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4-2 齟齬/「永遠の安寧と安泰を約束した無責任さ」

 会議が終わる頃にはもう日が沈んでいた。

 ヴィエラ、ウェベンヌはそれぞれ自室に戻り、休息したが、ヴァイオレットとジャンパール国王は二人きりで会食を行うことにした。


 ジャンパール・トーン7世は長寿の国王。

 今年で90を迎える。


 高齢でありながらも、トーン王国の経済や政治を大きく動かした逸材。

 クレセンド王国とも長きに渡る友好関係を結べており、互いの特産品同士で貿易が盛んに行われていた。

 ヴァイオレットはジャンパール国王と古くからの付き合いで、よく会食を行うのだ。


「本日の会議も長かったですのぉ」

「ジャンパール国王、お体の方は大丈夫なのですか?」

「心配性ですのぉ、儂はこれでも睡眠、食事を充分に取っておりますのでのぉ」


 ジャンパールは短冊状に切られた牛のステーキを口いっぱいに頬張る。

 高齢ではあるものの、食欲は旺盛。


「病気には、お気をつけてくださいね?」


 ヴァイオレットはサラダから口に入れる。

 両目が不自由な身であるので、付き添いのメイドに食べさせて貰っている。


「そうですのぉ、病魔はいつ来るかわからぬもの、あのきまいけぇらの様に……」

「キマイケーラ……わたくしも無力さを痛感いたしました」


「わたくしはヴィエラに剣技を教えることしかできません、そして、何よりも時間が欲しい」

「先程提案していた、きまいけぇらへの襲撃、ですか」


 先程の会議でヴァイオレットはキマイケーラの侵攻を止めるために、一つの提案をした。

 硬直状態となっている今、先にトーン側がキマイケーラに支配されているクレセンドに攻め入る、という案である。


 ヴァイオレットとの一騎打ちで最上位キマイケーラのシェルザルドが、更に敵の総司令であるフォビアラクが痛手を負い、クレセンドで体を休めている筈だ。

 こちら側にキマイケーラの干渉が無いのはこの数日間だけではないか、とヴァイオレットは推測した。


「刻一刻と奴らの体は修復している、とウェベンヌから聞いています」

「そして、キマイケーラに大打撃を与える方法が一つ、ございます」


「と、言いますと」

「これはヴィエラにはあまり話したくありませんが……」


「クレセンド王国内の地下に、大量の火薬を敷き詰めた爆弾があります」

「これは、地下の奥底に埋められており、爆発すればクレセンド王国全体が火の海と化します」

「作物も、地表も原生林も、クレセンドの築き上げた文明は全て無に帰します」

「同時に、キマイケーラの生命力ですらこの爆発に耐えることはできないでしょう」


 周囲は、ヴァイオレット以外の周りの人間は口を塞がらなかった。


「な、なんの為に、そんな馬鹿げた代物を……?」

「王族としての覚悟を表したものです」

「クレセンドは永遠の平穏と安寧を約束する国家、それを表した遺産ですね」


「爆弾が……遺産と?」

「ええ、わたくしはコンバトラス様と婚約した日にこの爆薬格納庫に火薬を注ぎ足すという行為に付き添いました」

「永遠の平穏と安寧を約束する、それが不可能となり、反乱が起きた場合、王は国とその身を爆弾と共に散らす、というのが始まりだったそうですがね」

「500年も時が経つにつれ、クレセンドの民全て皆殺しにするような火薬量になったのです」


「ですが、夫のコンバトラスはキマイケーラという、反乱とは別の災害に殺されました」

「わたくしも口には出さないだけで、キマイケーラには激しい憎悪を持っております」

「この報いを与えるには今、この時です」


 ヴァイオレットの覚悟、それは国を全て崩壊させ、無に帰す。

 全ては亡き夫の為、キマイケーラに惨殺された無辜なる民の為。


「ば、ばいおれっと殿、流石にその考えは狂っておられますぞ!?そもそもきまいけぇらに捕らえられている民はどうするのですな!?」

「勿論救出します、全員の安全を確保した上で、私が起爆します」

「ばいおれっと殿が!?そんな、命をかけてまで!?」

「狂ってもいます、無責任でもあります。行き場の無いクレセンドの民にも、ヴィエラにもひどい仕打ちをしてしまうかと思います」


「ですが、決着をつけないと、次はどこに襲い掛かるか……」

「国の為にわたくしは命など安いものなのです、どうせ老い先短い人生ですから」

「自分が何を言っているのか解っておられますのですかな!?」


「領土に関しましては、トーン王国への引き渡しとなります」

「そういう意味ではなく……!」


 場の空気は混沌としている。

 だが、その空気を打ち消すかのような一人の男が入ってくる。


「ハッ!さっきのクソつまんねェ会議よりもクソ面白ェ話、してんじゃねェか!」


 立場も身分も知らずに割り込むウェベンヌだ。


「ウェベンヌ!?」


 それに続いてシスター・クラリオンも顔を出す。


「いやーごめんねー、お姉さん、たまたまフラフラ歩いてたら聞こえちゃってさー」

「ちょっとこのキマイケーラとサシで話してただけなんだけどねー」


 ウェベンヌの腹に勢いつけて肘打ちをする。


「痛ッてェなァ!?テメェ!?」

タイトルとあらすじ、大幅改題キャンペーンです。

ブックマークしてる方にはあれ?こんな作品登録してたっけ?ってなってしまうかもしれません、すみません。


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