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第八十二話 影見深具という男と二人の能力

 

 忍衆『隠戯』が一人を残してそれぞれで動き始めた。


 その一人が校長の下に行く。


「アンタは俺と勝負しな」

「いいでしょう。私一人でお相手できるのであれば」

「アンタはこの中で一番強いからな。長はあんな様子だからな。まぁ、頼むよ」


 その者は後ろの腰辺りにあった刀を取り出した。


「一応、名乗っとくわ。俺は猿鮫さるさめ佐々(ささ)だ」

「では私も名乗られて貰おう。グランザード・フランピークと申します」

「そんじゃあ、行くぞ!」

「どうぞ」


 佐々は消えたが、グランザードは動揺せず、動かなかった。


「おっと、あれ?確実に斬るつもりだったけどな」

「どうしたんですか?」


 佐々はグランザードの背後から斬りかかったが、僅かに左に逸れた。


 連続攻撃がグランザードに駆り出されるが、何一つ当たらない。


「しかし、どうして貴方は能力を使わないのですか?」

「あぁ、気づいていたのか」

「能力を使わない状態でも強いのは分かります。しかし、それにしては弱すぎる。これでは私達の年代とそう分からない」


 佐々は今能力なしで戦っている。

 使っているのは単純な身体能力と忍者の技能だけ。

 それだけでは若い能力者にも勝てないかもしれない。


「そう判断されるのは困る。だが、俺の仕事はアンタを足止めすることだ」

「そのようなことをしなくても私は何もしませんよ」

「まぁ、俺はそれを利用した暇つぶしさ」

「そうですか。別に付き合ってあげてもよろしいですが、さすがに能力なしに私の相手をされるのは難しいと思いますよ」

「う〜ん、そんな感じはするか。でもよ、先にアンタの能力を探らせて貰おうかな」

「ご自由に」


 それでもなお、佐々は能力を使わずにグランザードの能力を探るつもりだ。


 二人の攻防ははっきりと佐々が攻撃、グランザードが防御と分かれていた。


 その間、佐々は小言を話す。


「それよりも困ったわ。長には…」

「どうしましたか?」

「いや、長の前にいる二人、あれは長が種を撒いたもんだ」

「種を撒いた?ですか」

「俺達は仕事上暗殺業を行う。長はその時その場所で標的と一緒にいた者に恨みという種を撒き、それを自分に向けるということをしている」

「特殊な趣味をお持ちで」

「そんなんだよ。長は恨みとか憎しみという怨という感情は力を急激に上げるとか言って、そうしたところで長に勝てる訳がない」

「勝ち負けとは違うのでしょう」

「まぁ、そうだろう」


 世界にはいろんな人がある。

 このような人がいてもおかしくはない。

 ただ、彼にとっては趣味とか遊びの類なのだろう。


「因みに長の名前は影見深具。知ってるか?」

「いえ、知りません。書物を読んできた私ですが…」

「いや、気にする必要はないさ。だって長は歴史に書かれなかった人物だから」

「歴史に書かれなかった人物?」


 歴史に書かれたと言えば猿鮫佐々は真太さなた仮繁かりしげの忍者として有名だ。

 それに…


「ここにいるのは俺と知的な霧桜きりざくら才覚さいかく、忠義を大事する服馬ふくば半堂はんどう、そして無口な嵐魔らんま小治郎こじろう。どいつも歴史に書かれた人物であり、それぞれに仕えた殿がいた」


 深具以外というのはどの人も歴史に書かれた人物。

 霧桜才覚は佐々と同様に仮繁に仕え、服場半堂は徳山とくやま家隆いえたかに仕え、嵐魔小治郎は南条なんじょう家に仕えた。


 ただ一人、深具だけが違った。


「しかし、影見深具は違った。これは当時忍者の間で噂になっていた。『ここ乱世には暗殺業を仕事にしている凄腕の忍者がいる』、『その者はどこの大名にも所属せず、ただ一人その仕事をこなす』、『絶対に相手にしてはならない。これは忍者の掟なり』と、影見深具は仕事を必ず達成し、仕事以外には種を撒いた。それは開花するか枯れるかはわからない。忍者界では『暗殺忍鬼』と呼ばれた」


 影見深具は忍者界の噂でしか広まらなかった。

 それでも忍者界では名前と暗殺業をしていることだけ。


 依頼者は暗殺業をする忍者でしか知らない。


 素性や家系、あらゆることが謎だった。


「内心では戦ってみたいと思いながらも、戦うべきではないと結論付けて、それに俺達忍者は主従関係のある生活がある。だから、当時会ったことはない」

「でも今は同じ組織にいますね」

「長は俺達よりも先に所属していていつからいるかも分からない。それにあまり自分のことを話さない」

「その割には信用しているようですが?」

「任務は完璧。俺達のこともよく見ている」

「あぁ、見ていますよ。貴方は楽にやっているようですね」


 深具から返ってきたが、深具はこちらを見ていなく、口から発せられたようには思えなかった。


「仕事はしてますよ」

「見ていれば分かります。少し甘いですよ」

「はいはい、すみませんね」

「ですが、問題ない」


 佐々も戦闘しながら返事をする。


「ってな訳でアンタの能力、分かったよ」

「そうですか。では答えを聞きましょう」


 一旦戦闘をやめて、対面状態になる。


「アンタの能力は単純明快で逆に判断するのは難しかった。そう、アンタの能力は『避ける』能力」

「ご明察。でも正確には『回避』。あらゆる物を避けさせる能力。それを打ち破るのは私以上の熟練度の能力であることと能力なしでも方法によっては攻撃を当たることは可能」


 グランザードの能力は『回避』。

 有機物、無機物とあらゆる物を避けさせ、その対象に当たらないようにする。

 自分だけでなく、味方や相手、物自体にもその能力を与えることも可能。

 防御特化の能力。


「因みに貴方の能力も分かりますよ」

「えぇ、じゃあ聞こうか」


 グランザードはもう既に佐々の能力が何なのか分かっていた。


「まずは貴方の家系である猿鮫家についてを。猿鮫家の全盛期は戦国時代で貴方の時。しかし、猿鮫家はそれ以前からあった。確か、古代にあった天皇を中心に政治を行なっていた時代からいた」

「そこんところは俺でもあまり理解していない。続けて」

「貴方の能力は特殊で、一族としての能力。その能力を持つ者が猿鮫家の当主。つまりは貴方が当主。その能力は名字である『猿鮫』、猿と鮫の力を持ち、一族に限り能力の継承」

「じゃあ、継承についても聞こうか」

「継承する条件としてお互い能力なしの一対一の闘いをする。それに勝つことで条件を達成し、継承されて当主となる」

「ということは分かるだろう」

「それを踏まえると貴方は約500年無敗を誇り、猿鮫家の当主に君臨している」

「そういうことだ」


 佐々の一族は特殊であり、当主であり続けるというのは難しい。

 それを500年続けているのは普通ではない。

 それだけ能力なしの状態でも強いということになる。


「ただ、貴方本来の能力があるか分かりませんが」

「そんなこと気にしなくていい。どうせ今回は使わねぇし、そんなんがなくても戦えるようにしてやるよ」


 その後も特に変わることなく、二人は戦い続けた。


今回の戦いは説明込みのお遊び的な戦いになりました。

影見深具は昔にはいたけど歴史にはいない人物、つまりは歴史上の人物ではないです。

ただ、当時の忍者界だけは噂程度で知っているくらい。

能力は次回あるか今ところは分かりません。

佐々とグランザードの能力はまたどこかで詳しくやるかも。


次話は影見深具VSモイヒェルメルダー学園組(主に太助と小雨)になる予定です。

もしかすると文字数的に二話分くらいなるかもしれません。


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