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蘇生チートは都合が良い  作者: 秋鷺 照
3章 呪術師対策
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3-1 ケットシー

「うわっと、っとと……」

 轍夜は浮遊靴を使う練習をしていた。

 新婚旅行から帰ってきてから数日経つ。リィラは仕事漬けで、轍夜はずっと浮遊靴を使っていた。

 最初こそあらぬ方へ飛んで行ってしまっていたが、今ではかなり空中を歩けるようになっている。ただ、空中で跳ぶのはまだ上手くいかなかった。

「ふぅ」

 ひと段落。水を飲んで休憩していると、目の前を猫が横切った。金色の毛をふわふわとなびかせながら。

「猫」

 呟くと、猫が立ち止まった。

「猫じゃなくてケットシーだにゃー」

 少し間延びした可愛らしい声。それは目の前の猫もといケットシーから発せられていた。

 ケットシーは軽く跳び、轍夜の頭の上に乗った。

「重っ」

「失礼な人間だにゃー」

「だって」

 文句を言う轍夜の顔を、ケットシーのしっぽが撫でる。

「エルフの島って知ってるかにゃー?」

「エルフの国ならこの島にあるけど」

「そうじゃなくて、エルフの島だにゃー。エルフの国と獣人の国と〈その他〉があるにゃー」

「その他って」

「みーは〈その他〉から来たのにゃー。国じゃないけど色んな種族が住んでいる地域にゃー」

「ふーん」

 気の無い返事をしながら、轍夜は頭からケットシーを下ろし、腕の中に納める。頭をなでてやると、ケットシーは気持ちよさそうに

「ふにゃー」

 と鳴いた。



 轍夜はケットシーを抱えたまま城内に戻った。

「追いかけっこする?」

「にゃー」

 ケットシーは楽しそうに鳴き、轍夜の腕から飛び降りた。そのまま階段を駆け上がっていく。

 それからしばらく、1人と1匹は走り回った。


 自在に駆け回るケットシーに、轍夜はなかなか追いつけない。2階の廊下を走りながら息を切らす。

 ケットシーは階段を下りようとしていた。

(捕まえてやる!)

 轍夜は力を振り絞って加速。一気にケットシーへと迫る。

(届いた!)

 伸ばした手は柔らかな金の毛を掴んだ。


「にゃー⁉」

 ケットシーが慌てたように鳴く。

 捕まったからではない。

 轍夜の体が、宙に放り出されていた。

 そのまま階段を派手に転がり落ちていく。衝撃が轍夜の体を打ち据えた。

「……あれ? 痛くねー」

 落ちたままの体勢で呟く轍夜に、ケットシーは呆れたような顔をする。

「みーの力にゃー。治すことは出来ないけれど、痛みを取るくらいは出来るにゃー」




 リィラはエルフ王子と話していた。エルフの国の城である。

「そういう訳で、見つけることは出来ませんでした」

 呪術師捜しの顛末を伝えたところだ。

「いや、充分ですよ、ありがとうございます。大陸に行ったというのなら、諦めがつきますから」

 エルフ王子は残念そうな表情をしつつも、そう言った。

 その後リィラは転移魔法で城に戻り、眼前の光景に目を丸くする。

「何をしているのですか……?」

「階段から落ちた。多分、骨が折れまくってる」

 即答した轍夜の前には、金の毛を光らせて浮いている猫がいる。それがケットシーだと認識するのに少し時間を要した。

「……何故ケットシーがいるのです?」

「エルフの島から来たんだって」

「それは分かります」

 エルフの島は妖精の島の西にある。東行きの船に乗って来たのだろうか。何のために?

 そんなリィラの疑問を汲み取り、ケットシーは答える。

「人間に飼ってもらおうと思ったのにゃー」

「何故です? ケットシーは飼われるのを嫌がると聞きましたが」

「大陸に拉致された友達が人間の王族に飼われて良い暮らしをしているのを知って、羨ましくなったのにゃー。仲間には反対されたけど、みーは我が道をいくのにゃー」

 得意気な顔で語るケットシーを、リィラは何とも言えない表情で見つめた。轍夜はケットシーを眺めながら口を開いた。

「名前はケットシーにしよう」

「そのままではありませんか」

 リィラの呆れたような声もどこ吹く風で、轍夜は笑いかける。

「良いよな、ケットシー」

「ふにゃー。分かりやすくて良いにゃー」

 ケットシーは満足そうだ。

「ほら。昔飼ってた犬の名前がイヌだったし、そーゆー名付け方で良いんだって」

「……まあ、犬にネコと名付けるよりはマシですね」

 リィラは嘆息した。

 因みに、先王であるリィラの父は小鳥にフェニックスと名付けていた。それもどうかと思う。

「それよりにゃー。テツヤの怪我を治してやってほしいにゃー。リィラは魔術師と聞いたにゃー」

「わたくしは、回復魔法は使えませんよ。適性が無いので」

「それは困ったにゃー。テツヤは動けないようにゃー」

「どんな落ち方をしたらそうなるんです? 階段から落ちたくらいで骨が折れるなんて」

「普通だと思うにゃー。この辺りの島や西の大陸の人間は、身体能力高すぎなのにゃー」

 ケットシーは轍夜を擁護した。リィラが帰ってくるまでの間に、轍夜が異世界人だと聞いていたのだ。

「……にゃー。どうやらこの島に向かう船に、治癒師が乗っているようにゃー。連れて来て治してもらうにゃー」

「そんなことが分かるのですか?」

「風の噂にゃー」

 リィラは嘆息して城から出た。魔法で船の位置を確認。そこに転移する。

 突然現れた杖持つ少女に、船上の人々は驚いた。その様子を意に介さず、リィラは声をかける。

「あなたが治癒師ですか?」

 声をかけられたのは、船の乗客の中で最も多くの魔力を持つ少女だった。

「ふぇっ、そうですけど」

「来てください」

「ふええ?」

 困惑する治癒師を連れて、リィラは転移魔法で城に戻る。

「彼を治してください。お代はいくらでもお支払いします」

「ふぇ……」

 治癒師は状況が呑み込めないまま、轍夜の様子を見た。

「魔力足りないかも……」

 ぽつりと呟いた治癒師に、リィラは

「これ使っていいので、早く、お願いします」

 杖を渡した。

「ふぇ? これは?」

「詠唱せずに魔法が使えるようになります。見ての通り、魔力もたっぷりあります」

「ふえぇ……」

 治癒師は感嘆しつつ、轍夜に回復魔法をかけた。

「うおお、すげー」

 轍夜は勢いよく立ち上がり、その場で跳ねている。完全に治っていた。

 それを見て、リィラは治癒師に話しかける。

「いくらお支払いすれば良いでしょうか」

「ふぇ、良いですよ、別に。凄い杖使わせてもらったので充分です。あ、出来れば船に転移してもらえると助かります」

「分かりました。これはお礼です」

 リィラは治癒師の手にいくらか握らせ、転移魔法で船上に送り届けた。




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