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第八十八話 図書館にあった戦争記録

 

 時を同じく、図書館ではバロン、摩利、来栖、華花実がいた。


「よ、読めませんね…」

「そのようですね」


 本を開き、摩利と来栖は予想だにしなかった展開が訪れていた。

 実は外国語を読むことが出来なかったからだ。

 ただ、英語やフランス語などよく使われる言語は摩利も来栖も読むことができるが、この図書館はよく知られていない言語の本まで置かれていた。


 もちろん、北条学園長のフェアベルゲン『交渉』の中の『翻訳』には会話では可能でも書いた物には適用できないしようとなっていた。


「バロンさんは読めるんですか?」

「全部とは言えませんが、読める方ではありますね」


 バロンは入学してから図書館の本を読んできたのだろう。

 それでも蔵書数的に全部読むのは難しいし、さらには解読などでさらに難しいだろう。


「では、これを読んでみては?」

「これは?」

「読んだことがあるか分かりませんが、興味深い本ではありますし、僕達に関連する本でもあります」

わたくし達に関連する本?」

「摩利、開いてみては?」

「分かりましたわ」


 摩利はバロンに渡された本を開く。


「『母の元に(オリジン)』と『解放者フリーダム』の戦争について…って、え?」


 そこに書かれていたのは初期メンバーから聞かされた『母の元に(オリジン)』とよく分からない『解放者フリーダム』という組織、そしてその二つの組織の戦争。


「『母の元に(オリジン)』って初期メンバーの人達が言っていた組織では?」

「はい」

「どういうことですか?」


 一人、理解ができないバロンだけ置いていかれていた。


わたくし達の学校を作った人達をわたくし達は暗殺者の初期メンバーと呼んでいますわ」

「その初期メンバーが今敵対しているが、ここに書かれている『母の元に(オリジン)』という組織なのです」

「じゃあ、その本に書かれている『解放者フリーダム』の人達ってこと?」

「それは分かりません」


 実際、摩利達はその組織を初期メンバーから聞いたことはない。


「うん?どうしましたか、華花実」


 そこに華花実が来栖の服を引っ張っていた。


「その組織…聞いた」

「聞いた?どこでですか?」

「劉蔵さんとここの校長が二人っきりになった時に話してた」

「どのように?」


 それを聞き、摩利も来栖も理解できなかった。

 いつ、二人っきりになっているかは分からないが、知っているとしたら初めて校長室に入った時にその二人以外が退室した後ぐらいしか分からない。


「私の能力…相手の思考に入り込んで…その時の会話を盗み聞ける…」

「「!?」」

「いつからそんな能力を?」

「分からない…」


 その能力は『テレパシー』という能力の中にはなかったはず。

 三年間一緒にいた摩利や来栖は知らなかった。

 特に来栖はほとんどずっと一緒というのに知らない能力だった。


 それは熟練度でできるようになったのか、それとも能力自体はあって昔は使っていたけどいつの間にか癖のようになっていて、その内聞いたことを無視していた可能性がある。


 今回の場合は『解放者フリーダム』という言葉で思い出したと思われるため、後者と思われる。


「そうですか、では聞いた話はどうでした?」

「校長さんが…劉蔵さんに…この組織のことを…紹介してた」

「紹介していた?つまりは初期メンバーは『解放者フリーダム』ではない。校長はどのように紹介していましたか?」

「この組織と敵対するなら…敵対してるこの組織と協力したらって」

「ということは情報提供ってことでしょうか?」

「その話だと校長も『解放者フリーダム』ではないでしょうね」


 摩利と来栖は華花実の能力に驚きつつも、校長と劉蔵の話から『解放者フリーダム』は『母の元に(オリジン)』よりも知られてないことが理解できた。


「他には?」

「創設者…とか、所属している人の…名前を言ってた」

「あ、それはその本に書いてあります。全員ではありませんが、歴史上の人物ですよ」

「そうですか。他にはありますか?」


 そう言うと華花実は首を振った。


「ありがとうございます」

「見てみましょうか」

「えぇ、バロンさんお時間頂けますか?」

「大丈夫ですよ」

「華花美はどうしますか?」


 そう言うと華花実は摩利と来栖の間を割り込んだ。


「読みたいですね」

「うん…」

「積極的ですわね」


 その様子に摩利は嬉しかった。


 三人はその本を1ページ1ページ読んだ。


 数分後、裏表紙を閉じて読むのを終えた。


「興味深いことが多すぎますわね」

「はい」

「うん…」


 それは裏の…さらに裏の話。

 今まで語られなかった出来事ばかりだった。


「要約するに『母の元に(オリジン)』と『解放者フリーダム』はどちらも少なくとも古代から存在していて、歴史上で行われた戦争に関わっていたということ。さらには『母の元に(オリジン)』は広く展開しているのに対して、『解放者フリーダム』はどこに広がっているかは知られていない」

「あとは歴史上の人物が所属している、もしくはしていた」


 二つの組織は本によると古代から存在するらしいが、戦争は最初こそ能力的に強かった『解放者フリーダム』が勝っていた。

 しかし、しばらく経つと能力者が多くなった『母の元に(オリジン)』が勝っていった。


 戦争の詳細は最初の方が勝ち負けしかなく、徐々に参加した人物の名前が書いてある。


「それと『解放者フリーダム』は能力のことをアンゲヌスと呼び、それは創設者だけが持っていた。それ以外の所属者はパルアンゲヌスと呼んでいる。その違いは完全か不完全かということ。『解放者フリーダム』の人達は何か違う能力を持っているってことでしょうか?」


 日本における能力の呼び名はフェアベルゲン。

 各国でも能力の呼び名は違いがある。

 しかし、その本からは『解放者フリーダム』は能力を使い分けしている。

 それはどこまでが完全なのか不完全なのかは分からない。


「さぁ、どうでしょう?能力は技や魔法に関しては終わりがあるかもしれませんが、基礎能力は熟練度によって上がっていくと思われますわ。そう考えますとよく分かりませんわね」

「そうですね。華花実は何か気になることとかありますか?」


 そう聞くと華花実は首を振った。


「そうですか。いえ、気にする必要はありませんよ」


 華花実が顔を伏せるが、来栖がフォローを入れる。


「バロンさん、これはいつからあるのか分かりますか?」

「う〜ん、去年か二年前くらいなので意外と最近ですね。図書館の発注方法は分かりません」

「そうですか。だとすると先程の華花実の話を聞いた上で言いますと、この本は校長に許可されて置かれていると思われますわ」

「確かに。聞いた話とこの本は似ている。どういう意図で置かれているかは分かりませんが、この本を普通に置くのは何かあるかもしれませんね」

「ユニークニストクラブに『母の元に(オリジン)』か『解放者フリーダム』のどちらかに関わりのある人物がいる可能性があり、校長はどちらかに所属している可能性もあるけど、そうではない可能性もありますわね」


 本を図書館の普通の本棚に置かれているというのは何か理由があるかもしれない。

 でも、どちらかの組織の者だったら置くっていうのはどうなんだろうという感じではある。


「それでこれですね」

「はい」


 本の最後の項目に「1900年代中頃、戦争記録」と書かれていた。


「1900年代中頃ってことは1950年前後になります。この時期はやっぱり…」

「初期メンバーと『母の元に(オリジン)』と戦ったという時期と同じくらい…まさかと思いますが…」

「普通に考えればそんな時に『母の元に(オリジン)』が来るとは思えない。初期メンバーが『解放者フリーダム』に所属している可能性もなくもありませんが、劉蔵さんが知らないということはその可能性はないと思います」

「では、初期メンバーが間違っているのでしょうか?それともこの本が違うのでしょうか?」

「あんまり考えるのはやめましょう」

「そうですわね」


 一応他の人達に説明はしたが、深く考えないようにしようということで、頭の片隅に置いておくことにした。


本編にあった戦争記録ですが、戦争内容というのはほとんどありません。あっても勝ち負けと参加した人物だけです。

私としては考えにくいし、あったら敵に渡る可能性もあるから、大まかにという感じです。


華花実のフェアベルゲンは成長中ではありますが、今回出た能力は本編に書いたように元々ある能力を使ったまでです。

単純に華花実自身が気づいていなかったということになります。


次話は小雨と太助の夢の話です。

内容は過去の話を夢で見るという感じになります。

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