奢ってやるよ
「まずはパスを教えていくね」
「はい」
返事はしっかりとしなきゃいけない気がする。
何となくだけど、
「まずは、チェストパス。
胸に引き付けて両手で押し出すようにパスをするの」
胸ですか。
なんかありがとうございます
(グハァ)
ボールが飛んできた
「ちょっと大丈夫?」
「あえっ、大丈夫です」
ちょっと胸に意識を持っていかれてた。
「しっかり、見ててね」
いや、しっかりは見てはいたんですけどね
「同じように私にパスして」
「はい」
「上手い!」
いやー、誰でも出来るでしょ。
つーか、なんでわざわざ力を溜めて打ってるんだ
「えーっと、」
名前なんだっけ?
「どうしたの?」
「どうして、胸に引き付けてからパスをしているのかなって」
いや、なにその驚いた顔。
疑問に思ったこと無かったの?
「んー、なんでだろう?
パスしやすいから、それが普通だからかな」
パスしやすい?
「別に引き付けなくても打てそうですけど」
「うそぉー! じゃあ、やってみて」
「あっ、はい」
数回パスをしていたら突然に。
「ストップー!!」
「はいー!!」
ビックリした
「君、今、片手で持ってたよね?」
それが?
「あっ、はい」
「ちょっと、手を見せて」
彼女の手が僕の手と重なりあった。
小さい手だな
「いや、神崎君。手が大きいんだね
身長はあれなのに」
あれとか言うな。傷つくでしょうが
そんな二人だけの空間の中に邪魔物が入ってきた
「マネージャーと一年生。
なんでイチャイチャしてるん?」
「キャプテン、神崎君。凄いんですよ、パスもなんか変ですし」
変なのか
「変なら、教えてあげないと」
「違う、違うんですよ。パスしてもらいましょう。見せた方が早いので。
じゃあ、神崎君、パスしてみて」
まぁ、普通に
「パスしましたけど、」
なんで、なんも言わねぇんだよ
「あのー」
「ノーモーションか」
なんだそれ?
「神崎、お前ヤバイな」
やっぱり、ヤバイのか。
運動苦手だからね、しょうがない
「すいません、運動音痴なもので」
「何言ってるんだ?
ノーモーションは凄い技術だ。
カットもしにくいし、お前はポイントガードを目指した方が良いかもな」
凄い…
また、言われた。
バスケを初めてから二回も言われた、お世辞でも嬉しいものだ。
そして、一通りパスを教えてもらい今日の練習は終わった。
「ヒロ。コンビニに寄ってかね?」
「なんで?今日はまだ、発売日じゃないけど」
今日はマンガじゃないんだよね
「腹へったから」
「じゃあ、サイゼで良くない?」
学生の味方、激安イタリア料理「サイゼ」
皆はよく行っているが俺は余り行かない
「餡まん、食いたい」
「オッケー、じゃあコンビニだわ」
そして、コンビ二
「ヒロ、お前ピザまん食う?」
「食わない、Mチキを買う予定」
「奢るわ」
いや、なにその顔。
上見るな、
「何、上見てんだよ」
「いや、だって。そんなこと言うなんて信じられなくて隕石でも降ってくんのかなって」
「降るわけねーだろ」
「あの、お金持ちの癖にめちゃくちゃケチなあのユウトが奢るって言ったんだよ。
なんで、そんなこと言ったの?」
うざっ、なんかウザい。
そもそも金持ちなのは親。俺は金持ちじゃないからな。
まぁ、いいや
「バスケ、誘ってくれたからだよ。
そんだけ」
「あー、やっぱりね、バスケ、面白いでしょ。
絶対、ハマると思ったんだよね」
バスケ自体の面白さはまだ、分からないけどな。スポーツで誉められるのなんて初めてだったからな
「あぁ」
「いや、反応薄っ、
なんか、こう。もっと、あるよね」