表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蘇生チートは都合が良い  作者: 秋鷺 照
3章 呪術師対策
19/39

3-7 遺跡

 遺跡のある島への道中、竜は話した。友が邪竜となった経緯を。


「悪魔という種族を知っておるか」

「北の群島に住む種族、というくらいしか知りません」

 竜の問いにリィラが答える。竜は「そうだろうな」と言うように尾を揺らした。

「代償と引き換えに他種族の力を引き上げる種族だ。我も詳しくは知らぬのだが……」

 溜息を吐きながら竜は話す。

「悪魔がスノーエルフと手を組み、我らの住む竜の国に攻めて来たのだ」

 その竜の国は、東の大陸の北部に位置している。

「にゃー? スノーエルフはエルフとどう違うにゃー?」

「エルフとの違いはよく分からぬが、氷雪を自在に出し操る種族だ」

 烈しい戦いだった。草原は氷に閉ざされ、吹雪が止まない戦場で。

「友は雷撃を得手としていた。山となった氷を砕き、スノーエルフを焼き尽くそうと、雲の中から懸命に雷を落とし続けた。だが、足りなかった」

 悪魔の影が、戦場のスノーエルフたちを包んだ。その瞬間、スノーエルフの力が膨れ上がった。

 雷撃は氷を砕けず、逆に氷に呑み込まれた。

「友は氷の中に封じ込められた。他の竜もだ……我を含めて」

 戦場にいた全ての竜が、砕けぬ氷に包まれた。終わりだと思った。それでも、友の戦意は消えず。

「あやつは……無理やり力を暴走させた。邪竜に堕ちると分かっていても」

 友は氷の中から念話で言ってきた。「この戦争が終わったら殺してくれ」と。

 邪竜に堕ちるは竜の恥。最も忌み嫌われることだ。友以外の竜は、邪竜に堕ちるより死んだ方がマシだと思っていた。

 それでも、友は戦うことを選んだ。

 荒れ狂う力は暴雷となり、戦場を縦横無尽に駆け巡った。全ての氷を粉砕し、竜たちの自由を取り戻す。

 渦巻く暗雲、降りしきる雷雨。熱い雨が雪を溶かし、スノーエルフを弱らせた。

「友のおかげで、我らは優勢となった。そして、スノーエルフから国を守り切ることが出来た」

 忘れることは無いだろう。友の勇姿を。あの雨の熱さを。

「そんな友の最後の頼みを、果たせないところだったのだ。あのままではな」

「ふにゃー……竜も凄いけど、スノーエルフもとてつもないにゃー」

 話に聞き入っていたケットシーは、溜息を吐いて言った。知らず緊張していた体をほぐす。

「悪魔が厄介なのだ。本来、スノーエルフにそこまでの力は無いのだからな。……見えてきたぞ」

 竜は眼下の島を見て言った。



 遺跡の前に着き、轍夜は入ろうとした。しかし、前に進めない。見えない壁に阻まれたように。

「遺跡自体にも結界が張ってありますね」

「そのようにゃー」

 リィラは遺跡を、いや、遺跡に張られた結界を、じっと見つめた。少しして、虚空を指さす。

「テツヤ、あの辺りと、ここと、向こうの陰の部分を斬ってください」

 指を動かしながら指示した。

「待って、そんないっぺんに言われても覚えきれねー。てか、斬るって何を?」

 困惑する轍夜。その頭の上から、ケットシーは言う。

「みーは覚えたにゃー。テツヤ、まずは右斜め前に歩くにゃー」

「え、こう?」

「そっちは左だけど、まあ良いにゃー。そのまま真っ直ぐ歩くにゃー。……止まるにゃー」

 轍夜は歩を止めた。

「正面を斬るにゃー」

「どゆこと?」

「良いから、剣を振るにゃー。横にずばっといくにゃー」

 前には何も無いが、言われた通り横なぎに剣を振る。

「次は右に歩くにゃー……ここで跳ぶにゃー。もうちょっと上に行くにゃー……ここで良いにゃー。剣を振り下ろすにゃー」

「こう?」

「降りてから斜め前の陰に向かって歩くにゃー……ここで袈裟斬りにゃー」

「えー?」

 訳が分からないまま、轍夜は指示通りに動いた。

 リィラの目には映っていた。轍夜が袈裟斬りにした後、結界がほどけて消える様子が。

「入りましょう」

 リィラは言って、遺跡の入り口へ歩き出す。何の抵抗も無く、遺跡の中へと入っていった。

 轍夜とケットシーも、続いて中に入る。土を固めて作られたようなその遺跡は、壁のあちこちにひびが入っていた。

 ケットシーは轍夜の頭から降り、轍夜の後ろについて歩く。リィラは壁を見ながらゆっくりと進んでいた。

 轍夜は何も考えず、さっさと歩く。リィラを追い越しずんずん進む。

「気を付けて進むにゃー」

「ほーい」

 返事をした轍夜の姿が、ケットシーの前から消えた。

 落とし穴に落ちたのである。

「びっくりしたー」

 浮遊靴で上がり、轍夜は溜息を吐く。

「下に、何かトゲトゲがあった」

「落ちたらアウトなやつにゃー。浮遊靴があって良かったにゃー」

 ケットシーは呆れたように言った。轍夜は笑う。

「釣り天井とか、動きに反応して矢が出てくるやつとか、この先にあったりするかな」

「何で楽しそうなのにゃー⁉ あったら困るにゃー!」

「やー、この呪具があればどうとでもなるだろ。何せ雑に強くなるんだからな!」

「呪具を過信しすぎるなにゃー」

「ケットシーの言う通りです」

 追いついたリィラが言う。

「呪具に頼らず自力で対処してこそ楽しいのではないですか」

「にゃー⁉ みーが言っているのはそういうことじゃないにゃー!」

「分かっていますよ」

 リィラはいたずらっぽく微笑んだ。

 かくして2人と1匹は、同じ速さで慎重に進んでいく。結果として、轍夜が言ったようなトラップは無かった。落とし穴はいくつかあったが。

 迷路のようになっているわけでもなく、楽々最奥に着いてしまった。

 小さなドーム状の部屋。中央には布をかけられた台座が置かれている。

「2人とも、何ちょっとがっかりしたような顔をしているにゃー……」

 ケットシーが不満そうに言う。

「いやだって、こーゆーのってさ、もっとこう……ドーンってなってワーってなってウオーってなるもんじゃねー?」

「何言ってるか分からないにゃー」

 轍夜とケットシーが話しているのに構わず、リィラは台座に近付いた。布をめくると、そこには剣が置かれていた。

 輝く刃は、ケットシーの毛並みよりも濃い金色。見る者を魅了するような美しさだ。

 継承魔法をかけようと、リィラは杖を構える。

「……?」

 かからない。まさかと思い、魔法で攻撃。いくつか杖から放ったが、いずれも剣に触れると消えた。

「この剣は、魔法を無効化するようですね」

「にゃー?」

 ケットシーが台座に飛び乗り、しげしげと剣を見る。

「持ってみるにゃー」

「テツヤ、お願いします」

「え、オレ?」

 指名され、轍夜は剣を持つ。雑に強くなる呪具が、「この剣、ビーム出るぞ」と告げた。

「ビーム⁉」

 轍夜は驚きつつも、剣を振ってみた。部屋の奥、剣の届かない距離にある壁にむけて。

 斬撃が迸り、壁表面がボロボロと崩れ落ちる。

「……ビーム?」

 遠距離攻撃ではあるが、果たしてこれはビームなのだろうか。呪具はビームだと言い張っている。

 その様子を見ながら、リィラは言う。

「その剣はあなたのものです」

「え? リィラが持ってた方が良くね?」

 轍夜は不思議そうに言った。既に2本も剣を持っているのに、更に増やす必要性が感じられない。

「いえ、わたくしはこの杖だけで充分ですから」

 リィラは微笑んで言った。

 ケットシーも不思議そうに目を瞬かせていたが、ふと理解する。

「テツヤが強い武器を持っていた方が安心だからにゃー?」

「その通りです」

「どーゆー意味?」

 轍夜は尋ねたが、リィラもケットシーも答えない。代わりに呪具が、「あまりにも頼りないから、徹底的に呪具や強力な武器を与えて身を守れるようにしてやろう、と思っているんだろう」と答えた。

「やー、うん、呪具のおかげで戦えてるのは分かってるけど。今で充分じゃね?」

「不充分です。今のままでは、炎からしか身を守れないでしょう? それに、遠距離攻撃が出来ません。それが、この剣を使うと、遠距離攻撃も出来るようになる上、魔法に触れれば無効化できるのです」

 リィラは丁寧に説明した。説得しようとするように。

 呪術師は、轍夜を狙ってくるかもしれないのだから。

 雑に強くなる呪具も賛同を示す。「黒いのより金色のやつの方がよく斬れる。もらっとけ」と。

「そーゆー問題?」

「常にわたくしがそばにいて守れる訳ではありませんから。それに、剣が必要な時はあなたから借りれば良いだけです」

 それもそうか、と轍夜は思った。

「帰ろうにゃー」

 ケットシーが轍夜の頭に乗って言う。轍夜は剣を持ったまま部屋から出た。どこからか音がする。地響きのような音が。

 パラパラと砂が降ってきた。リィラはハッとして叫ぶ。

「……! 崩れます、走って!」

「にゃー⁉ 転移魔法はどうしたにゃー⁉」

「遺跡の力で封じられています!」

「それを先に言えにゃー! テツヤ、全力で走るにゃー!」

「リィラは⁉」

「舐めないでください!」

 騒ぎながら、遺跡の中を駆け抜ける。雑に強くなる呪具は、轍夜の足の速さを上げた。信じられないスピードで走る轍夜。それと同じくらい速く走っているリィラは、魔法で身体能力を底上げしていた。

 2人と1匹が脱出して少し経つと、遺跡は完全に崩れ落ちた。跡形もない。砂の山が築かれているだけだ。

「こういうのを求めていたにゃー?」

 ケットシーの質問に、2人は笑って頷いた。



 その後、約束通り竜に妖精の島へ送ってもらい、城へ戻ったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ