第八十五話 離れなければ強くならない
移動したのはマンションみたいな建物が建っている。
「これが寮だよ。右は男性寮、左は女性寮になっているよ」
これが寮のようで、男女で分かれているらしい。
「え?」
それを聞き、後ろで声が聞こえた。
その声は華花実だ。
「あぁ、そうか。華花実は来栖と一緒じゃないといけないんだっけ」
「はい。どうしましょうか?」
モイヒェルメルダー学園では来栖と華花実は一般の部屋にいたが、そもそもそれも特別に許可されただけで普通は男女一緒というのはよくない。
「そうなんだ。でも、難しいと思うよ。だってここは一人一部屋だし、部屋に入るための鍵も身分証になるから。変えるのは難しいんじゃないかな?」
ここの寮はモイヒェルメルダー学園の寮とは違い、一人一部屋用意されていて、鍵はカード式、さらにはその鍵のカードは自分の身分証。
部屋替えはできても、カードを変えるのは難しいし、そもそも寮自体が男女で分かれていては入ることも難しいだろう。
「あ!」
「気づいたバロン」
「僕は女性寮に入らなくて、タイナさんは男性寮に入れないってことは男性寮は僕が説明しなきゃいけない!?」
「そうだろ。私は入らないんだから」
「はぁ」
バロンはタイナのサポート役に回ろうと参加したのに先程はそもそもあまり来ていないタイナの代わりをしたが、今回はやらなければならない。
代わりはいない。
バロンは懐から何かを出した。
それは目、鼻、口の部分が空いた白いお面だった。
「本当に顔をあまり出さないよね」
「べ、別にいいだろ。で、どうする?相談は可能だと思うが、許可はしないと思うけど」
話を華花実の話に戻す。
「華花実さん、ちょっといいかしら」
「な、何?」
そこに摩利が華花実を声をかけ、手招きで誘導する。
華花実はぎこちなくあったが、来栖から離れて摩利の下に行く。
二人はみんなから離れる。
それを他のみんなが見るが。
「ちょっと待っててくれるかしら。少し華花実さんに話がありますわ」
それを聞き、みんなは疑問に思いながらも詮索することをやめた。
「貴女は来栖と離れるのは嫌かしら?」
「う、うん」
「でも、それでは貴女も彼も成長しないわよ」
これはモイヒェルメルダー学園の技術の授業にて三ツ葉先生に気配察知のことで心配されていたことを摩利は気になっていた。
このままでは来栖は能力の成長はできても基礎能力は成長しなく、華花実に至っては成長すらしないのではないかと。
「これからは私達は助けをしませんわよ。もし、彼がやられてしまえば貴女はただの人間と変わりませんので、何もできないでしょうね。自分が成長しなければ来栖も無駄死にしてしまうですよ」
「だ、だって、私に何ができると…」
「私は何もできなかった…」
「え?」
「あの時…匠さんに誘拐される時、私は何もできなかった…。気配を察知することも抵抗することも…」
「でも、相手は戦闘特化型の方…」
「いえ、それは言い訳ですわ。私は迅澄さんに助けられて感謝しましたわ。でも、それと共に悲しくもありましたわ」
「悲しく…」
「私も戦闘型ではありますわ。でも、容易に使えるものでもない。それに魔法というフェアベルゲンだって特化した魔法の方が強く、私のはほぼ初級と言っていいわ。だから、必要なのは身体能力となるんですわ」
戦闘特化型と戦闘型の違いはフェアベルゲンを主にするタイプかそうじゃないかだ。
戦闘特化型は匠に限らず、太助、小雨、来栖、美結になり、戦闘型は摩利以外に迅澄、華花実となる。
迅澄が戦闘型になるのは単なる身体能力を戦法にしているから。
予想しているフェアベルゲンは『生命線確保』と『再生』でどちらもバフ能力みたいなもので戦法に関わらない。
でも、戦闘能力は来栖以上かもしれない。
摩利は場合によっては戦闘特化型にも当てはまるかもしれないが、魔法は初級魔法のような魔法しかない。
一般人に有効だとしてもフェアベルゲン待ちに有効とは言えない。
熟練度次第では増える可能性あったとしても詰められれば何もできない。
つまり、匠に誘拐された時も既に詰められていた。
「来栖の場合は貴女を入れて『確率』を使っていると思いますわ。もっと攻められるところも貴女を守っていては攻められない」
「でもでもでもでも」
「でもじゃありませんわ。もし、彼が生きられる場面でも貴女がいた時、彼は貴女を優先し、死んでしまったどうするんですか!」
摩利は華花実の肩を掴む。
対して華花実は下を向き、摩利の顔を見ない。
「彼が貴女の闇を照らしてくれたんじゃないんですか!」
「あ、」
「貴女はモイヒェルメルダー学園に来て、ただただ縮こまり、会話は『テレパシー』を通じて話していましたわ。でも、彼と出会った。そして、口を開くようになった。今だって私とも話してくれるようになりましたわ。そんなを自分のせいでなくすんですか?」
摩利はあえて「死ぬ」ではなく、「なくす」と表現した。
それはいなくなるのに死ぬこと以外にもあるから。
「な、なくしたくない。彼は私の大切な人だもん」
「なら、自分が彼を守れるように頑張りましょう」
「うん」
華花実は顔を上げて、摩利の目を見て返事をした。
「私も頑張らないといけないわね。彼のために…」
「?」
「いえ、何でもありませんわ」
摩利が小さく何か言ったが、華花実には聞こえなったようだ。
「一人でも住める?」
「が、頑張る…」
「心配なら私のところに来たらいいわ」
「いいの?」
「貴女は友達ですわ」
「ありがとう…」
「いいえ、じゃあ戻りましょう」
「うん」
二人はみんなの下に戻る。
「どうしたの?摩利?」
「いいえ」
小雨は二人の距離が近くなったように思えた。
それは他の者も同じように感じていた。
「それよりも華花実大丈夫みたいですわよ」
「華花実、大丈夫ですか?」
「うん…」
「そうですか…」
「どうしたんですか?来栖?」
「いえ、何でもありません」
「もしかして、寂しいと思っているのか?お前」
「まぁ、少しは…」
「ふーん、よかったわね。彼も同じ気持ちだったようね」
「うん」
来栖はモイヒェルメルダー学園に来て、華花実と出会い、親しくなって恋人になり、同居した。
いざ、離れると寂しいと思ってしまったのだろう。
そんな気持ちを知り、摩利は華花実に小さく言うと小さくではあったが、嬉しそうだった。
「じゃあ、分かれようか」
「分かりましたよ。でも、ちゃんと説明して下さい」
「心配するなよ。大丈夫大丈夫」
「はぁ、大丈夫だろうか…」
バロンを先頭に男性組は男性寮に、タイナを先頭に女性組は女性寮に分かれて移動した。
今話は書いていて「あ、男女別々だと来栖と華花実が一緒になれない」と思い、仕方なく書きました。
モイヒェルメルダー学園の時は高等部として寮の建物があり、男女別々(部屋は別々)ではなかったので許可されたが、今回はほぼ無理でしょう。
それと華花実への説得は精神論な感じもしますが、まぁ以前に(本編中では三ツ葉先生が言った)離れないと来栖も華花実も強くならない的なことを書いたので、何かしないとこの二人は何も変わらない可能性がありますのでこのようにしました。
次話は寮の説明。
簡単に説明しますが、ユニークニストスクールの寮はこんな感じというくらいに理解して貰えばと思います。
因みに男性寮だけです。違いはあるとは思いますが、基本的には一緒ですので割愛します。




