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蘇生チートは都合が良い  作者: 秋鷺 照
1章 妖精の島
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1-4 実験

 蘇生能力について、リィラの主導で実験が行われることになった。

 先の戦争で深手を負った兵士たち。助かる見込みの無い彼らに、リィラは事情を話して許可を取り、実験体になってもらった。

「では、テツヤ。この者に蘇生能力を使ってください」

「ほーい」

 といった具合に、実験していった。

 そうして分かったのは、死体の欠損が激しくても元通り五体満足になるということだ。また、どのような死に方であっても蘇生できるようである。

 鳥や虫も蘇生できると判明してからは、それらで実験を続けた。

 分かったのは、一度生き返った者が死んだ場合は蘇生できないということだ。それから、死後ある程度の時間――四半刻が経過すると蘇生できなくなると思われる。また、どうやら生き返った者は食事が不要になるらしい。

 人間以外の種族に蘇生能力が有効であることも分かった。これが最も確かめたかったことである。



 リィラは忙しい。本来は王がすべき職務を、全て担っているのだ。実験ばかりしているわけにもいかず、確かめたいことを確かめ終えた時には3年が経とうとしていた。


 実験が無い時、轍夜はダラダラと過ごしていた。あまりにも暇だったので、筋トレやら走り込みやらに精を出すこととなった。

 そんな生活に特に不満は無かったが、食べ物には不満を抱いていた。パサパサのパンに不味い肉。これでも庶民よりは豪華らしい。

 もっと美味しい肉は無いのかとリィラに尋ねたが、この国では獲れないとのことだった。


 この2年と少しの間に、轍夜とリィラは子作りにも励んでいた。女の子1人と、双子の男の子が生まれた。

 子供たちは使用人が育てている。轍夜は戸惑ったが、王族はそういうものだとリィラが言ったので納得せざるを得なかった。





 実験が終盤に差し掛かっていたある日の朝、食事中に、リィラはふと尋ねた。

「テツヤ。あなた、戦えますか?」

「ケンカなら自信あるぜ!」

 轍夜は得意気に拳を握り上げる。リィラは苦笑した。

「なら、兵士と戦ってみてくれますか? どの程度戦えるか知っておきたいので」

「おう!」



 朝食後、リィラは1人の兵士を呼んだ。

「呼びましたか」

「ええ。庭へ参りましょう」

 リィラは、轍夜と兵士を連れて、庭の広場へ向かった。

「……では、この兵と戦ってみてください。防御魔法はかけておきますので」

 轍夜は兵士と対峙する。兵士はニヤリと笑った。

「王相手でも手加減しませんよ」

「良い度胸じゃねーか」

 言うなり轍夜は拳を振りぬき――その拳は空を切った。

「ッ⁉」

 飛び蹴りを食らって転がる轍夜に、追撃の拳が迫る。

「くっそ」

 逃れようと体をひねるが、兵士の拳の方が速い。その打撃の直後に回し蹴り。

 轍夜はなすすべなくボコボコにされた。

「つええ……」

 唖然として呟く轍夜に、

「俺みたいな平兵士、強くもなんともないですよ」

 兵士は呆れたように言った。謙遜ではない。

「そんなことねーだろ! だってオレ、10人も20人も相手して勝ったんだぜ⁉」

 轍夜は、15歳くらいの――不良グループにいた頃の功績を主張する。リィラは嘆息した。

「身体能力に差がありすぎるのでしょうね。この国では、子供の喧嘩ですらもっと鋭い動きをしますよ」

 轍夜は渋面を浮かべる。この国の人は戦闘民族か何かなのだろうか。

 リィラは兵士を下がらせながら、名案を思い付いたように口を開いた。

「もう一つの人間の国の王が、剣士の腕輪という呪具を持っているのです。それを奪えば、剣士として戦えますよ。身につければどんな人でもそこそこ強い剣士のように剣を振るえるようになる、という代物ですから」

「なんかゲームのアイテムみてーだな」

「……? 何ですか、それは?」

 リィラは怪訝そうに聞き返したが、轍夜は言い換えようとしない。

「……ところで、王って戦うものだっけ」

 その問いに、リィラは「何を当たり前のことを」と言うような顔をした。

「戦争の決着を、王同士の一騎打ちでつけることがあるのです。だから、王は強くなければなりません」

「戦争しなきゃ良いだけじゃね?」

「こちらから攻めずとも、侵攻してくる国は必ず存在します。よって、戦争をしない、などということは不可能です」

「ふーん」

 轍夜は、どこか他人事のように感じていた。特に何もしていないためか、自分が王だという実感が湧かないのだ。






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