第六十話 二年生の勝負 前編
「第二試合、二年生の勝負を始めたいと思います」
少し時間をあけて、封士が第二試合を開始しようとしていた。
「東側、朝霞夕実」
東側の入り口から夕実が現れる。
その腕には籠手があり、靴は普通の靴とは違う。
名籠手ヤールングレイプスル
元の由来は北欧神話の神、トールが武器ミョルニルを握る為の籠手ヤールングレイプルからだ。今回は夕実が武道家なので鎚を持つ事が無いので、籠手だけの攻撃、防御を兼ね備えている。これには攻撃モード、防御モードがある。攻撃モードは拳だけに収縮した形態で、籠手の力を全て攻撃を移す。防御モードは手から肩まで伸びる様に防御面を増やす。
名靴ヴィーザラー
元の由来は北欧神話の神、ヴィーザルがフェンリルの顎を踏みつけた靴。能力は名籠手ヤールングレイプスルと同じで、攻撃モードと防御モードがある。攻撃モードはブーツ型、防御モードはまた近くまで伸びる。
これも名剣エクスカリブスや名剣デュランダリンと同様に太助がこの一週間で生成した物。
この籠手は剣とは違い、能力を形態変化した。
籠手の外見(今は攻撃モード)は銀色に指の骨があるところに緑色の線が入ったデザイン。
靴の外見(今は攻撃モード)も銀色に指の骨があるところに緑色の線が入ったデザイン。
夕実自身はあまり持ちたくは無かったが、戦力強化には必要だった為に着けている。
「西側、牟羅李音」
西側の入り口から黒髪の少しカールのかかった髪型の女性が現れた。
彼女の腰には二本の短剣があった。
「は〜い、夕実〜」
「何でしょうか?」
「相変わらず、堅っ苦しくて嫌になるわぁ」
李音は簡単に言えばギャルに近い。
つまりは夕実とは正反対で、李音は夕実を毛嫌いしていた。
それと余談で、モイヒェルメルダー学園に通う生徒全員は黒髪だ。
それには理由があり、此処には床屋はあっても美容院は無い事にある。
なので、髪を切ったり、髭を剃ったりは出来るけど、飾れないという事になる。
なら、李音の様にカールのかかっているのは独学だ。
何か細長い筒の様な物でやっている。
『それでは第二試合目、朝霞夕実vs牟羅李音の試合を始めます。二人は一定距離離れて下さい」
夕実と李音はお互いに離れる。
「では……開始!」
始まりと同様に李音はフェアベルゲンを発動する。
・『無音』
音、気配、姿を消すフェアベルゲン。熟練度が上がる事に自分の存在を示すモノを消す能力とその能力上昇で発見され難くなる。
フェアベルゲン自体は夕実と似ている。
ただ、内容が夕実の場合は自分と相手を対象に、李音は自分を対象にしている。
特に李音のは自分を消すのに特化している。
効かないのは夕実の様なタイプとそもそもレベル差がある相手となる。
李音は姿を消した。
見える人には見えるけど、ほとんどの人は見えないだろう。
「貴女には効かないかもしれないけど、とりあえずこの一週間の成果を見せてあげるわ」
声自体は全方向から聞こえるので、察知するのは難しい。
「特別な能力が無い限りは私に勝てません」
夕実は走り、虚空にストレートパンチをする。
「ぐべぇ」
李音の声が聞こえた。
そして、壁が崩れる。
「どうして当たった?」
李音は姿を現して夕実に問う。
「これが私の成果です」
(霧麻さんのおかげで、当たりました)
夕実は霧麻のところで二つ学んだ。
一つ目は気配察知だ。
霧麻は姿を消すスペシャリストで、能力値を下げた状態から上がれていき、気配察知する能力を上げる事にした。
二つ目は掠っても吹っ飛ばす事だ。
どんな相手でも必中のダメージを与える攻撃よりも吹っ飛ばす方が大事となる。それは吹っ飛ばす事で、相手との距離を一旦離れる事も出来るし、吹っ飛ばした方向に壁とかがあればダメージも与えられる。逆に必中のダメージを与える攻撃は当たったとしてもカウンターを食らえば意味が無いからだ。
夕実がストレートパンチを放った時、李音は右に避けた。
だが、夕実のストレートパンチが李音の左腕に当てて、吹き飛ばした。
本当はパンチの風圧で飛ばすのが一番いいのだが、今はまだ出来ない。
李音は立ち上がり、夕実の方を向く。
「確かに私には更に脅威になったんでしょうね」
ただでさえ、姿を消しても夕実は『気配』で察知してしまう。それだけでなく、バレても一瞬李音の方が早く行動が出来る。
しかし、それも難しくなってしまった。
「で〜も、私はその為に初期メンバーから学んだんじゃないからねぇ」
李音は再び姿を消す。
「さぁ、始めましょう。今からが私の本当の『無音』を見せてあげちゃうわ」




