第六十二話 一年生の勝負 前編
「第三試合、一年生の勝負を始めたいと思います」
第二試合の前の様に休憩時間の後、封士が第三試合を開始しようとしていた。
第二試合で夕実が割った地面は何故かすぐに元に戻っていた。
「東側、城月小雨」
東側の入り口から小雨が現れる。
その腰には刀。しかし、その柄は黒色とそれを巻く紫色の紐が巻かれ、鞘は紫色一色の刀で、いつも持っていた刀とは違っていた。
その名も……。
・名刀村驟雨
名の由来は名刀であり、妖刀でもある村雨である。その能力は水を帯びた刀身で、水切りの様に鋭い刃を持つ。一瞬だけを斬りつける場合、更に斬れ味が上がる。
これも太助が生成した武器だが、比較的に斬れ味を上げた刀となった。
同じ速さを持ち味にしている伸戯と違うのは手数の多い伸戯とは違い、攻撃の一個一個に確実にダメージを与える事だ。
手数の多い攻撃でも一撃の攻撃でも確実にダメージを与えるにはそれなりの武器……刀を必要とする。
その為、この名刀村驟雨は合っていた。
それを持った小雨は中央に向かっていると「お姉様、頑張って下さい」と女子生徒の声が沢山聞こえる。
「この応援って勝負に関係あるの?」
そう口走ってしまった小雨だが、確かに応援には私情が含まれていた。
第一試合でも伸戯に女子生徒の黄色い声や尊敬という面での男子生徒と女子生徒と両方聞こえ、須美側だけでなく、破吹側から伸戯に応援をされていた。
同じく、小雨も両方(特に女子生徒)からの応援がする。
それでも初期メンバーは何も言わないから許可しているのだろう。
「西側、平備匠」
西側の入り口から匠が現れる。
その姿は何も変わってはいないが、その目には闘志が湧いていた。それは「今度こそ、お前に勝つ」と(毎度の事ではあるが)決意しているそんな目をしていた。
匠の腰には剣というか大剣を持っていた。
そんな匠は小雨に近づき……。
「今度こそ、お前に勝ってやる」
まさかの目だけでなく、言葉まで発した。
「えぇ、私は貴方の摩利に対する扱いに怒っている」
逆に小雨は怒っていた。
それは一週間前、そう、この勝負を決めたあの時の匠の行動だ。
あの時は迅澄がどうにかしたが、小雨はあれだけでは収まらなかった。
だから、今回はただの勝負(そもそも普通の勝負ではないが)ではなく、私情を交えた勝負になると。
二人にとって、これは初期メンバーの代理勝負なのではない。
これは私情を交えた二人だけの勝負となる。
「それでは第三試合目、古宇崎小雨vs平備匠の試合を始めます。二人は離れて下さい」
小雨と匠はお互いに離れる。
「では……開始!」
先に動いたのは小雨だった。
『斬撃』
刀を抜いた小雨はそのまま一振りすると、水色の斬撃が飛ぶ。
余談だが、通常の『斬撃』は無色の斬撃が飛ぶが、名刀村驟雨を使うと『斬撃』は水色の斬撃になった。
縦斬りした斬撃はそのまま匠に向かうが……。
「ふっ!」
しかし、匠は持っていた大剣で断ち切った。
「こんなもんで何が出来る」
そう言いながら、匠は走り出す。
「えっ?速い」
その速度は以前より速くなっていた。
匠はその勢いのまま、突きを繰り出す。
「しかし、突きとは単純」
小雨はその突きを受け流し、次の行動に移る。
『刀跳』
それは迅澄に見せた技だ。
これは小雨が生み出したある意味必殺技みたいな技だ。
本来、これは空中に浮いてるまたは飛んでいるモノに攻撃する為に開発した技となっている。
小雨はそこにある刀の残像に乗り、更に跳躍する。
そして、上から匠にジャンプ斬り、もっと言えば超ジャンプ斬りを繰り出す。
匠は大剣を横にして、刀身の広い方でそれを受け止める。
しかし、上からという事で、小雨の攻撃力だけでなく、重力も合わさる。
そして、名刀村驟雨が魅せる。
パキッ、
匠の持つ大剣に亀裂が入った。
小雨はそのまま更に力を加える。
「ぐっ、ぐぐぐ」
対して匠は踏ん張っていた。
しかし、匠は踏ん張る事は出来ても、大剣が耐える事が出来ない。
パキッ、パキパキパキ、
最後に更に大きくパキッとなって大剣は真っ二つに折れた。
小雨の名刀村驟雨はそのまま匠を上から下に斬りつけた。
「ぐはっ!」
匠はその痛みに耐えきれず、膝をつく。
小雨はその間に後ろに下がり、匠と距離を離す。
「やっぱり、これではダメだったか」
匠はゆっくりと立ち上がる。
「しかし、これからが俺の進化した能力を見せてやる」
『身体能力向上』
それは今まで見た匠のフェアベルゲンの能力とは違っていた。
小雨の苗字が摩利の苗字になっていたので古宇崎→城月に変更(2019.1.23)




