと厳しい方なんで」
「了解了解、ヴィエラ様」
──違う、そんな事じゃない……!!
言わなきゃ……いけないことが!
ヴィエラ…………!!
折角の100戦目なんだ!
俺は、俺は──!
なんと本日、1章(計7話分)を全話公開してます!
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