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第六十三話 一年生の勝負 後編

 

 匠の姿は三メートルの長身に手足が丸太の程の太さがあった。

 それは筋力向上つまりは筋肉量が増えたという事だ。

 皮膚は破れない様に自動的に伸びている。


 通常の『身体能力向上』(一時的)の場合、姿自体は変わりはしない。

 しかし、目の前で起きている『身体能力向上』は姿が変わっている。

 それはいつも身体能力値だけが上がっているが、今回はそれ以外も上がっているからだろう。


「今までの俺と思うなよ」

「見た目が変わった……だけ?」


 小雨が言い終わる前に匠が走り出す。

 一瞬、消えたと思ったら小雨に殴りかかっていた。


 それを咄嗟の反射神経で名刀村驟雨で防ぐ。


「え?」


 名刀村驟雨は匠の攻撃を耐えきれず、くの字に折れ曲がる。


「自慢の刀が使い物にならなくなったぞ」


 小雨にとってまだこの名刀村驟雨は自慢と言うのは時期が浅いが、刀を使う者として刀が使い物にならなくなるのは戦力が下がる。


「オラオラオラァ」


 更に匠の攻撃が続く。

 小雨は刀では防げないと分かると、自分の速さだけでその攻撃を躱す。


「躱すだけなのかぁ?」


 匠の『身体能力向上』はあらゆる面が上がっていた。

 筋力向上、五感向上、筋力向上よる更なる身体能力値の向上。

 そして、一番は一時的が無い事。


 つまりはフェアベルゲンが変わっている。

 あらゆる能力値が『強化』され、フェアベルゲン自体は『進化』している。


 匠のパンチは小雨が躱しているが、僅かに小雨の服を切っている。

 ほとんどは袖の部分ではあるが、脇腹や腹の部分にも見られる。


「此処まで追い詰められるとは思いませんでした」


 小雨は匠から離れ、一度刀を地面に刺した。


「余裕ぶってじゃねー!」


 小雨のまだ焦っていない様子を見て、イライラしている。


「本当だったらこの状態で終わらせたかったですがね」


 小雨に自分の体に着けている何を外した。

 それはジャラジャラと鳴り、地面に落ちる。


「て、鉄の鎖?」


 匠は地面に落ちた物を見て、驚いていた。


 地面に落ちたのは鉄の鎖だ。

 更に言えばそれは鎖帷子だ。

 鎖帷子は肩で繋げるだけの簡単に外せる物になっている。


 次に小雨は足から何かを外す。

 それはアンクルウエイトだ。


 それぞれの重さは鎖帷子が三十kg、アンクルウエイトが右十kg、左十kgとなっている。


 それがドシッと地面に落ちる。


「私はいつもこれをしている。知らなかったでしょう?太助や摩利なら知っていると思いますがね」


 そう言いながら小雨は懐から短刀を取り出す。

 それを思いも寄らない事に指を斬った。

 斬った傷からは血が出てくる。


「な、何をしている?」


 匠も構えをやめ、小雨の行動に疑問に思う。


 小雨は短刀を仕舞い、名刀村驟雨を地面から引き抜く。


「こうするんですよ」


 小雨は自分の前に名刀村驟雨を刀身の腹を上に向けて、そこに名刀村驟雨を持った方とは逆の……短刀で斬った方の指を名刀村驟雨の上に持っていく。


 そうすると、傷から出る血は流れ、指から垂れる、

 そのまま血は名刀村驟雨の刀身の腹に広がる。


 その瞬間、名刀村驟雨が光る。


 数秒でその光は収まったが、名刀村驟雨は変わっていた。


「これは一日一回ではありますが、意外と使えますね」


 名刀村驟雨は元に戻っていた。

 匠によってくの字になっていたのに血により元に戻った。


 その能力は名刀村驟雨の中の『妖刀』としての能力だ。

 一日一回、刃こぼれ一つから折れた状態までのどんな状態でも血を与える事で元に戻る『妖刀』としての能力。


「私の本気を見せてあげます」


 小雨は駆け出す。

 一瞬にして匠に近づき、斬る。

 すぐに離れ、また近づき、斬る。


 速過ぎて残像どころか分身の様に小雨が何人も居た。


 それを匠は反応できず、自分の防御力だけで防いでいる。


「ふざけるなぁぁぁぁ」


 匠が大声を出し、更に姿が変わる。

 筋肉が増え、流石の皮膚も耐えきれず、血を出しながら筋肉が飛び出す。


 そして、筋力が上がった腕で地面に殴る。

 ドンッという音と共に夕実の『認識振動』の様に衝撃波が発生する。


 その衝撃波に小雨が当てられ、壁に激突。


「ガァァァァァァ」


 匠が壊れ始め、獣の様に吠える。


「小雨!早くその生徒を止めろ!」


 そこに観客席から大声が聞こえる。

 その声の主は伸戯だ。


「豊眼先輩」

「その生徒は今魔のモノに侵され、暴走している」


 その証拠に伸戯の腰にある名剣エクスカリブスが陵山の時の様に光っている。


「分かりました」


 小雨は納得し、一人のクラスメイト……いや、一人の友達として匠を助ける事を決意する。


 小雨は一旦、名刀村驟雨を鞘に仕舞う。

 そして、腰を落とし、構えを取る。


 向かうは暴走状態の匠。


 匠は歩く度に地面を壊してながら、小雨に向かってくる。


 しかし、小雨は無視するかの如く、目を閉じる。

 その状態は集中モード。集中モードに入る。


 その瞬間、小雨の周りは凍りつく。


 そして、放たれた。


『一閃』


 小雨の名刀村驟雨が鞘が抜ける時、太陽の反射なのか刀身が光り、一瞬にして匠の背後に居た。


『睡蓮花』


 更に小雨が名刀村驟雨を鞘に仕舞うカチッと鳴ると、匠の前に斬った場所だろうか、睡蓮の花が咲き誇った。


「ウガァァァァ」


 匠の叫ぶ声と共に匠は倒れ、姿が元の状態に戻る。


「そこまで、勝者城月小雨。よってこの三本勝負は須美側の勝利となります」


 小雨が匠に勝った事で、この暗殺庁、モイヒェルメルダー学園、そして初期メンバーの方針が決まった。

三本勝負は終わりましたが、第三章はまだ続きます。

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