エピローグ
それから10年経ち。
リムネロエとヒュレアクラは、聖地の属する国であるネザリスで、魔術師として働いた。そして功績が認められ、第3代ネザリス国王から家名を名乗ることを許された。2人は互いの名前から家名をつけ、リムネロエ・ヒュレとヒュレアクラ・リムとして活躍を続ける。
ヒュレ家とリム家は、レスカーダ化の一族の宗家として数百年栄えることになる。
ミューレは懸命に仕事を覚え、リィラが「ミューレに任せて大丈夫」とお墨付きを与えるほどになった。そして、予定通り婚約者と結婚。2人は即座に、新たな王と王妃になった。
王位を譲って自由になった轍夜、リィラ、ケットシーの2人と1匹は、東の大陸に渡り、杖の封印を解く呪具を求めて冒険を繰り広げるのだが、それはまた別の話。
「そういえばさー」
東の大陸に向かう船の中。轍夜は、ふと思い出した。
「リィラは師匠にその杖もらったってゆってたよな」
「はい」
「何で選ばれたんだ?」
「……言いたくありません」
リィラは轍夜から目を逸らした。
「にゃー?」
ケットシーは不思議そうに鳴いた。
「みーも知りたいにゃー」
「絶対に嫌です」
リィラはきっぱりと言った。あまりにも恥ずかしくて、知られたくない。
「教えろにゃー。隠されると余計に気になるにゃー」
「……魔術院のすぐそばに、噴水があるのですが……そこで、出会いました」
皆その噴水で水を飲んでいた。だからリィラも噴水の水を飲み……しばらく経って、腹痛に襲われた。動けずうずくまっているところに通りかかったのが師匠であった。
「師匠は治癒師でした。それと……どうやら、人間以外の血が混ざっているようでした。詳しくは教えてもらえなかったのですが」
「にゃー! 話を逸らしてるにゃー?」
ケットシーに指摘され、リィラはぎくりとした。しかし、轍夜が
「オレ、そっちの話も聞きたい」
と言ったのを幸いに、師匠の人物像を長々と語り続けたのであった。




