表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

その、2 結婚、するの?




 平石たちにお帰り頂いた頃に補佐が別件で話があると言って来た。4月になって唯は大学を卒業して神社のカフェに就職の形を取り、加奈は大学4年生に上がったことにより結婚式が具体化し、この話し合いには坂本補佐を筆頭に唯・講義が午後からの加奈・安倍が集まっている。

「加奈さんと唯さんって付き合ってるんだよね? 結婚、するの?」

「ええ勿論ですわ。大丈夫です、迷惑はおかけいたしません。これは霊課とうちの契約による結婚ですもの、きちんとさせていただきます。勿論誠心誠意お仕えしますことをお誓いいたします。何より女同士ですので子どもは出来ませんし、他に葉月様に対抗できる猛者もいないでしょう」

「私も差しさわりのないようにいたしますのでお気になさらないで下さい。神前の誓いとしてお約束いたします」

加奈はしっかりとした口調で答え、唯も同意してきた。

「そうね、津田君がどうしてもこの人じゃないと嫌って人がいないならそのまま進めるわよ。結婚式は来年の2月~3月中旬、又は4月下旬から5月くらいがいいと思うのだけど? 参列者の予定もあるし例大祭の準備が始まる前か例大祭が終わって一段落したころはどうかしら?」

補佐も決定事項として進めて来る。

「待って待って、天司君がどうしたの? そこで天司君が出て来るのは何で?」

「葉月が片割れだからに決まってるでしょ? 大体双子の神とか揃って神になったとかだと相手に執着を持つのが普通だしね。この2人は他に好きな人のいる安全牌だから結婚も許したけど、あの子、貴方に近づく女は追い払っていたの。言っておくけど津田君、金目当てとか茶会目当てとか諸々でかなり狙われてたんだからね?」

加奈に問いかける征也に補佐が口を挟む。

「は? え? あれ本気? ……いや天司君、……」

「色々思う所はあるかもしれないけど妥協しておきなさい。一般人だと周りから潰されるし面倒な関係者とかだったらあっと言う間に雁字搦めにされて奴隷扱いよ。その上葉月が津田君の恋人の座を狙っているのは周知のことだしね」

「…………」

無言になってしまった征也に補佐がさっさと次を話し始めた。

「進めるわよ。一般のご家庭とは感覚が違うでしょうから今回の仲人は高山課長がやるって言っていたわ。価値観の違いで両家の関係がガタガタになって破談になったら大変だもの。東山家はそれでいいと思うのだけど、津田家は他に誰かやってもらいたい人はいるのかしら?」

「いえ。……その前に実家に何も言っていないので連絡して良いですか? それに加奈さんの方もいくらお見合いとは言えご両親に一度会いに行った方がいいでしょうし」

征也はお見合いしたときには天司とキエートが一緒だったので実家には連絡していないし、加奈の付き添いも母親と弟でしかも霊課に挨拶に行ったので一瞬で顔合わせが終わってしまっていた。

「そういえばお母様と弟さんだけで次期当主の方とはお会いしたことがなかったわね? ご当主本人はこの間の例大祭で春エリアの説明を聞いて津田君の編集した本を見て満足そうだったけど」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。それってあの、貫禄たっぷりの武道の達人って聞いたお方ですか?」

「そうよ」

「言ってください……あの方が加奈さんのお爺さん……」

あの時は『東の御方』と呼ばれて本名を聞きそびれたのがこんな所へつながって来るとは。

「縁談を用意したのは祖父ですから大丈夫ですわ。私は次女ですし、姉と弟2人と末の妹がおります。祖父が厳しい評価を下すとしたら長男で跡継ぎになる予定の弟の妻でしょうし、娘として可愛がられているのは妹ですからお気になさらず」

「そうなの? みんな学生さん?」

「いえ、姉は今24歳で大学卒業と同時に西の方へ嫁いでおります。弟は大学3年と1年で妹は小学校の4年生です」

一番下だけ離れている。末っ子の娘は親からすると可愛いのか。

「とりあえず、まずはご両親に予定を聞いてもらってご挨拶の日時を決めてくれ。必要ならお爺様にも声をかけて貰って」

「かしこまりました。名目は結婚の報告をするため、ということでよろしいですね?」

「うん。お見合いはしたけど結婚が確定していたわけじゃないからね」

「はい」

返事をして加奈はふわりと笑った。

「こっちも連絡して実家に一度来てもらう事になるとは思うけど、うちはこういう霊力者の系統は全く知らない一般人だから結構対応が大変だと思う」

「はい、かしこまりました。津田様はご長男でしたね」

「うん。でも実質長男は弟みたいなものだから、そこは大丈夫」

ずっと祖父母の元で育ったため実家との繋がりが薄いのだ。おかげで好きにさせてもらっている。そして補佐が

「じゃあそれぞれ連絡して頂戴。結婚式やその他について何か希望はあるかしら?」

と〆に入った。

「こちらからは特にありません」

「……特にな……いや、神前式でお願いしたいところですがキエートに訊いた方がいいですか? 加奈さんのご実家はどこがいいとか希望がある?」

神前式でないと一応神の端くれなので立場がないと思うが、相手方の神社が何というか分からない。加奈さんの方は何か格式とか決まりごとがあるのかもしれない。

「うちのことはお気になさらず津田様のよろしいように」

「あら? 自分の神社ですればいいじゃない、葉月と眷属が祝福してくれるわよ?」

「それも変でしょう? あれは周囲に周知して婚姻を誓うのを見届けてもらうのであって、いくら天司君と眷属がいると言っても主祭神が自分の所でやるのも……」

「そうですね。では大体の予定が決まったらキエート様に相手方の神社の祭神に根回しをしてもらう事にしましょう。祭神のご希望はありますか?」

「うーん、……藤野様のところの上司の八幡宮か……ウカノミタマ様の稲荷神社か……その辺りを希望したいけど、どうでしょう?」

「では、そのようにいたしましょう。こちらで必要な招待客をリストアップしておきますので、他にお呼びしたい方はお伝えください。人数を考えて結婚会場、披露宴会場を探すことになりますが、よろしいですね?」

安倍がそうまとめた。それぞれ帰され、

「あーもしもし? 征也だけど」

言われた通り戻って来て実家に電話を掛ける。

『あらー、そっちから連絡して来るなんて珍しい。何かあった?』

「……結婚する予定でいるんだけど、一度話し合いしたいんだ。何時があいてるかな? 父さん帰って来たら聞いてもらっていていい?」

基本土日が休みだがたまに仕事の関係でいないこともある。母は平日家に誰もいない時間にパートに出ているので父のいる土日なら大丈夫だとは思うが。

『えー! あんた付き合ってる人いたの? 何時から? どんな人? どこで知り合ったの?』

凄い食いつきで質問してきた。

「おおう……お見合いで、半年くらいかな? しっかりしたお嬢様だよ。今度連れて来るから」

『分かったわ。お父さんに話しておく。多分土曜か日曜になると思うけど、そっちは大丈夫なの? 何してる人なの?』

「こっちは多分大丈夫。学生で土日なら行けると思う」

『は? 学生さん? ちょっと、相手いくつなの? いくつ年違うの? 大丈夫なの?』

焦っているのが声で丸わかりだ。だがそこまで年の差というほどではない。

「大学4年生、7歳違いかな。あっちはお嬢様で10歳から婚約者がいたとかで……お姉さんも大学卒業と同時に嫁いだとか言っていたから、そういうお家柄なんじゃない?」

『……あんた、ホントに大丈夫なの? すーっごく良い所のお嬢さんじゃないの?』

声をひそめて心配しているようだ。

「うん、業界の重鎮のお孫さん。本当にどうして俺がって思ったら婚約者が3年前に亡くなって他の同年代の目ぼしい人は相手が決まっているからフリーだったって言ってた。でも縁談を設定したのは重鎮さんだしそうそう断れないし……いい子なんだよ?」

『うち、普通に普通の一般家庭なのに……のんびり屋の性格でホントに大丈夫なの……』

「課長が仲人やってくれるって。一般のご家庭と感覚違うからすり合わせが必要だろうって言われたよ。彼女連れて行く前に一度打ち合わせしたいから」

『……分かったわ。お父さんにもそう言っておく。予定が分かったらまた電話するね』

「お願い」

心配性な所のある母は完全に声が沈んでいたが大丈夫だろうか?




「という訳で結婚することになりました。天司君はこれ、予想通りというか予定通りなの?」

「そうですね」

「……もしかしてとは思うけど、天司君が何か言ったの?」

唯さんと加奈さんが恋人になったのは、天司君の怒りを避けるためだったのかと思ったが

「いいえ。……そんな疑わしい目で見ないでください。

 多少図ったことは認めますが、元々加奈さんは唯さんに狙った獲物を見る目を向けていましたので、状況が許せばいずれそうなっていたでしょう。唯さんはあれで立場が微妙なので後ろ盾になって貰えるならと打算が働いたでしょうし」

という事は元々だったのか。天司君の言っていることが本当であれば、の話だが。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ