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小説家より高級品になりたい  作者: 春夏秋冬
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ネイルの似合わない女

 ネイルなんかしてこなければ良かった。あんな皮肉を言われるくらいなら。もっと言えばネイルをしていてもどんなに高級な鞄を持ち歩いていてもどんなに高級なご飯を毎日食べていても皮肉なんか言われない女になりたい。産まれたときから貧乏だった。それはそうだ。だって、母は私の他に男1人と女2人を女で1人で育て上げたのだから。でもどうしても私には世の中が理不尽に見えて仕方なかった。新品の勉強机、自分だけの物で溢れた部屋、誰の為にも手をつけられていない貯金で行く大学、その全てが私とは無縁だった。末っ子はワガママだなんていう空論をこの世に蔓延らせた阿呆は一体全体どこの誰なのか。お下がりの机に悔しさを感じながら精一杯喜び、要らなくなったガラクタだらけの部屋に自分の物を整理して自分の部屋を作り上げ、お下がりの貯金で行ける大学へ行く、そんな末っ子がワガママだなんて、冗談甚だしい。もう十分、もう十分やったのだ。私はもうこの家には居たくなかった。自殺した兄、鬱になった姉、毎日の家事、年老いて体調を崩すことが多くなった母、家事を怠ると言われる嫌味に何度都会に出た2番目の姉に嫉妬したことか。何も考えずただ生きることがこれほどまでに大変なのか。もちろん家族の悲しみも分かっているつもりでその悲しみの支えになれるのならなりたいしその努力もしているつもりだ。なのに、私はいつも独りぼっちじゃないか。母が姉にアイツは駄目だと私のことを話していた時も、姉が母に兄が死んだのはお前のせいだと土下座をさせた日も、何故かいつも私だけ独りぼっちだった。誰にも怒りを露わにできない、誰にも心の内を曝け出せない。どうして周りの人は皆自分にそんなにも素直でいられるのか。貴女たちは1人じゃないから素直でいられるのにどうしてそれほどまでに攻撃的な一言しか出せないのか。どうしても理解ができなかった。私には私しか居なかったから。

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