プロローグ 将来/「いつかはいつかくる」
熊蜂です。新作です。
処女作をほったらかして、この作品を50話分書き溜めてきました。
多分、いや確実に初見の人しかいないと思いますが、誤字報告や矛盾点に気付いたら速攻で感想ぶつけて殴りかかってください。
王女は、人々の理想のままに【剣天】として育てられた。
ヴィエラ・クレセンド。
母親ヴァイオレットの愛情と父親コンバトラスの気高さを知る16歳。
クレセンド王国の王女にして、弟にツェロを持つ。
正統な王権はツェロにある。
クレセンド王国はおよそ500年間戦争を起こさず、民衆の多くは武器を“芸術品”として捉えていった。
そこで、クレセンド有数の剣豪たちは“剣舞”として国の伝統文化を立ち上げてきた。
その中でも剣舞の天才、【剣天】と呼ばれるヴァイオレット・クレセンド。
ヴィエラは彼女を継ぐものとして育てられてきた。
家族からも、国民からも完璧な才女として認められていた彼女にも、年頃の悩みというものがあった。
「今日からお母様とツェロは隣国のトーン王国で1週間の滞在をなさるんです」
「ですので、ディオン!この1週間、模擬戦やりますよ!」
「わかったよ! 久々だな!」
ディオン・フォルティス。
ヴィエラの王室護衛兵隊長にして、彼女が腹を割って話せる親友である。
表面上ではただの兵士と王女の関係ではあるが、同じ武の道を歩むものとして、切磋琢磨を重ねている。
ヴィエラは木剣、ディオンは棒を両手に構え、実戦が始まる。
先制はディオン。
ヴィエラの腹部に先手必勝といわんばかりの突きを打ち込む。
回避。
剣で上向きに弾き、ヴィエラはディオンの顔面に踏み込む。
そして、彼の右脇腹に反撃の一撃を──
(はっ、そんな速攻で終わらしてたまるかよ!)
ディオンは弾かれた棒を片手に持ち変え、リーチの長さを利用して横に振る。
ヴィエラの視界は彼の懐にまで来ているため、捉えることはできない、
「っ!」
筈だった。
ヴィエラは後頭部に直撃する筈だった棒を左腕で掴んだ。
「嘘だろ!?」
「えい」
ディオンの行動を全て読みきっていたかのような対応の早さで、相手の一手を完封した。
そのまま、がら空きとなった彼の脇腹に一発、木剣を打ち込んだ。
「のがっ」
転倒。
彼女の剣の打ち込みが強かった訳ではなく、自発的に崩れた。
「はー、そこ掴めるかよ普通よー」
芝生に寝転がる彼の顔を見下ろすヴィエラ。
今日の勝利に、満面の笑みを浮かべている。
「ふふふ、今日で62勝36敗、あと2回やればちょうど100戦目ですよ!」
「よく覚えてんなヴィエラ……」
「だってお母様とディオン以外、まともに模擬戦できる人、いないじゃないですか!」
「こんだけ平和だからなぁ」
一面の青空、雲一つ無く、宮殿内に微かな日が差し込む。
のんびりと庭園で日向ぼっこをしても、誰からも叱られる事はない。
誰かが暇を持て余しながら、微妙に社会情勢が傾きかけて、すぐに元に戻る。
そんな国がクレセンド王国だ。
「それにしても、ヴィエラ」
「お前は良かったのか?折角5歳からヴァイオレット様から色々教えられてたってのに」
平和さ故にヴィエラは将来王となって何をしたいか、何ができるか、どんなに考えても何も思い浮かばなかった。
母親、ヴァイオレットからは剣舞の練習以外にも王としての立ち振舞いについて5歳から教えられていた。
でも、自分が、将来何ができるか、何をしたいか、何一つ言えなかった。
「うーん……」
「私は将来、自分が王として皆の前に立っているビジョンが想像つかないんですよ」
「剣を振って、お母様やディオンと模擬戦してる方が楽しいっていうか……」
「こんな平和な世の中で剣とか槍を振るえる機会なんてそうそう無いぞ?」
「いつ如何なる時も、王族たるもの、己で己の身を守り、国民もまた己が身の様に守れってお母様に言われてますからね」
「いつかは、いつかありますよ」
「それって明日とか?」
「明日は5日じゃなくて4日ですね」
「……そんなシャレ上手くないぞ」
「え」
「ヴィエラって、なんかシャレ聞かせんの下手クソだよな」
「王女に向かってそういう口聞けるのディオンだけですよ?」
「本当にか!? 本当にその下手クソなシャレ聞かせてみろ!? 滅茶苦茶微妙な空気になるぞ!?」
「そんなことないです!お母様だってちゃんと笑ってくれますよ!」
「絶対愛想笑いだろ」
「んなっ、頭に来ました! じゃあ99回目の模擬戦やりますよ!」
「なんでそうなんだよ……ってのわっ!? 棒ぐらい構えさせろ!」
その“いつか”は刻一刻と迫っていた。
ヴィエラの最大の試練として訪れる“いつか”は──
なんと本日、1章(計7話分)を全話公開してます!
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(※ご覧の映像はイメージです)