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蘇生チートは都合が良い  作者: 秋鷺 照
5章 判明
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5-2 「蘇生能力」改め……

 ある日の昼下がり。リムネロエとヒュレアクラは庭で剣をぶつけ合っていた。

 2人の間に何か小さなものが落ちてくるまでは。

「んっ?」

 驚いて動きを止め、落ちてきたものを凝視する。

 小鳥であった。手のひらに収まるくらいの大きさだ。羽はボロボロで血に染まり、腹に深い傷を負っている。

「あ……」

 見ている間に、小鳥は死んでしまった。2人は顔を見合わせ、ある行動に出る。


 その行動とは、小鳥の死体と魂の場所を離して蘇生能力を使ってみる、というものだった。

 蘇生能力の話を教えてもらった時から気になっていたことを確かめるために。

 自分たちが蘇生能力を受け継いでいることを、2人は何となく分かっていた。言ってはいなかったが。


 小鳥の魂から光が溢れ、瞬く間に「生きた小鳥」が現れる。小鳥の死体は忽然と姿を消していた。

「体が治るんじゃないんだ……」

 リムネロエがぽつりと呟いた時、ケットシーが散歩に出てきた。

「何してるにゃー?」

「あ、ケットシー。蘇生能力は魂から新しい体が作られるって知ってた?」

「にゃー? どういうことにゃー?」

 驚いた様子のケットシーに、先ほどの出来事を話す。

「……それで、元の体は消えたんだ」

「ちょっと待つにゃー。さっきから魂がどうこうって……見えるのかにゃー?」

「見えないけど、感じるよ」

 きょとんとして答えるリムネロエ。隣でヒュレアクラも頷く。

「人間はそんな力、持っていないはずにゃー。みーでも魂を感じ取れないにゃー。何で2人はそんなことが出来るにゃー?」

 ケットシーは不思議そうに言った。

「え、そうなの? 皆分かるものだと思ってた」

「とりあえず、リィラに話してみるにゃー。一緒に執務室に行こうにゃー」

「うん。……お父さまとお姉さまは?」

「テツヤは昼寝中にゃー。どうせ聞いても分からないから放っておくにゃー。ミューレは執務室で勉強中にゃー」



 執務室に入り、ケットシーは事情を話した。

「なるほど……」

 リィラは呟く。

「受け継がれた蘇生能力が体内の魔力と反応して、新たな力となったのかもしれませんね」

 聞いていたミューレはぽかんとしていたが、

「え、わたしにはそんな力無いのに……多分、蘇生能力も使えないし。使えるなら使えるって何となく分かるのよね?」

 首を傾げて言った。リムネロエとヒュレアクラは頷く。

「にゃー……男にだけ受け継がれるのかもしれないにゃー」

「そうかもしれません」

「あ、そういえば……」

 リムネロエが口を挟む。

「皆も魂を感じ取れると思っていたから言っていなかったんだけど……蘇生能力を使うと、魂の質が変わるよ」

「質って何にゃー⁉」

 ケットシーは意味が分からなかった。魂は魂だ。味以外に何らかの違いがあるなど考えもしなかった。

「えっと、もともとは死んだら徐々に変質していく感じの質なんだ」

「そんなこと分かるにゃー?」

「うん、さっき見たから」

「徐々に変質……だから時間が経過すると蘇生能力を使えなくなるのですね」

 リィラは納得して言った。

「じゃあ、蘇生能力を使った後の魂の質ってどんな感じなのにゃー?」

「それは分からない。見てないから」

「見てないのに質が違うのは分かるにゃー?」

 ケットシーは胡乱げに尋ねた。

「うん、質が違うってことだけは分かるよ」

 先ほどの小鳥は、リムネロエとヒュレアクラの肩や頭を行ったり来たりしている。その小鳥をケットシーは片前足で指した。

「それを殺して見てみろにゃー」

「嫌だ。かわいそう」

 リムネロエは即座に拒否し、リィラも

「そうですよ。死んでどうなるかを試すのなら、害虫を使えば良いのです」

 と言った。

「にゃー……」

「そういえば、お父さまは全然違う質の魂なんだけど、異世界人だからかな」

 リムネロエが言った。と、そこへ

「お、いたいた。ケットシー、遊ぼーぜ」

 轍夜が入ってきた。

「それどころじゃないにゃー……」

 ケットシーはしっぽを揺らす。

「蘇生能力について色々な新事実が発覚したにゃー」

「……蘇生、という言葉は不適切かもしれません」

 リィラが言う。

「テツヤが蘇生能力と言ったのでそう呼んでいましたが……新たな体が現れるのであれば、それは蘇生とはいえません」

「たしかにそうにゃー。蘇生は肉体を修復して生き返ることを指すにゃー。新たな体が現れるという点では復活みたいだけれど、魂の質が変わる、というのが気になるにゃー」

「え、何の話?」

 轍夜にはさっぱり分からない。

「リムネロエがね、魂がどうとか言い出して訳の分からない話を始めたの」

 途中から話についていけなくなったミューレが答える。

「それまでは、蘇生能力は男に受け継がれるって話で……あと、蘇生能力を使うと死体が消えて新たな体が現れるらしいわ」

「ふーん」

 他人事のような反応をする轍夜。ケットシーはその頭に乗り、話を続ける。

「みーたちの古代言語に、レスカーダという言葉があるにゃー。死んだはずなのに生きている存在を表す言葉にゃー。これを、蘇生能力で生き返った人を表現するのに使うのはどうにゃー?」

「良いと思います。では、蘇生能力はレスカーダ化と呼び変えましょうか」

「賛成にゃー」

「ぼくたちも良いと思う」

 リムネロエとヒュレアクラも賛同を示し、視線が轍夜に集まる。

「テツヤ、良いですか?」

 リィラが確認すると、轍夜はきょとんとして言った。

「良いんじゃねーの」

 内心で「よく分かんねーけど」と付け加えて。



 リィラ、リムネロエ、ヒュレアクラの3人は転移魔法で崖の下に来た。〈死を招く蝶〉の生息地だ。その蝶で実験することにしたのである。

 外に出るなり小鳥はどこかへ飛んで行った。

 ひらひら飛ぶ4匹の蝶めがけ、リィラは魔法を放った。ぼうっと赤く燃え上がり、灰となって落ちてゆく。

 リムネロエとヒュレアクラは、蝶を2匹ずつレスカーダ化した。そうしてレスカーダとなった4匹の蝶を、またしてもリィラが焼き払う。

「どうですか?」

「分かった」

「では戻りましょう」

 魔法で執務室の前へ戻り、中へ入った。

「どうだったにゃー?」

 ケットシーはすぐに尋ねた。リムネロエが答える。

「消えたよ」

「にゃー⁉」

「蘇生……じゃなかった、レスカーダの魂は死ぬと消える質だって分かった」

 それを聞いたリィラは、合点がいった。

「だから1度しか蘇生……いえ、レスカーダ化できないのですね」

「あ、それじゃあ!」

 突然ミューレが大声を上げた。何か重大なことに気付いたように。嬉しそうに、興奮気味に。

「王族じゃなくても、気軽に王になってくれるんじゃない?」

「あ……!」

 リムネロエとヒュレアクラも気付き、目を見開く。

「……それは、ミューレの結婚相手を1回殺すということでしょう?」

 リィラは苦言を呈した。

 たしかに、理には適っている。死んで魂が消滅するなら、死後のことを気にする必要が無い。王族外から王になることが嫌がられる最大の理由は、「死後の世界で苦しみたくない」だ。それを取り除けるのだから、王になっても良いという人は増えるだろう。しかし、それを前提にするのは命をないがしろにする考えではないか。

「分かってるよ。でも、わたしのために命を差し出せるくらいの人と結婚したいし……」

 ミューレは悪びれもせずに言う。

「こんなに都合がいいんだから、活かさないと損よ! 何なら、既にレスカーダになっている人と結婚すれば良いんだわ!」

「お姉さま……」

 リムネロエとヒュレアクラは、何とも言えない表情でミューレを見つめた。






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