001:夏休み直前。
学校の終わりの始まり。
『今日も全国的に晴れ。気温も高く、長時間屋外へ出るのは危険な……』
遅めの梅雨が明けて1週間、一昨日も昨日も今日も毎日暑い日が続いている。
したくもない勉強の為に時間をかけて灼熱地獄の中、登下校するなんてホント面倒な世界だよな。
スマホとかパソコンで済ませられれば勉強の効率だって上がると思うのに……と自分勝手に考えながら朝食を食べていた。
暑い毎日だからシリアルばっか食べてるなぁと、それ以外食べる気が起きないんだよな。
シャクシャクと噛みしめる度に目が覚めていく。
――そうだ、今日は終業式だ。
学校に行って通知表をもらって校長先生の話を聞くだけで家に帰れるという特別な日。
さっさと終わらせて家に帰って涼しい部屋でゲームでもしていたい。
頭の中は夏休みの事で埋め尽くされていると、時計を見て焦る。
ヤベッ、もうこんな時間!
残りのシリアルを流し込んで、部屋に戻って着替える。
身支度を済ませ、灼熱地獄直前のまだマシな気温の朝はまだ玄関が涼しさを保っていた。
スニーカーを乱暴に投げ置き、足先を突っ込む。
つま先で床を蹴って無理やり履くと、教科書の無い軽いカバンをヒョイと持ち上げ扉に手を掛ける。
まぁ、終業式である事以外は日常の朝だった。
「ちょっと行ってきまーす!」
玄関を開けると、すでに熱を帯びている太陽光が目に刺さる。
裏手に回って自転車を解錠すると、
「響、気を付けて行くのよぉ~」
裏手の窓から顔を出した母さんの間延びした声。
はぃはぃ、分かってますよぉと右手をヒラヒラして自転車に跨る。
はぁ、母さんの声ってどこか間が抜けてて恥ずかしいんだよな……おっと、ヤベェ!遅刻しちゃう!
カバンにぶら下げた腕時計を見て、急がないと学校に着いてから余裕が無くなるなどと考えながらペダルに足を掛けた。
まだ上昇中の気温は推定25℃。
これくらいなら汗をかかずに学校に着けるかもしれない、と運動による体温の上昇を極力抑えながらペダルを漕いでいく。
今日の午後から待っている自由な生活を頭で考えると、どうしても嬉しくてスピードがでるなぁ。
秋葉 響(あきば きょう)
僕が住む場所は横浜市内だが海から離れた田舎のように畑や森や住宅街のある華の無い場所だ。
横浜市内だからと言って全ての横浜が華やかでオシャレではないという事を伝えたいね。
そんな地味で冴えない横浜の住人は今日も自転車に乗り学校へ向かう。
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